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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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ACL準決勝までの流れがなくなっている。モーベルグ選手一人では崩せない(ルヴァンカップ準決勝第1戦・C大阪戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の沖永雄一郎記者です。


RP:9月21日(水)にヨドコウ桜スタジアムで行われたYBCルヴァンカップ準決勝、セレッソ大阪戦は1−1の引き分けに終わりました。

都築:前回のセレッソ戦と同じく前半の失点もあり、セレッソも引いてくるというか、ある程度のとこまではやらせてバイタルはしっかり押さえてくるという戦い方でした。今回もそんな流れではありましたが、攻撃の細かい崩しや動きが見られてチャンスが多く作れていました。

2試合トータルで考えると、引き分けでしたが十分な結果だったかなと思います。得点シーンも含めて、後半はサイドを多く使い、多くの崩しやチャンスを作れたのは評価できるかなという内容でした。

RP:展開としては、開始早々にものすごいミドルシュートを決められてしまいました。

都築:やっぱり、ラインが少し低いんですよね。高く設定していれば、シュートを打った上門選手が受けたときに何らかのアプローチができたと思います。ただ、彼がボールを受けたときにレッズの最終ラインがかなり低い位置にいました。

パスを出されたところにプレッシャーがかからなかったのと、ちょっとラインが低いので、良いシュートを打たれた時には常にああいったリスクがあります。中盤と最終ラインの距離も広く、試合の入りをコンパクトにできませんでしたね。そこがちょっとゲームを苦しくしちゃったなというところはありました。

そのあとは、小泉佳穂選手が良い奪い方をしてからの1対1だったり、CKからのヘディングシュートなど、前回負けた試合よりも可能性がある攻撃の仕掛けはあったと思います。守備も失点シーン以外は非常に安定していたと思います。

ただ、前半は特にですが、ダヴィド・モーベルグ選手にボールが入っても孤立している感じがありました。あそこで追い越す動きがあってこそモーベルグ選手の選択肢も増えるのですが、なかなか追い越すシーンがみられませんでした。

右サイドにボールは展開されるのですが、一人で仕掛けていくことが多かったので、そんなに高い質では攻められませんでした。左サイドの明本考浩選手も、外からクロスではなくて中にカットインしたり、関根貴大選手からのクロスの流れを上がって拾うという形が多かった。後半はそこがうまくいった部分もありましたが。

前半は失点もあり、攻撃の質はそこまででしたが、後半は出だしから良い崩しができました。それを象徴するのが得点シーンだったと思います。大久保智明選手のパスに明本選手が抜け出して、小泉佳穂選手もよく周りを見てスルーを選択しました。

伊藤敦樹選手のこぼれ球にも走りこみました。3人目の動きやゴール前での動き出しが非常にうまくいったシーンでした。あれがきっかけで人数をかけて崩しに掛かれていましたし、良い形になっていました。フィニッシュの質はもう少し欲しいですが…。関根選手がSBで起用されましたが、長い距離を走れますし、彼もアクセントになっていましたね。

RP:前半と比べて、後半はかなり攻撃が機能しているように見えました。

都築:前半は岩尾憲選手がボールをもっている時間が長かったですね。普通は1試合でひとりの選手がボールを持つ時間は2〜3分くらいになるはずですが、彼が持った時にボールの出しどころを常に探さないといけない状況でした。

そうなるとリズムが出てこないので、彼がワンタッチでさばくようなことができていれば、周りの動きだしが出来ているというのがわかりやすいんじゃないかと思います。ビルドアップの際によく最終ラインに入りますが、彼が真ん中に入って、CBがワイドに開くところに相手がつられて、真ん中が生きてるという流れがあると思います。

こうなるといいんですが、相手もそのとおりに動いてくれない場合があります。そうして持たされている時間帯でいかに崩しを狙うかもポイントになってくると思います。それができているときは本当に良いシーンができますし、相手を剥がすようなパスをどんどん出せる展開になればもっともっと良くなってくると思います。相手が後手後手で守らないといけないような崩し方をしていってほしいですね。

やっぱりセレッソ相手にやりにくそうな感じはありますが、2試合の折り返しと考えると悪くなかったかなと。次で勝負がつきますから、勝って決勝にいけるといいですね。


RP:次は中3日で第2戦ですが、ここ最近はエンジンがかかるまでに時間が掛かっている印象です。

都築:失点時のギャップに関しては、試合の入り方だけかなとも思いますね。あのシュートもかなり良いシュートでしたが、GKとしては打たせるなよという感じでもあります。奥の選手に後ろ向きからパスを出されたところについても、プレッシャーに行っておかないと簡単に出されてしまいますから。

ACL準決勝までは非常に良かったのですが、いまはちょっとそこまでの流れがありません。ある程度までしか崩しきれないのもありますが、モーベルグ選手と酒井宏樹選手が組んでいないこともあるかもしれません。モーベルグ選手一人だけでは崩せないですから。

彼のカットインからのミドルは、GK目線からすると相手を利用している感じがありますね。ステップが細かく、それほどコースがよくなくても良い形を作れます。モーベルグ選手が良い時は、彼につられて3人くらい食いついてきますが、こうなるとGKからはDFが邪魔になります。

そうしたものも上手く使っている感じがあって、こぼれ球をダイレクトで打ったり、カットインからシンプルに打った時はあまり可能性を感じないですね。それでも打つことによって相手が出てくる部分はあります。

前にも言いましたが、右足のクロスがまた最近は出なくなってもいますね。そういった改善すべきところはいろいろありますが、トーナメントですから、結果的に勝ち上がればいいという考えでいまは良いと思います。

RP:ありがとうございました。

(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』沖永雄一郎記者)
 
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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

(c)REDS PRESS