back

ツヅキック(都築龍太の試合分析)

top
何もないまま終わってしまう。危機感を出せるか(J1第30節・鹿島戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の沖永雄一郎記者です。


RP:9月20日(土)に埼玉スタジアム2002で行われた明治安田生命J1リーグ第30節、鹿島アントラーズ戦は0−1でレッズが敗れました。

都築:内容は悪くなったと思います。チャンスも多かったし、アントラーズにサッカーをさせずに、相手の良いところを消せていたのかなと思います。させなかったというか、アントラーズもあまり良くなかったのかな。攻撃のスイッチが入らなかったので、レッズとしては助かった部分もありました。

ただやっぱり、勝負事としては鹿島のほうがうまかった感じがありました。あの残念な失点がなかったとしても、点を獲るのは難しそうだった。相手GKの早川選手もよかったですが、最後のところの体の張り方や中盤の頑張りがすごく見える試合でした。こぼれ球、セカンドボールの部分、特に後半に知念慶選手が入ってからのファイトがすごかった。勝負のところではレッズのほうが少し甘かったのかなと思います。

リードしているのに、ハーフタイムで2枚替えをしてきた鬼木監督の采配も良かった。チームとして「こうやるんだぞ」というのが見える交代でしたし、レッズはマテウス・サヴィオ選手を中心とした左サイドの攻撃が多かったので、そこで絶対にやられるなという雰囲気の交代でした。

それを選手たちがピッチの中で表現して、サヴィオ選手は後半いなくなっちゃっていました。アントラーズのほうが成熟しているのかなと思いましたし、最高の雰囲気の中で最高の試合をするには、あれくらいのモチベーションがないといけないのかなと感じました。

レッズは攻めさせられてる感じもあって、粘り強く泥臭く攻めるところは、終盤の関根貴大選手や中島翔哉選手のプレーくらいしか出てこなかったですし、裏に抜ける動きまではできるのですが、そこからのバリエーションが少ないですね。抜けたらそのまま一人で仕掛ける形になってしまったり、もっと攻撃の人数がいないと厳しいなと思います。

ただ、アントラーズがめちゃめちゃ引いて守っていたわけでもなくて、中盤の戦いがけっこう多かった。レッズもそこをうまくかわしたり、前半はバイタルエリアでスルーパスを使ってシュートにもっていったシーンもありました。いい攻撃は出来ていましたが、ミドルシュートは少なかったかもしれません。打ってみるのも手ですからね。

ただアントラーズもうまく守っていたので、なかなか得点につながらなかった。DAZNの解説で水沼さんも言っていましたが、あの失点のミスまではほとんど支配していながら、レッズはバックパスをして組み立てることが多い。

中継映像だと全体がわからないのはありますが、マリウス・ホイブラーテン選手がバックパスをせずに前へ出す選択肢もあったのかなと思います。後ろに下げる選択肢もありなのですが、いい流れの中だとネガティブにも感じます。空いている選手がいれば前に組み立てていくのをみんな見たいと思います。

0−0でも良かった試合だと思いますが、西川周作選手のところはちょっと可哀想でしたね。あの時間帯は西川選手を2、3回使ってつないでいましたが、前に行ってもらいたい気持ちはあったと思います。もったいない失点でしたし、ああいうイレギュラーで決着するような試合だったのかなと思います。残念ですね。

結果は受け止めないといけませんが、全体的にはレッズが支配していた試合だったと思います。決定的なピンチは、後半の西川選手が足で防いだシーンしかなかった。ただ、あの雰囲気で負けたという結果は結果です。

RP:交代で前線の選手を増やしましたが、後半途中からはなかなかシュートまでいけませんでした。

都築:中盤を削って前の選手を増やしているのがどういうことか、チームとしてわからないといけませんし、最後の時間帯だけは鹿島が引いていました。中盤の選手はフリーで受けられていましたが、イサーク・キーセ・テリン選手のような中で強い選手が入ったのにもたもたしてクロスを上げられなかった。

クロスを上げないのならどんどん間に選手が入ってきて中からサイド、サイドから中という展開をやって欲しいのですし、アントラーズも下がっていてニアのスペースが空いていました。そこに入り込む選手が必要でしたが、中島選手の1本だけありましたかね。

相手が待っている状態でも、多少ルーズなボールになってもイサーク選手に合わせるプレーをして欲しいですし、競ってくれればこぼれ球も期待できます。小森飛絢選手が痛めてしまったときのようなクロスがもっとあっても良いと思いましたし、シンプルに入れてこぼれ球を狙うのも効果的だったと思います。

生かし方をまだわからないのか、シンプルにやってくれていいんですけどね…。結局は、チアゴ・サンタナ選手も生かしきれていなかったですし、イサーク選手もヘディングは強そうですから、もうちょっとシンプルにボールを入れて周りを生かすのもアリだと思います。

レッズは仕掛けられる選手が多いからこそ、逆にシンプルにクロスを上げるのも手だと思います。そういうところも含めて、チーム力というかなかなかうまくいっていないですね。ただ、あそこで点をとりたい気持ちをもっと見せないと

先ほども言いましたが、鬼木監督の2枚替えは響くというか、「こういうサッカーをするんだぞ」というサインが見えます。あれだけボールを支配していたのだから、もっとシンプルで泥臭い試合でもいいのかなと思います。

負けたという現実を引きずるのかなとも思いますが、サミュエル・グスタフソン選手はコントロールできる選手で奪われないし守備もやってくれる。中島翔哉選手と彼が出ているときはアクションがありましたし、受けて起点になるシーンが見えていました。もっと生かしたいですね。

渡邊凌磨選手も悪くはなかったですが、決定的な仕事はできませんでしたし1対1で負けているシーンも目立ちました。ただやっぱり、鹿島は徹底してポイントを抑えていて、「ここまではやらせていいけど、ここからはやらせない」というものが伝わってきました。

お客さんも入って、スタジアムはすごい雰囲気担っていたと思いますが、そこで勝てるかどうかは大きいです。最近というかここ何年も、ビッグマッチほど勝てなくなっていますが、期待して集まった分だけお客さんが減っていきます。もちろん毎試合勝たないといけませんが、やっぱり勝たないといけない大事な試合が年に何回かあるんですよ。そこで勝てるか勝てないかで、ビッグマッチで勝てなくてが続くとお客さんは減りますよ。自分たちが結果を出せば増えるし、出さなかったら減る。そういうモチベーションでやってもらいたいと思います。

RP:優勝の可能性は実質的に消滅したと思いますが、次節は中2日で清水エスパル戦になります。

都築:もう何もないので、勝つこと。内容がどうであれ勝つ、それしかないです。せめて勝つ姿を見せないと、何もないまま終わってしまいます。それでいいんだったらいいんですけど、いいわけないじゃないですか。その危機感をどれだけピッチで表現できるかだと思います。ただ決して、手を抜いている選手はいないと思います。

気になるのはやっぱり、西川選手のところですね。ルヴァンカップのフロンターレ戦からビルドアップのミスが続いてしまっています。そのあとのプレーは落ち着いてやっていますし、足元がうまいからこそミスがフォーカスされるのはあります。ただ、実際にミスが出ていますし、バックパスの回数が多すぎるのは良くないと思います。相手も狙ってきているので、もうちょっとシンプルにやりたいですね。

RP:ありがとうございました。


(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』沖永雄一郎記者)
 
・・・・・・
会員登録はこちら

都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

(c)REDS PRESS