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REDSニュース|[特別取材]森脇良太、最後のホームゲーム|レッズプレス!!

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[特別取材]森脇良太、最後のホームゲーム

(有賀久子)


[特別取材]森脇良太、最後のホームゲーム











11月3日(祝・日)、愛媛県松山市にあるニンジニアスタジアムでは、2024シーズンの愛媛FCホーム最終節・レノファ山口戦が行われた。選手生活から退くことを発表した森脇良太にとっては、プロキャリア最後のホームゲームとなった。

森脇を、石丸清隆監督は今シーズン初先発、キャプテンマークを巻いて、という形で送り出し、 ファン・サポーターは選手を乗せたバスが到着すると、森脇のチャントで迎えた。スタジアムの外では、さまざまなサンクスイベントも実施され、勝利を求めると共に、森脇がどんなプレーを見せてくれるのかという期待と、愛媛FCで計5シーズン、プレーした彼への感謝の気持ちであふれていた。

試合は、開始11分で失点。センターサークルに戻る選手たちの足取りが重く見える中で、森脇は1人、試合前から繰り返していた、“声を出し、手をたたいて”チームを鼓舞する姿を何度も見せた。
42分、中盤で手をあげてボールを呼びこんだ石浦大雅は、ボールを持つと力強いドリブルで前に運び、ヘ?ン タ?ンカンへスピードに乗ったパスを送る。少々、足もとに入りすぎたが、そこは前線に立つエースだ。ボールをコントロールし、ペナルティエリアの外から、シュートを迷わず狙った。が、バーをたたき、同点ゴールならず。

全体が前向きになった時間帯。45分に迎えた左CKでは、ファーサイドに放りこまれたボールに反応したのは、森脇良太だった。待ち構えて、待ち構えて、右足を振ったが、シュートは大きく枠を外れた。

愛媛FCは52分、空中戦の、五分五分になったボールを、森脇が頭で触り、スペースに出してマイボールとすると、右からクロスボールを送った。ペナルティエリア内のファーサイドで、パスを受けたチームメートが何度も何度もやり直し、最後は小川大空がフィニッシュ。森脇は勝つために、すかさず、ゴールマウスにすいこまれたボールを拾い、早い試合再開を促した。

そして、58分。ベンチは谷本駿介との交代を告げ、森脇良太のホームラストゲームが終わった。キャプテンマークを預け、ベンチを含めた両チームの監督・選手による花道に迎えられ、両手を広げた森脇はそれぞれとタッチをかわしながら、ピッチを離れた。場内にも「森脇選手、ありがとうございます」というアナウンスが響き渡り、森脇はサポーターに手をあげ、一礼。

その後は後半アディショナル7分間も合わせて、ベンチからチームの逆転勝利を願い、声をかけ続けた。チームは最後の最後までチャンスを作り、試合終了の笛が鳴ると、ピッチに崩れ落ちる選手の姿が。この闘争心を、リーグ最終節のアウェイのV・ファーレン長崎戦に繋げ、勝利で終えてもらいたい。そして愛媛FCは、来シーズンもJ2リーグの舞台で戦う。そこに森脇良太はいない。自分たちで、自分たちを鼓舞して、今シーズンよりも順位をあげることを願う。

試合後は、愛媛FCのアカデミー、レディースチーム全チームが揃っての最終戦セレモニー、そして森脇の引退セレモニーが行われ、トップチームがゴール裏に行き、挨拶する様子まで、DAZNで配信された。

もちろん、チームの輪がとかれたあとも、森脇はファン・サポーター1人1人と向き合うように言葉をかわし、ミックスゾーンに戻ってきたのは、20時近く。取材が終わる頃にはもう、チームバスは出発していた。

J2リーグはまだ1試合残っているが、森脇らしい1日となった。

森脇は「まずは(1対1の引き分けで)試合に勝てなかった。自分自身、チームに貢献できなかったという、その悔しさの方が、自分の中では強いですね。きょうもね、最後まで、声を枯らしてね、応援してくれたサポーターがいたので。(前節まで、9試合勝ち星なしで)何としても勝利を届けたいなという思いがあったので、そこに貢献できなかった悔しさというのが一番最初に出てきますね。

(以下、有料記事)ただ、こうやって、この中でプレーできた自分というのは、本当に幸せだな、と。(引退セレモニーでは)森保一監督のVTRとか、きょう来てくれたファン・サポーターの皆さんの、自分に対する振る舞いを見ると、もう自分の感情をおさえることが出来なかったので、本当に幸せだな、と。さっきもセレモニーで言いましたけど、“世界一、幸せ者”だな、というのを感じました。

