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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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あれだけピンチが少なかったのに負けるのはよくない(J1第9節・G大阪戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の沖永雄一郎記者です。


RP:4月20日(土)に埼玉スタジアム2002で行われた明治安田生命J1リーグ第9節、ガンバ大阪戦は0−1でレッズが敗れました。

都築:ちょっと深刻ですよね。点を取れずに完封で連敗したのと、後半の伊藤敦樹選手がアグレッシブだったタイミングなど、いい内容の時間帯もありましたが、全体的には負け試合のような流れでしたね。

やっぱり、あれだけピンチが少なかったのに負けるのはよくないです。チーム状況やバランスがよくないのか、レイソル戦のほうがまだチャンスを作れていました。じゃあこの試合の何が悪かったのかとなると……一言で言うのは難しいですね。表現が難しい試合でした。

前半のガンバはわかりやすくて、左サイドからのカットイン攻撃が多かったのですが、かといってピンチにはなっていなかったので、守備はできていたという評価になると思います。ガンバの質の問題もありましたが。お互いあまりチーム状況がよくないなという感じだったので、そういう試合で負けちゃうとだめですね。

試合中のピッチの感覚を想像すると、前半は「あまりうまくはいってないけど、点を取るのはこっちだな」という雰囲気で戦っていたんじゃないかと思います。相手が2人くらい少ないような感じで試合が進んでいました。そうした流れで失点してしまうのは弱さですかね。

前半はなんとも言えない、お互いにいいところがなく、お互いの悪いところも目立たないような流れでした。レッズは中島翔哉選手をスタメン起用するなど、攻撃的に行ったと思いますが、残念ながら彼はこれまでの途中出場時のようなアクセントになれませんでした。

相手が待ち構えているところを抜きにいっても抜けないですし、もう少し人を使っていきたいですね。それもあって、前半は渡邊凌磨選手が攻撃に絡めていませんでした。崩しのところは多少ありましたけど、後半のほうが左サイドの攻撃は効果的だったと思います。

そしてそろそろ気づかなければいけないのは、後半いいリズムで攻撃できていたときは、明らかに渡邊選手の位置が高いんですよ。ほかに左SBがいないのだとしても、僕は最初から彼をひとつ前に上げるべきだと思います。

明らかに攻撃的な選手で、サイドでリズムを作れますし、サイドバックだと窮屈ですよね。前にほかの選手がいるよりも、最初から高いポジションで勝負させてあげたほうが生きるんじゃないかなと思います。

後半はある程度そういう形ができていて、それプラス中盤でのプレスが効いていたので、ガンバは何もできなくなっていました。西川周作選手が何回ボールに触ったのかなという展開でした。そうした効果があることはわかっていると思うので、それをずっとせずにSBに置いているのは別に意図があるのでしょうけど。

RP:この試合では、中島選手、大久保智明選手と左サイドで組みました。

都築:中島選手や大久保選手がボールを持った時にあまり人を使わないので、渡邊選手も上がりづらいと思います。やっぱり、使われないという気持ちがあると消極的にもなります。人を使って関係で崩していくほうがいいと思いますが、できていないですね。

伊藤選手も、中盤でカットしてカウンターに入るシーンがあったり、今日はいいのかなと思ったらだめだったし、個人の調子に左右された面もあったと思います。ヘディングシュートのシーンも、いいボールだったと思うので決めたかったですし、みんな思っていると思いますが、奪われた後に少なくとも追いかける姿勢は見せてほしいですよね。

RP:失点は伊藤選手が奪われたところからでした。

都築:そのあとの守備も悪かったですね。マリウス・ホイブラーテン選手の(コースの)切り方もそうです。あの切り方をやってもらっていいんですけど、それは縦に行かれた時に絶対止めてくれるならということになります。

右利きのウイングに対して、あそこまで右サイドのスペースを空けていているのは危険な守り方だと思います。縦に一歩入ったときに、100%とは言わないですけど、8割ぐらいついていける、誘っている守り方だったらよかったのですが。中途半端なボールへの反応もできていなかったのと、坂本一彩選手のシュートはうまかったのですが、ファーストタッチの際にもっと寄せられたはずです。

カウンター攻撃による失点でしたが、まず奪われたこと、そのあとに遅らせられなかったこと。中の人数は同数くらいでしたが、坂本選手には2人つける位置だったので、打たせてはいけなかったと思います。

渡邊選手が後半良かった点として、防がれはしましたがいいミドルシュートがありました。ガンバもあまりよくない状態でラインが下がっていて、お互い深かったのでオフサイドが少ない試合だったので、そこを引っぱり出すためにも、ミドルがあるぞと思わせるために打って終わるシーンがもう少し欲しかったですね。

チアゴ・サンタナ選手のカウンターの場面もシュートが正面で、いい時間帯に決め切れないことで悪い方向にいっている面もあると思います。ただ、この試合は決め切らないといけないチャンス自体が少なかったですね。もっとチャンスを作っていかないと厳しいです。

「勝ちきれない」まで行けていなかった試合で、もう一回、次だと言い続けている間にシーズンが終わってしまいます。1試合1試合、真剣に戦って、気が付いたときは時すでに遅し、にならないようにしてほしいですね。

RP:次戦はリーグ戦の前の、ルヴァンカップ2回戦・ガイナーレ鳥取戦が挟まります。

都築:違う選手を試さないといけないですし、特に左サイドバックで守備が出来る選手ですね。宇賀神友弥選手がいまどれだけ動けるかわからないですが。このままでは渡邊選手がもったいないです。

FC東京と町田の試合を少し見たのですが、サッカーはシンプルでしたけど効果的ですよね。苦しいときにオ・セフン選手やミッチェル・デューク選手に当てられますし。レッズとしても、サンタナ選手はよかったんですよ。キープしてはたいて動こうという意識がレイソル戦はあったのですが、ガンバ戦ではなかった。

交代も全部裏目に出ましたよね。ベンチワークも中途半端だったかなと。もう一回
原点に戻って整理したいですね。毎回言っていますけど、レッズはこういうサッカーがやりたいんだというのを見せてほしいですね。それができないことが問題です。

RP:とりあえず、鳥取戦は新しい選手の台頭に期待したいです。

都築:それでいいと思います。アレクサンダー・ショルツ選手の交代は怪我だったんですかね?

RP:違和感だか痛みがあっての交代だったようです。

都築:あの交代もいらなかったですね。それであれば、まだ使わなかったほうが良かったと思います。佐藤瑶大選手も悪くなかったですし、失点シーンでも問題があったわけではなかったですが、代えたこと自体が多少マイナスに影響した感じがありました。

それと、いまのレッズは仕掛けるのが好きな選手が多いですが、前田直輝選手も最初は良かったのですが読まれてきちゃってますね。9割くらい抜けてないんじゃないでしょうか。
仕掛けるのはいいんだけど、あまりにも抜けないとパスが来なくなりますから。

抜いて信頼を勝ち取らないと、使ってもらえない周りの選手も嫌がりますよ。大久保選手、前田選手、中島選手も、もうちょっと考えたほうがいいと思います。人を使うことによって、自分も抜けるようになるわけですから。

いまはパスは無いなと読まれてますけど、周りを使うと自分も生きます。それは分かっていると思うのですが、仕掛けるのあればシュートなりクロスなりの結果を出してほしいですね。

RP:ありがとうございました。


(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』沖永雄一郎記者)
 
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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

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