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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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しなくていい失点をしてしまうと、こういう結果になる(J1第31節・FC東京戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の沖永雄一郎記者です。


RP:9月21日(土)に埼玉スタジアム2002で行われた明治安田生命J1リーグ第31節、FC東京戦は0−2の敗戦となりました。

都築:しなくていい失点をしてしまうと、こういう結果になっちゃいますよね。相手に崩されたわけじゃないので、余計に悔しいと思います。内容はそこまで悪くはなかったと思いますし、前節もバランスは良かった。崩されてないだけにもったいない試合でした。

攻撃で取り返さないといけない展開になりましたが、そこのパワーがなかったですね。後半は多少、攻撃のスイッチを入れましたが、ちょっといまは得点力がある状態じゃないので、失点してしまうと厳しいというのが大前提で試合に入らないといけないのに、ああいうミスが起きてしまうのは痛いです。

RP:最初の失点は9分、相手のクロスからでした。

都築:サイドチェンジされて、ボールが動いている中での連動がうまく行きませんでした。クロスを上げた俵積田選手に対して、右SBの石原広教選手なのか、スライドして中盤の選手が行くのかに一瞬迷って下がりました。

そしてカットインされてからのクロスでしたが、すごく時間がありました。井上黎生人選手がフリーの状態でしたが、雨が降ったり水を撒いたりでスリッピーな状況になっているので、待ち構えて足を出した対応はよくなかったですね。

あそこがフリーじゃなければ、待たずにもっと寄って蹴っていたと思います。GKも含めて、ディフェンスの選手にああいうミスが出ると試合を左右してしまいます。よくあることでもありますが。

RP:2失点目はCKからのハンドによるPKでした。

都築:これも崩されたわけではないので、苦しいですね。防ぐとしたら、森重真人選手がへデングをする前にもっと体を寄せておくことかなと思います。この2失点が、最後の最後まで響いた試合になりました。

試合をとおして、特に後半の攻撃は悪くはなかったと思います。守備にしても、全体的には良い守備ができていた。前回も言ったように、自分たちの守るエリアを徹底できているからでもあります。

ただ、これは悪く言えば、バランスを崩してでも攻めに行く回数が少なくなります。バランスを崩して攻めに行けば相手も苦しいですが、レッズもリスクが高まる。スコルジャ監督はそういうことはあまりしないサッカーだと思うので、各ポジションの選手がパフォーマンスを上げていかないといけないのかなと思います。

後半はマリウス・ホイブラーテン選手が何度か上がっていて、そのシーンが意外とチャンスになっていました。ディフェンスの押し上げもあまりやっていませんが、崩しのフェーズで相手が驚くようなことをしたいですし、負けている試合では特にそうです。

ただ、そうした中でもチャンスはあって、前半の最初のチャンスのようにワイドにうまく攻められたシーンがありました。最後は渡邊凌磨選手のシュートでしたが、大久保智明選手に落としてもよかったかもしれません。落として決まっていればパーフェクトでしたし、相手を揺さぶる攻撃ができていました。ああいう形がもっと出てくればと思います。

後半はお互いカウンター気味の攻撃が多かったですが、もうちょっとポジション取りをフリーにすれば厚みが出てくるとは思います。0−0の時間や勝っているときはいいのですが、負けてるときにバランスを崩して攻めることはあまりできていないですね。逆に、FC東京はバランスを崩して攻める必要がなかったので楽だったと思います。最初の2失点が相当効いていました。

RP:選手交代についてはいかがでしょうか

都築:松尾佑介選手の縦へというシーンもありましたが、あまり活きていなかったですね。ブライアン・リンセン選手の負傷でチアゴ・サンタナ選手を入れることになったのも良くない流れでした。

そして原口元気選手ですね。いまはすごく「チームのために」という感じになってますけど。彼の良さが消えてしまっていると思います。アイツがボランチで出ていること自体がどうなのかなと。

さばいて、というのは見えますけど彼の仕事じゃないと思いますし、前に行くシーンが何回あったかなと。あの位置でどっぷり落ち着いてしまうのだったら原口じゃなくて良いと思います。もっと「自分が自分が」を出しながらやっていくほうがいい気がしますし、原口がボランチをする、ゲームメークをすると言われても魅力がないです。大人になったと言われていますが、落ち着いちゃっただけでしょう。

ただ、彼の持っている経験値は相当高いですし、だんだんと前にポジションが移っていくとは思います。ボランチの層が薄いのであそこで使うというのもわかりますが、補強のタイミングもあったけどしなかった。攻撃のアクセントになれる選手が多いはずなのに、ベンチにもいないですよね。いまはそういうチームマネジメントなのだと思いますが。

RP:スタメンだけでなく、ベンチメンバーも手堅い選考の印象になっていますね

都築:流れを変えられる選手が、変えられるタイミングで出ていないですよね。松尾選手にしても、相手が疲れている時や前に出てきている時こそ活きると思いますが、相手がブロックを作っている状態から崩すのであれば、もうひと段階パフォーマンスを上げないといけない。

原口選手にしても、右と左のどちらのサイドでもいいですが、サンタナ選手の近くでプレーさせたいですよね。サンタナ選手を活かそうとクロスが増えてきてますが、そこの質ももっと高めないといけないですし徹底している感じでもないです。

ちょっと中途半端な感じもあって、やっぱりいまは「まずは守備」という状態なんだと思います。相手が出てこないと、攻撃のときにアクセントを持っている選手が活きないですね。もうちょっと考えてサッカーをしないといけないですし、とにかく失点のところですね。あそこであのミスが起きる原因は考えて欲しいです。

チャンスも少なかったですが、後半5分にレッズが攻めて奪われて、カウンターで俵積田選手のシュートを西川選手が防いだシーンが象徴的だったと思います。やりきったFC東京と、やりきれなかったレッズという構図でした。

順位も後退しましたが、中断と中止になった2試合でプラス6ポイントできれば、まだまだ上位に近づきます。今年はそこが勝負じゃないですか。ガンバ戦のように、もうちょっと粘れるサッカーをしてほしいですね。まずは失点しないことです。

RP:次節はアウエーで、首位に肉薄している神戸と対戦します。

都築:いまはちょっと、広島以外は相手は関係ないかなと思います。勝点を意識して、相手ありきの考えにならないほうが良い気がします。自分たちがやるべきことをちゃんとやって、勝点を取るという形にしていったほうが良いと思いますね。

RP:ありがとうございました。

(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』沖永雄一郎記者)
 
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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

(c)REDS PRESS