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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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完全に、伊藤選手が主役。とにかく、いい試合だった(J1第36節・横浜FM戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説します。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の沖永雄一郎記者です。


RP:11月20日(土)に埼玉スタジアム2002で行われた明治安田生命J1リーグ第36節、横浜F・マリノス戦は2−1で浦和が勝利しました。

都築:うまく戦ったと思います。ポゼッションはマリノスが握って、完全に割り切ってカウンターを狙うという戦い方になりましたが、それに関しては相当うまくいっていました。マリノスはずっとやってきたサッカーで、ゴール前までビルドアップしてくる中、守備がうまくやれていたかなと。

ただ、前半の最初、前田大然にヘディングショートを打たれる場面がありましたが、あそこまでラインを下げる必要はないと思いますね。フリーでクロスを上げさせてしまっているし、ライン下がりすぎていたので、走り込まれてヘディングを打たれた際に、アレクサンダー・ショルツは両足で飛ぶしかない状況でしたから。

ああいう場面のように下がりすぎかなと思えることもありましたが、サイドの攻撃に対しても、人数が足りなかったのは失点シーンだけだったかなと思います。それ以外は攻め込まれても最後のところでしっかり守れていました。ある程度ラインを高く保てていましたし、バランスを崩さないよう意識しているなというのはすごく感じました。それはショルツ選手が上がらなあったこともそうですね。

逆に言えば、だからこそレッズらしいサッカーというか、ビルドアップしていってというサッカーはあまり見られませんでした。ただ負けられない試合の中で、もちろん毎試合負けられないんですけど、相手の良いところを消してカウンターで何度かチャンスをつくっていた。試合に挑む前からあのサッカーをしようとしていたのかなと思います。チームとして準備の完成度は高かったのかなと思いますね。

RP:たしかに、レッズらしさはあまり出せませんでしたが、マリノスの良さも出させませんでした。

都築:まあこれは、勝ったから言えるというのはありますけどね。結果が出たことと、この状況でチャンスを、数は多くはなかったですが決定的なチャンスを作り出せていたことは評価できると思います。相手の最終ラインも相当高い中で、2、3本は良い崩しもできました。多くの人数が絡まずに二人の関係というシーンが多かったですが、そこは狙いだったのかなと。

RP:そんな中で、かなり早い時間帯にレッズが先制しました。

都築:先制点が取れたことは大きかったですね。練習どおりなのか分かりませんが、低くて早いボールを入れて、最後はショルツ選手がよくコースを変えて。うまく伊藤選手のところまで流れていきましたね。彼は待っているだけのような状況でしたが、あそこまで低いボールでつなげたのはよかったですね。

その後も奪ってからのショートカウンターで田中達也選手が裏に抜けたシーンもあって、GKの高丘陽平選手が飛び出して防がれることもありましたが、やり続けたことは評価できるのかなと思います。せっかくなので、お互いがそれをやり合えばもっと面白い試合だったとは思います。マリノスからしても、攻撃を遅らせられるというか、相手が待ち構えているところを崩しにかかるよりも、ある程度は奪って速くという攻撃がしたかったでしょうから。

マリノスには柴戸海選手のような選手はいなくて、受けてさばいてを確実にできる選手が多い。前の選手もアジリティーがあって、細かい連動ができる選手が多いです。さらにシュートがうまい選手、FKを含めてキックで局面を変えられる選手も多くいる。やっぱり強いですね。カウンター対策にもチアゴ・マルチンス選手が効いています。ただ彼一人ではなかなか止められないというところもありました。そこをしっかりレッズが突いたと思います。

RP:レッズの追加点はカウンターからでした。

都築:奪ったあとが相当速かったですね。最初に奪った位置はかなり低かったですが、ピッチを見てもらうと分かるとおり、奪った後のピッチの真ん中あたりはマリノスも相当ルーズです。そこで前を向ければ一気にチャンスになる状況が多かったですね。こういう展開でキャスパー・ユンカー選手がいたら面白いのかなとも思いました。

この試合は完全に、伊藤選手が主役のような感じでしたね。ショルツ選手がこちらの左サイド寄りで前田選手から奪って、伊藤選手がまずサイドにボールを出して。江坂任選手も、最初から伊藤選手ではなく関根選手に出していたんじゃないかと思います。そのとおりだったらかなり連携ができていますね。

そしてそれがあったからこそ、伊藤選手がすぐ次の動き(関根選手からのパスを受ける動き)に入れたなと。マリノスの最終ラインの裏はスカスカでしたけど、そこをよく突いて、田中選手もよく詰めていた。最後も、伊藤選手が田中選手を見ていて狙ったパスであれば相当な技術ですね。シュートにしてはちょっと物足りないキックだったので、ちゃんと狙っていたと思いますけど(笑)。(※伊藤選手はシュートだった旨のコメント)

まあでもよく詰めていましたし、カウンターの連係もばっちり嵌まったシーンでした。この得点シーンも含めて、奪ってからの攻撃がどれも速かったですね。そこは徹底的にやっていましたし、厚みもある程度ありました。非常にカウンターが効いていましたね。

RP:そして終盤に1点は返されましたが、レッズが逃げ切りに成功しました。

都築:正直なところ、試合を通してずっと同じような展開ではありました。マリノスはこじ開けようとして、レッズは粘ってカウンターという。本来のサッカーを多く出せたのはマリノスだったと思いますが、しっかり計算した中で戦って試合に勝ったのはレッズでした。

失点シーン以外にも、何本か難しい場面はあったと思います。前田選手にヘディングされたり、フリーキックやポストに当たったシーンなど何本かありましたけど、崩れていたのはやはり失点のところですかね。山中亮輔選手があそこまで真ん中に入っていかなければいけなかったのか、ショルツ選手が見れたんじゃないかなど。サイドの選手を見ていればあそこまでフリーにはならなかったでしょうし、結果論ですけど、そこを振り返ることも重要ですから。修正できればと思います。

見ていてとにかく、いい試合でした。相手が合わせたサッカーかもしれないですけど、勝ったとことついてはすごく評価できると思います。

RP:次節はホーム最終戦、相手は残留のかかった清水エスパルスです。

都築:モチベーションがどうかですね。レッズは3位の可能性はなくなってしまいましたが、まだ天皇杯がありますし、4位でも可能性がありますから狙っていかないと。清水はあまり見れていなくて、監督も変わってどういうサッカーをしてるのかわかりませんが、いまは残留争いのほうが注目されますからね。清水のモチベーションは高いと思いますから、受けてしまわないように、自分たちのサッカーをやろうとして欲しいですね。

RP:ありがとうございました。


(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』沖永雄一郎記者)

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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

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