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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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ひさびさに攻撃的な試合になった。平野佑一選手がポイントだった(ルヴァンカップ準々決勝第1戦・川崎F戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説します。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の沖永雄一郎記者です。


RP:9月1日(水)に浦和駒場スタジアムで行われたルヴァンカップ準々決勝第1戦、川崎フロンターレ戦は1−1の引き分けとなりました。

都築:観ていて面白い、いい試合だったと思います。お互い攻めの姿勢が強くて、守るところは両GKも含めてしっかり守っていた。攻守の切り替えも速い試合でした。ただ前回の試合からメンバーも変わって、レッズのサッカーが変わっているので、どう評価するかが難しいところはあります。

普段出ていない選手が出て変わるというのはよくあるパターンですけど、みんな試合に出ている選手たちなので。組み合わせやモチベーションの持って行き方でサッカーが変わるんだなと感じたのと、フロンターレが縦に速いサッカーをしてきたので、逆に合わせやすいのかなとも思いました。湘南に少し近かったのかな。

徳島のようにつないでくるチームには受けちゃうのかなという印象があるので、この試合に関してはお互い縦に速いサッカーで、非常に良かったと思います。その要因としては、ディフェンスから中盤、中盤から前線へのいい縦パスがどんどん入っていたことですね。そこの質の勝負みたいなところがありました。

レッズの前半は平野佑一選手がポイントになっていましたね。悪い意味ではなく、これまでは彼の特長がいまいちわからなかいところがありましたけど、プレッシャーが掛かっていても前を向けるし、失わずにさばける選手ですね。

相手が食いついたところを彼が良いかわし方をして、パスにしても前向くにしても一人置き去りにして攻撃に入れていました。守備も頑張れますし、ボールを失わないので攻撃の起点になり得る、後ろの選手なので起点の前のプレーができることが大きかったです。チームもわかってるので、彼がボールを持てば周りが動き出していい受け方をしていました。

レッズとしては、得点シーン以外ではサイドの攻撃が少し物足りなったですが、江坂任選手が裏に抜けようという動きをしたり、動きの量は相当あってそこへ効果的なボールも入っていました。ひさびさに攻撃的な試合になったと思います。

レッズが先制する前から、フロンターレは負傷者も出てちょっと不運が続いていました。交代で入った山村和也選手がミスをしてくれて、彼は国見高校の後輩ですけど(笑)。ただ良い形でプレッシャーをかけて良い奪いが方できたし、江坂選手も落ち着いていて、関根貴大選手もチャンスでしっかりゴール前に入り込んでいた。関根選手は動き出しもよくて、ここ数試合好調ですね。

その後は膠着したというか、前半はレッズがペースを作っていた中で先制点が取れたので、さらに流れを作れればよかったのですが。前半の最後に鈴木彩艶選手がブロックしたシーンなどはまさにフロンターレの攻め方ですよね。スペース見つけて走り込んでからのシュートなど、その形を後半はもろに浴びて、何回もチャンスを作られてしまいました。

やっぱり、狭いスペースを見つけて入り込んでくるのがうまい選手が多いので、ディフェンスとしてもつかまえづらいですね。前半はレッズが勢いよかったですが、フロンターレも随所にらしい攻撃を見せていました。

後半は小林悠選手を交代で投入して、その攻撃をレッズが受けてしまいました。GKと1対1になるシーンが後半も2・3本ありましたし、フロンターレも選手が移籍してケガ人も出ていて、選手がそろわない中でも出てくる選手は意識高いサッカーをしてきますね。

小林選手の決定機などチャンスを作られていて、後半はライン下がってしまったのかな。そこを突かれました。フロンターレは田中碧選手が移籍して、家長昭博選手の手前で落ち着かせる選手がいなくなってしまった。本来ならもう少しつないでから細かいスペースを攻略してくるのが、それなりに中盤を飛ばして攻めてきていたので、レッズもディフェンスが待ち構える時間があったかもしれません。

失点の場面に関しては、柴戸海選手個人を責めることはできないですかね。崩しの中で裏を取られたところにはしっかりついていかないと。柴戸選手がカバーすることは難しかったですね。ホーム&アウェイで考えるとやっぱり勝ち切りたかったですし、後半も決定的なチャンスは2本くらいありましたから決め切りたかった。

ディフェンスラインも前後半で槙野智章選手とアレクサンダー・ショルツ選手を入れ替えましたけど、安定していると思います。ラインが高いか低いか、攻撃的か守備的かは別にして、最終的な局面で守れているのは強みですし、今のメンバーは人に強く行けるのはありますね。

レアンドロ・ダミアン選手にほとんど仕事をさせなかったことなどは評価できますけど、攻撃的に行く守備ではないかなと感じますし、怖いかもしれないですがもう少しラインを上げたほうがいいかなとは思います。

そのほうが攻撃の厚みが増しますし、裏のスペースもGKがカバーできると思いますから。そこはもう少しGKを信頼してあげてもいいかなと思います。勝ち切りたかった試合でしたけど、見ていて面白い、お互いアグレッシブな試合でした。

RP:今回は江坂選手と小泉選手という前線の組み合わせでした。

都築:小泉選手はちょっと、いまはブレーキになっていますね。もともとフィジカルが強い選手ではないですが、GK目線から見て彼がボールを奪われないのは、やっぱり両足で持てるからです。モーション変えずに両足でボールを蹴れるので読みづらい。方向、コースを限定するのも彼に対しては難しいので、ディフェンスからするとあまり飛び込みたくない選手です。

できればコースを限定してパスを出させるところまでで抑えたい選手ですが、ひとりで局面打開できる選手ではないです。これまでは効果的にプレーしていたのですが、相手も彼のところに厳しくマークに来るようになっているので、失うことが増えています。体を当てられている状態でパスを出そうとしているので、今までの感覚であまり出せてないかなと思います。どこを痛めていたのか分からないですが、まだ本調子ではないですね。なので逆に平野選手が目立つのもあると思います。平野選手は「そこに出せるんだ」というプレーが何度かありましたし、相手が後ろから来ている状況のプレーがうまいですね。

江坂選手については、欲を言えばともうちょっとシュートを打っていいと思います。良いシュートを持っているはずなので、もっとアグレッシブに貪欲に行って欲しいですね。シュートの形も作れる選手ですから。

いまは状況を見てるな、というサッカーで、味方を活かそうとしています。もっと自分が生きるプレーをしていっても良いと思いますね。彼が入るとゼロトップのような形になって、トップで起点になる選手はいないのですが、ポストもやりながら自分が生きるような動き方をしていいと思います。

RP:次は中3日でアウェイの第2戦になります。浦和はやり方を変えないほうがいいですかね。

都築:試合によってやり方がすぐ変わってしまうのでわからないですが(笑)。前の試合(第27節・湘南戦)もかなり受けていましたけど、今回は主導権を握っていました。かといって次もそのサッカーができるかはわからないところがあります。サッカーが安定しないのでなかなか読みづらいですね。今回の得点も、最後のシチュエーションは崩しましたけど相手のミスがらみでした。ミスを逃さないのも勝負強さですけど、いいサッカーをしながら流れの中から得点できなかったので。

1戦目は内容が良かっただけに結果は残念でしたから、次はとにかく勝たないと。フロンターレは負傷したCBの2人が出れないと思いますし、また苦しい布陣になると思うのでレッズがどれだけ攻撃的に行けるかに期待します。

RP:ありがとうございました。

(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』沖永雄一郎記者)

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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

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