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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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チームのために献身的に動く選手が多くなかった。完敗。(FUJI XEROX SUPER CUP・川崎F戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが今季を振り返る。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の田中直希記者です。


RP:今季もお願いします!2月16日(土)に行われた、FUJI XEROX SUPER CUP・川崎フロンターレ戦は0-1で浦和レッズの敗戦。レアンドロ・ダミアン選手の一撃に沈みました。

都築:完敗だった。ただチームとしてこの試合に重きを置いていなかった感じはした。完全に試しの試合というか、試合勘がないところが感じられた。連係面を含めて、どうやって攻めればいいか分かっていない様子だった。守備では最終ラインで守れていたが、攻め方が共有されていない。
たとえば2トップの一角に入った杉本健勇選手がボールをもっても、サポートがいないのにドリブルをしてしまい、相手の守備につかまって詰まってしまい苦しくなるとか…。2トップが横の関係になっていた。一人が下がって、一人が前で動き出して、という動きをこまめにやっていかないと、中盤以降に攻め上がっての攻撃が薄くなる。柏木陽介選手にボールが入っても、出しどころがいない状態だった。

RP:攻撃の停滞は感じました。
都築:柏木陽介選手は、一つのところだけを見てプレーしているような選手ではない。「あそこに出して、そのあとは…と、次、次のことを考えてパスを出している。柏木陽介選手がそうやって考えられる選択肢があることが大事。受け手や、周りの選手もそれを考えないといけない。彼がボールをもったとしても前に出せず後ろに下げるとか、それしかできなかった印象。

RP:正直、川崎フロンターレは強かったです…。
都築:チームとして、完成されていた。奪ってからの攻撃はパワーがあるし、それは昨季からの継続だと思う。それに対して、レッズは中盤でプレスにいけなかった。ボールを取りにいっても、家長昭博選手なんて特に取れない。それでプレッシャーへ行かなくなると、今度は最終ラインが下がる。最終ラインで防げていたところはあったが、先述のような悪循環が起こっていた。中盤でプレスが効かなかったのが原因だ。

RP:ボールを奪ってからの攻撃について、選手たちも課題を口々にしていました。また、相手のプレッシャーが速かったと。
都築:そう。サイドの攻撃もほぼなかった。だから、攻め手がなかった。これは完全にフロンターレができあがっていて、レッズがそうではなかったということ。試合では、縦の関係が大事だ。前線にボールが入ったら、それに反応して動き出す『3人目の動き』が出てくれば、良くなっていくとは思う。
何度もいうが、試合勘のなさを感じたということは、チームとして重きを置いていなかったということだろう。絶対に勝つというのではなく、勝てればいいかな、という出た所勝負になっていた。これから尻上がりに連係はできてくればいいが。埼スタでやる試合にしては完敗という結果に終わってしまった。

RP:ほかに気になったところはありますか。失点場面とか…。
都築:細かいところを言うと、失点のシーンは最初にクロスを競った選手に問題があった。レアンドロ・ダミアンと競ったと、ボールウォッチャーになっている。競ったあとの反応を怠らなかったら、防げたかもしれない。相手のシュートはうまかったが、もっと寄せられた。それに、サイドからのクロスを簡単に上げさせすぎた。ウイングバックの選手の対応が全部後手になっていてた。中で崩され、サイドで対応が遅れるとか、そういうシーンがかなり多かった。
球際などでで負けてしまうと、もう何もできなくなる。確かに相手の家長昭博選手など、うまい選手は多いけど、もっとしぶとく守らなければ。それに、レアンドロ・ダミアンに対して、3人くらいがいっていた。そうなると、少なくとも二人はフリーになる計算だ。不利になっても仕方ない。

RP:そのレアンドロ・ダミアン、素晴らしい選手ですね。
都築:ワシントンっぽい。人を寄せ付けて、空いた選手を使うとかもできるし、自ら縦にもいける。いい選手だった。ワシントンよりも運動量が多かった。
それより気になったのが、ピンチは、相手に崩されてのピンチだったということ。最終ラインで守る自信があっても、それではもたない。中盤でプレスをかけて、パスを出させるところを限定しないと苦しくなる。

RP:課題があふれますね…。
都築:言い出せばキリがない。これらは、どんどん試合で連係を深めていくしかない。チームとしていい補強はできていると思う。ただ、ちょっと気になるのはボランチのところ。エヴェルトンを試したいんだとは思うが、彼はボランチの選手というより、守備ではなくて前向いてナンボという選手っぽい。まあ、これからだろう。
全体として、やろうとしているサッカーが見えなかった。しっかり守ってカウンター、と言っても、それも生きていない。いまのサッカーでは、間違いなく高い位置で奪ったときにゴールをとれる確率高いわけで、奪った位置が低すぎたると、厳しい。
その点、フロンターレは全部逆だった。中盤でタメられるし、良い展開もあった。攻撃で崩せて、いい守備もできた。
レッズは、セットプレーも合わなかったい。まあ、ここで完成してもというのはあるが、それにしても可能性が見えなかった。いい連係なりを少しでも見せたらよかった。準備を何もしてない状態で試合に入った感じだった。チームのために献身的に動く選手が多くなかった。選手がいろいろ言っても言い訳になる。とにかく、やらないといけない。

RP:それでも開幕戦は迫っています。23日、相手はベガルタ仙台。アウェイでの開幕戦です。
都築:徐々に状態が上がっていけばいい。たしかに、フロンターレはよかった。レッズが悪くて、フロンターレがよかったというのもるが、フロンターレがいいという面が大きかった。パスを出したあとの動き出しなど、献身的にやり続けるチームは強い。そういうチームに、レッズもならなければ。

RP:ありがとうございました!
 
(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』田中直希記者)

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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

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