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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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気持ちは見えたが、崩し切れなかった。攻撃を遅らせられるとキツい(J1第15節・G大阪戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の沖永雄一郎記者です。


RP:5月6日(火)に埼玉スタジアム2002で行われた明治安田生命J1リーグ第15節、ガンバ大阪戦は0−1の敗戦となりました。

都築:ちょっとミスが多かったですね。カウンター攻撃がなかなかできずに、ペナルティボックスの前で人数をかけて、細かいパスで崩しにいこうというシーンが多くなりました。松尾佑介選手が抜け出す場面も少なくなって、マテウス・サヴィオ選手も積極的にシュートを打っていましたが効果的ではなかったですね。

ガンバが上手く守ったなという試合だったと思います。切り替えも早かったですし、カウンターになる前に早めに潰しに来ていた。ガンバがやるべきことをやってきたと思います。5連勝中のサッカーがなかなか出せずに、遅攻にさせられる展開が続きました。

決定的なチャンスも、ガンバのほうが多かったですかね。マリウス・ホイブラーテン選手が背後へのボールに中途半端な対応になったシーンなど、安居海渡選手が自陣で引っ掛けられるシーンなど、ミスがらみのピンチが多かったと思います。失点シーンもミスがらみだったと思いますし、効率的に攻めて点を取って勝ち切ったガンバの戦い方が上回りましたね。

西川周作選手の序盤の怪我も誤算でしたが、牲川歩見選手もいいプレーをしていたので、ガンバにとってそこまでのアドバンテージではなかったと思います。レッズのビルドアップにもあまりプレッシャーに行かずに、ブロックをつくってカウンターをさせない守りかたを徹底していました。そうなったときにどう崩すかですが、ガンバのこの戦い方が今後も対戦相手の基準になってくるんじゃないかと思います。

気持ちは見えたんですけど、崩し切れなかったですね。松尾選手が左に流れて受けるシーンもあって、スピードに乗ろうとはしているけど、ガンバも人数をかけてカバーしていました。中継映像では全体的なところはわからないですが、ガンバの守備ラインはあまり高くなかったと思います。一森純選手が裏をカバーするシーンもほとんどありませんでした。

攻めづらかったと思いますが、相手が引いているぶん中盤で自由にボールを受けられていました。そこからの展開が課題ですね。交代で中島翔哉選手が入って、折り返しからサヴィオ選手という惜しいシーンがありましたが、ああいうシーンがもっとでてこないと苦しいです。セットプレーも惜しいシーンがあったので、ダニーロ・ボザ選手のヘディングが決まっていれば違った流れになったと思います。

RP:前半は0−0で折り返しましたが、53分に先制を許しました。

都築:レッズの右サイドで回されて、人数が揃っていながらボールウォッチャーになってしまい、マークが把握できていない中でイージーにクロスを上げられてしまいました。長沼洋一選手の判断もミスというか、GKと連携が取れていなかったんじゃないかと思います。

声がかかっていたのかどうかわかりませんが、ちょっと不自然でした。ボールと相手を見るポジショニングができていなかったですし、山下諒也選手をつかまえておかないといけなかったと思います。牲川選手からも伝えておきたかったシーンです。悔やまれる失点でした。

RP:都築さんも「引かれた場合にどうなるか」を懸念されていましたが、先制されたことでよりスペースがない展開になりました。

都築:攻撃を遅らせられるときついなというのは顕著に見えちゃいましたね。今後どうやって崩していくか。ヴェルディ戦では、相手が待ち構えているときに西川選手から一個飛ばしのパスを入れて展開できたのですが…。

失点してさらに引かれた中で、崩しに行こうという姿勢は見えましたが、いまのチームの得意な攻撃ではないんでしょうね。ここは改善していかないと、相手の基準になってしまって速攻も見れなくなります。「回させてもいいや」となってしまいますから。

松尾選手は距離があればあるほど有利になりますし、ショートカウンターよりも少し距離があってスペースにボールが出るほうが好きだと思いますが、この試合では抜けたと思ってもDF待ち構えていくところに挑むシーンが多かった。そこをさらに崩していく必要があります。そうしたところはチームもわかっていて、改善しようとしていると思いますが。

ただ、失点シーン以外はよく守れていたし、石原広教選手が2本くらいピンチをブロックしていましたよね。最後のところで守ることはできていました。連勝はどこかで止まるものですが、どういう負け方をしたかが問題です。こうした試合をせめて引き分けにできるかもポイントです。

気になったのは、最後のアディショナルタイムでずっと後ろで回していていたことです。渡邊凌磨選手に縦パスが入ってPKかなというシーンもありましたが、負けているんだからああいうシーンを増やさないといけませんし、ボールを持っている選手へのプレッシャーしかなかったので、落として展開もしたかった。

もっとサイドを使えればいいのですが、クロスからのヘディングは効果的じゃない判断だったのかな。でも中からだけだと相手も守りやすいですよね。負けてる時の攻撃が単調だったので、もうちょっと仕掛けて欲しいなというのはありました。

RP:ホーム5連戦が終わって、次節はアウェイの新潟戦になります。

都築:新潟は前に来て細かい動きをどんどんやっててくるので、どちらかというと攻撃的なチームだと思います。5連勝中のサッカーをベースにできればいい結果になると思いますし、できなければ悪い結果になる可能性があります。

やっぱり、いまの状況でサミュエル・グスタフソン選手がいないのは痛いですよね。中島選手も松本泰志選手も安居選手も悪くないんだけど、いまは落ち着かせられる場所が無い感じがします。

グスタフソン選手は相手が来たときに余る選手を使えますし、もう少しガンバもやりづらくなったんじゃないかと思いました。ヴェルディ戦は不在の影響を感じなかったですし、ガンバ戦も中盤のバランスが悪かったわけではないのですが…。

運動量もガンバのほうがあって、疲れもある程度あったと思いますが、負けているときにサヴィオ選手などは代えられない。荻原拓也選手や関根貴大もミスが多かったですし、シーズン序盤に出ていた両SBが流れを変えられなかった。チーム力の底上げがもうちょっと欲しいところでもあります。

首位とちょっと離れましたが、まだ半分も折り返していないので食らいついて行ってほしいです。

RP:ありがとうございました。

(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』沖永雄一郎記者)
 
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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

(c)REDS PRESS