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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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鹿島が試合巧者だった。やろうとしているサッカーをすべて消された(J1第35節・鹿島戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説します。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の沖永雄一郎記者です。


RP:11月7日(日)に県立カシマサッカースタジアムで行われた明治安田生命J1リーグ第35節、鹿島アントラーズ戦は0−1の敗戦となりました。

都築:負けるべくして負けた内容でしたね。すべて相手のほうが上回っていた感じでした。ポイントはふたつあったと思います。

ひとつは中盤のプレスを交わせなかったことで、レッズは中盤で前を向けませんでした。縦パスが入っても前を向けなくて、裏に抜ける選手もあまり出てこなかった。平野佑一選手のところもけっこうつぶされていました。そこは一番のポイントだったかなと思います。鹿島はそれが大前提でサッカーをやってきているので、奪った後が速いです。

完全に鹿島のペースで、奪ってからショートカウンターというのが狙いだったと思いますが、そこにはまってしまいました。レッズはそこを交わさないとなかなか展開できないですし、それが悪循環になってサイドの主導権をほぼ鹿島に握られていました。

サイドがもうひとつのポイントで、浦和が高い位置を取れなかったというよりは、鹿島が取らせなかったという展開でした。特に右サイドの西大伍選手のところは狙われていましたね。安西幸輝選手が起点になってチャンスをかなりつくっていました。

鹿島はサイドで主導権を握ればいいサッカーができる自信があったでしょうし、そこをうまくやらせてしまいました。それも含めて、すべて中盤のプレスのところで決まってしまったのかなと。奪われることがかなり多かったですし、前向いて展開していく力を出させてもらえなかったですね。

守備もかなり後手後手になっていました。鹿島はかなり運動量が多くて、人がどんどん動いてくるところをつかまえられずに、ずるずる下がってしまってピンチになっていました。それに加えて、プレスで中盤で引っかけられてピンチになることが非常に多かったです。

RP:失点はセットプレーからでした。

都築:鹿島はある程度洗練されているというか、迫力のあるセットプレーをしてきました。町田浩樹選手のところですべて勝てなかったのが響きました。失点シーンだけでなく前半最初のコーナーキックもそうでしたが、やっぱり町田選手が起点になっていて、あそこで跳ね返せないときついですね。

セットプレーも含めて、鹿島が試合巧者でした。レッズがやろうとしているサッカーをすべて消されてしまって、そこをこじあけていかないとレッズの良い攻撃ができません。そこのせめぎ合いだったと思いますが、鹿島に完全に主導権を握られてしまいました。

ACL出場権も含めて、モチベーションはお互い高かったと思います。そんな中でスコアは1−0でしたが、それ以上に差がある内容でした。鹿島もいまはそこまでスペシャルな選手はあまりいないと思いますが、全員が同じ意識の中でサッカーをしていることは感じます。

チーム力という意味では強いのかなと思いますね。レッズは全然やりたい攻撃をさせてもらえませんでした。チャンスと言えるのは後半の江坂任選手がオフサイドになったシーン(65分)くらいで、中盤で平野選手や小泉佳穂選手がボールを受けて、簡単にさばきながら組み立ていく展開がないと攻めの形が出てこないんでしょうね。

キャスパー・ユンカー選手も残念なプレーだったかなと思います。前半だけの出場になりましたが、何もなかったですかね。ああいう展開の時に、鹿島のファーストチャンスになったシーンのように、ルーズなボールを出してセカンドボールを拾って展開するようなシーンで彼いればチャンスになるのですが。まあそれだけを期待しても上手くいかないですし、彼だけの問題ではないですが、点を取って評価されてきた選手なので、形を作って欲しいなとは思います。

右サイドの西選手も狙われていて、あそこから何回かピンチに陥りました。西選手が攻撃にに出ていって奪われてのピンチではないですからね。場面場面でポジション考えながらやって欲しいとは思います。西選手が入ると、良い時もそうですがどうしても攻撃が遅くなりますね。さばきながら前に出ていきたいタイプなので、スローにはなってきます。右サイドから崩したシーンはなかったですし、左サイドも山中亮輔選手が高い位置からクロスを1・2本入れましたが、もう少し切り込んで上げたいところです。

ほかに気になったのは大久保智明選手ですかね。交代で入ってすぐに、中盤で2本引っかけられてピンチになっていました。やってはいけないプレーを途中から出た選手がやってしまうと流れが持ってこれないので、しっかり試合に入らないと。

まあ、試合運びも含めて鹿島がうまかったと思います。ACL出場権は厳しくなりましたけど、目標をそこに持っているのであればしっかり戦わないといけません。目の前のチャンスをまずつかみに行って、リーグがだめでも天皇杯で優勝すれば権利を得られるわけですから。

RP:それにしても、本当にレッズのよさが出なかった試合でした。

都築:鹿島に勝っているチームはある程度中盤で交わせていると思います。レッズのプレーでちょっと面白いのは、例えば平野選手がボールを受けるととにかく前を向こうとするんですよね。そこでもう一回人を使っておびきよせる動きをすれば、彼が向けなくてもほかの選手が前向きにプレーできますから。うまい選手ですけど、100%前を向こうとするので、無理な体勢の時はけっこう引っかかります。そこは臨機応変にやっていったほうが良いと思います。

とにかく前を向けなかったですし、ロストを恐れて中盤にボールをあまり入れなかったのもあったと思いますね。鹿島も高い位置から行くことを徹底していましたので、レッズとしてもサイドが高い位置を取ってサイドから回していくのも手だったと思います。

RP:次戦は2週間空いて横浜F・マリノスと対戦です。

都築:とにかく、切り替えてやっていかないと天皇杯にもつながらないと思います。ほかにも名古屋と上位対決がありますし、名古屋には絶対勝たないと4位すら危ないですから。さらに順位が下がってしまう可能性もありますので、はっきり意識して結果を意識しながら戦わないといけません。

RP:ありがとうございました。


(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』沖永雄一郎記者)

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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

(c)REDS PRESS