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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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いちばん負けちゃだめなタイミングで負けた。攻撃の形が作れなかった(J1第10節・鳥栖戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の沖永雄一郎記者です。


RP:5月10日(水)に埼玉スタジアム2002で行われた明治安田生命J1リーグ第10節、サガン鳥栖戦は0−2の敗戦となりました。

都築:ちょっと、いちばん負けちゃだめなタイミングで負けてしまいましたね。選手も何人か変えて、(鳥栖と)条件はそんなに変わらないはずなんですよね。その中で負けてしまうというのは、流れを手放す可能性もあるかなと。最高の形でアジアチャンピオンになって、その次のリーグ戦は大事だったのですが、結果が出なかったのは痛いですね。

戦い方も(アル・ヒラル戦から)変わるなと思っていましたが、レッズのポゼッションの時間も多かったですよね。そうは言っても、鳥栖もポゼッションしながら進めていました。常に受けて戦っていたアル・ヒラル戦とはまったく違う流れにはなりましたね。

自分たちがボールを保持しているときに、どういう崩し方をして点を取るかがポイントになってくると思っていましたが、そこがなかなか得点に結びつかなかった。非常に残念でした。逆に鳥栖はアグレッシブでした。

レッズのチャンスで言うと、大久保智明選手のシュートとこぼれ球にアレックス・シャルク選手が詰めたシーンは決めておきたかったですね。攻撃のところでなかなか形が作れなかったですし、もったいない試合でした。

RP:ポゼッションやシュート数自体は浦和が上回りましたが…。

都築:攻撃の起点になれるところがあまりなくて、特にホセ・カンテ選手がほぼ起点にならなかったですね。チームとして計算が狂ったのかなとも思いますが、ポストプレーをやろうとはしていましたが嵌らなかったというか。選手の距離感が悪くてうまくいかなかったところもあるので、カンテ選手だけのせいではないのですが。

バイタルエリアに入れたときはけっこうサイドも使っていましたが、酒井宏樹選手が出場しているときのような追い越す動きのような形はあまり見せられませんでした。カンテ選手を起用した時の攻撃のイメージがいまいちわからないのもありますね。

どうしたいのかをはっきりしないと、カンテ選手のいいところもなかなかわかってこないので。左サイドは意外と機能していて、シャルク選手は切り込んでクロスやシュートを打つシーンがありましたが、組み立ての中からのチャンスはあまり無かったですね。

RP:守備では70分、76分と続けて失点しました。

都築:ミドルレンジのところがちょっとルーズになっていました。前半に西川周作選手が菊地泰智選手のシュートを防いだシーンや最初の失点シーンなどがそうですが、再度から仕掛けられたときのセカンドラインのマークのルーズさがありました。あまり簡単に打たせすぎるとやはりリスクもあります。西川選手も見づらかったかもしれません。もう少し厳しくいきたかったですね。

2失点目は、いちばん失点してはいけないタイミングでした。小泉佳穂選手があの位置で、リスクのあるパスを出さざるを得なかったのは考えものです。もうちょっとシンプルにやりたかったですし、ACLのときから小泉選手のパスが引っかかるシーンが出てきていました。チームとして改善が必要ですし、あの距離で奪われると本当のショートカウンターになってしまいます。ましてや、鳥栖は狙っていますから。うまく戦われたなという感じですね。

レッズも動揺する必要はなかったのですが、鳥栖のディフェンスもけっこう固くて、バランスよく攻めて守っている感じがありました。崩すのは大変そうでしたね。それでもチャンスはあって、シャルク選手がオフサイド判定になったシーンなど、決めておくべきところで決めておけばという試合でもあります。ゴールゲッターが不在ですね。

あとはセットプレーも気になります。あれだけ多く回数があった中で、惜しいシーンもあまりなかった。折り返しの二次攻撃的なところなどで可能性は見えましたけど、これだけあったので1本くらいは得点に繋げたかったところです。

あらためて、いちばん負けては行けないタイミングでしたし、選手本人たちはモチベーションが落ちているとは思っていなかったでしょうけど、リーグ戦に切り替えないといけないタイミングでした。

RP:カンテ選手と共に、安居選手はリーグ戦初スタメンでした。

都築:ちょっとポジションが前に前に出てしまっていましたが、追い越してスペースに走りこめる特長があると思います。前のほうにいると、走りこめる距離が短くなって自分の動きを制限してしまうところもあります。二列目から抜け出すような動きのほうがいいのかもしません。もちろん、カンテ選手のところでうまくためられなかったこともあります。

今回は鳥栖が思っていたよりも良かったですし、アグレッシブでした。西川潤選手は非常にいい選手で運動量も多くて時間を作っていました。レッズは岩尾憲選手がコントロールする役割だと思いますが、いいボールもありましたけど、もうちょっとチームとして成熟していかないといけないのかな。

RP:今回は決勝戦から4名メンバー変更しました。

都築:変えて結果が出なかったのは良くなかったですよね。あの試合を見ていたほうの選手のモチベーションで戦わないといけない中で、アピールが足りなかったと思います。一生懸命やっているのは見ていてわかりますが、やはり結果ですから。

シャルク選手も決めきらないといけない場面がありましたし、なかなかチャンスが無い中で、出場したときに結果を出さなければというのは彼らがいちばんよくわかっていると思います。ただ、リーグ戦まだまだ続いていきますから。

RP:次節はホームでガンバ大阪戦ですが、また連戦になります。

都築:ガンバもちょっと良くないですからね。良くないチーム相手に良くない結果を出してしまうと、また良くないほうに行ってしまいます。メンバーはまた戻すんじゃないですかね。前に興梠慎三選手がいるほうがいまのチームにはプラスだと思います。

引いてポストして自分が生きるという動きができますし、プレスのかけ方もいいですから。カンテ選手だと、まだちょっと前からのプレスもうまくいかないですよね。統一されてないなという感じがあります。そこはもっと意思統一しながら進めてほしいですね。

RP:ありがとうございました。

(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』沖永雄一郎記者)
 
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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

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