(試合前のロッカールームでは、チームメートに)「やってやろう」というね。まず、自分がね、その気持ちが強かったですし、何としても貢献したいな、と。少しでもチームにエネルギーを与えたいなという思いで入りましたし、試合前も、自分の思いを(チームメートの前で)伝えさせてもらったんですけど。

それはね、「みんなとサッカーが出来て幸せだった」と。「その思いを、きょう、俺はピッチでぶつける。みんなも、それぞれに思いがあるだろうけれど。それをピッチで、きょう、ぶつけよう。最後は勝って終わろう」という中で。試合前は、チームを鼓舞する意味で、「きょうは、死ぬか、生きるかの戦いだ」「多くのファン・サポーターが来ている。何としても勝利をもぎとって、みんなで喜びを分かち合おう」という言葉をかけて、試合に臨みましたけど、出た選手は最後までファイトしていましたし、もちろん、もっと良いサッカーをしたいなと思いはあるんですけど、でも、ゴール前で身体を張って。やっぱり、これをスタンダードにしなければいけないな、と。そういうものは、愛媛FCの基準にしていきたいなというのは感じました。

(失点した直後に、森脇良太選手の姿勢が見えたが)試合が始まる前から、最初の10分、15分はバタバタして、どちらつかずの展開になるよ、とみんなで話をしていて。落ち着いて、慌てずに、その時間は乗り切ろうという話をしていたんですけど、自分たちの予想ではないところで、ゲーム展開が動いて、チームの今までの傾向的に、失点すると、ネガティブになりがちだったので、ここはやっぱり、自分の声で、チームをもう1回、奮い立たせるんだ、と。全然、最初に失点してしまったけれど、まだまだ時間はあるんだよという気持ちを伝えたかったので、一緒にピッチに立って戦っていて、少しは前向きにはなったのかな、というのは感じたので。これはまだまだ、全然大丈夫だと。イケるという、そういう思いにはなっていました。

(後半途中までプレーし、シュートチャンスもあったが)そうなんですよ。気合が入り過ぎちゃって。本当に、プロ20年やっている選手とは思えないキックを。今までも、たくさんのゴールを決めさせてもらったんですけど、もう、あれほど、ボールが来て、「オッシャー!!!行くぞ、行くぞ」と、あれだけ構えたシーンというのはなかったと思うんですけど、何か、あのシーンだけ、ボールが輝いて見えたんですよ。ボールが輝いているぞ、と思って。それに打ち勝てなかった自分は情けないんですけど、ちょっと気持ちがね、先走ってしまったな、と。

モテ(茂木駿佑)には、こういうボールで、ここに落としてくれ、という風に要求して、茂木選手はその通りのパスをくれたのに、自分の実力の無さで、枠にもっていくことが出来なかったので、あれは非常に悔しいですね。本当にスタッフもね、森脇良太に点を決めさそうという、そういうのでいろいろなアイディアを出してくれていたので、それを結果に結びつけられなかったというのは、めちゃめちゃ悔しかったですね。あのシュートを打った後、お客さんの方を見ることが出来なかったですね。これは、大きなため息だぞ、と思いながら。もう、これはダメだ。自分で「切り替えよう、切り替えよう」と自分を鼓舞していたところがあるんですけど。

(同点弾は、森脇選手の右のクロスボールが始まりだったが)起点になれたところは非常に良かったな、と。その前のセカンドボールで、絶対にマイボールにするというね、その強い気持ちからマイボールにして、フリーだったので、シュートも一瞬考えたんですけど。でも、やっぱり、クロスボールの方が、中にも枚数がいたので、クロスを上げた方が良いなと思ったので、クロスを上げましたけど、チームとして素晴らしい崩しからのゴールだったんじゃないかな。その1つの起点になれたというのは幸せですね。

(交代シーンでは、花道を作られたが)感謝の思いと、自分に対して、ここまでしてくれて、おそれおおいなと。恐縮だなという思いで、あそこを通らさせてもらって。花道を作ってくれたことに対して、ありがとうございますと。その感謝の思いだけで、ピッチを離れましたね。こういう風に花道を作ってもらえる選手というのは、なかなかいないという風に思っているので、こんな自分に対して、それを作ってくれたというのは、やっぱり20年間、サッカーに真摯に向きあって、自分の情熱を燃やしてやってきて良かったなと。それが少し報われた瞬間でもありました」





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