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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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疲れも目立った試合。攻撃の統一感は相手のほうが上(J1第22節・C大阪戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の沖永雄一郎記者です。


RP:5月28日(水)に埼玉スタジアム2002で行われた明治安田生命J1リーグ第22節、セレッソ大阪戦は0−0の引き分けに終わりました。

都築:セレッソのほうが攻撃に厚みがありましたね。レッズも悪くないシーンはあったのですが、最初のチャンスはレッズで、そのあとはセレッソがポゼッションを取る時間帯が多くて、特に右サイドを使われました。

ラファエル・ハットン選手のヘディングシュートなどは2人ついていたけど触れなかったですし、こぼれ球を拾う回数もセレッソのほうが多かった。崩してトライして、二重三重の攻撃ができていたので、セレッソのほうがいい形だったのかなと思いました。

ハイライトを見直すとレッズのシーンのほうが多くて、マテウス・サヴィオ選手のボレーや石原広教選手のヘディングなど、前半の決定機はレッズのほうがあったかもしれませんが、攻撃の統一感だったりはセレッソだったかな。

レッズは奪ってからのカウンターや個人頼みというところもありましたが、セレッソはしっかりサイドで起点をつくって、そこからのクロスやカットインなどバリエーションがありました。

チャンスの回数は同じくらいだったと思いますが、レッズは疲れも目立った感じがありましたし、後半は特に前へいけませんでした。レッズはカウンター、セレッソは組み立ててこじあけようというサッカーになりました。

0−0は妥当な結果だったと思いますが、レッズが決めるところを決められていればとも思います。いちばんの決定機は石原選手のヘディングだったと思いますが、最もいい形で最もフリーになれたシーンでした。やっぱり、そうしたシーンで決めるか決められないかで試合が決まってきますね。

レッズは奪ってから縦に速くて、松尾佑介選手やサヴィオ選手が積極的に持ち上がっていましたが、セレッソは仕掛けられる選手も多いながら前に急がずに、人を使ってから動きなおしてゴール前で自分が生きるようなプレーをしていました。レッズはかなり直線的でした。

セレッソはルーカス・フェルナンデス選手が起点になっていて、潰せるタイミングもあったのですが彼が相当うまかった。一人かわす力は持っていますし、一回かわされてからピンチになることが多かったと思います。

取りに行く必要があったのかなというシーンもありましたが、相手が飛び込んでくるのを待っていて、食いつきたくなる絶妙なところにボールを置いていました。後半も彼のところから崩されましたが、全体的には粘り強く守れていたと思います。ただ終盤は下がりすぎになっていて、ミドルシュートがかなり多くなった時間帯は前に行けなくなっていました。

0−0ながら面白い試合だったと思いますし、どちらも点が入っていてもおかしくない攻撃がありました。レッズは現状で言うところのベストメンバーだったと思いますが、サミュエル・グスタフソン選手にボールがあまり入らなかった。彼から展開して、中盤で起点をつくってというのが少なくて、カウンターで長い距離を走る、縦に速いサッカーになりました。

この試合でいちばんよかったレッズの選手は、安居海渡選手だったと思います。セレッソにビルドアップでつながれるシーンは多かったのですが、カウンターを仕掛けられそうなシーンはぜんぶ潰していました。安居選手は外せない選手になっていますね。

あれがなければもっと危ないシーンが増えていたと思いますし、ファーストディフェンダーとしてピンチの芽を刈り取るプレーが目立ちましたね。こういう選手も大事ですし、グスタフソン選手のようなゲームをつくる選手も大事です。

連戦連戦でシンプルなサッカーになってしまっていますが、これだけの過密日程はあまり経験がないでしょうから、しょうがない部分もあるとは思います。勝点1を取れたのはよかったですが、クラブワールドカップ中にリーグを空けてしまうのは不安だと思いますし、もっと稼いでおきたかったと思います。

あとは選手交代ですが、あれでよかったのかなというのはありました。セレッソは交代選手が生きましたが、チアゴ・サンタナ選手はあまりインパクトがなかったですね。

目標がクラブワールドカップに行っちゃってるところもあるかもしれませんが、セレッソがかなりよかったので、負けなかったのはよかったのかなと思います。クラブワールドカップで叩く際は守備から入らないといけないシーンが増えると思うので、この試合で粘れたところはよかったのかな。

中盤で組み立てるといっても相当プレッシャーが速いと思いますし、守って奪って、縦に速くというサッカーをしなければいけないと思いますから。なので、5連勝中のサッカーも含めて、クラブワールドカップで勝つ方法としてはいい感覚があったと思います。

RP:レッズは消化試合が先行していますが、勝点差はやはり気になるところでしょうか。

都築:アメリカに行っている間は考えないようにすると思いますけど、空いた時間などに見ちゃうでしょうからね。それを考えると、いまは良い位置にいますが、スタートダッシュにつまづいたことや、ガンバ戦の敗戦や新潟に引き分けたのはもったいなかった感じがあります。

ただそれはそれとして、大事なのはシーズンが終わったときにどの順位にいるかですから、あまり気にしなくても良いと思います。しかしクラブワールドカップに出場することで、Jリーグを戦う上で厳しいスケジュールになっているのは事実ですね。日本に帰ってきてからは天皇杯やルヴァンカップもありますし、そのあたりも意識して戦っている感じはします。

RP:次はクラブワールドカップ前の最後の公式戦で、ホームで横浜FCと対戦します。

都築:良くはないけど悪くもない感じの状態に見えますね。レッズは昇格チームに弱いところがあるので、モチベーションをもって戦ってほしいです。とにかくあと一つなので、相手がどこかというより自分たちの結果を求めて戦うべきだと思います。

RP:ありがとうございました。

(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』沖永雄一郎記者)
 
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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

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