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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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攻撃サッカーでは、守備のオーガナイズがおろそかになる。そのギャップを突いた(J1第32節・札幌戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の田中直希記者です。


RP:11月10日(土)に札幌厚別公園競技場で行われた明治安田J1第32節・北海道コンサドーレ札幌戦は2-1で勝利。ACL争いのライバルに勝って、3位以内入りへの望みをつなぎました!
都築:前半と後半の出来が変わった中で、勝てたのは大きい。前半はとても良かったが…。前半については、相手のビルドアップに対して、いいところで奪えてショートカウンターを出せていた。その流れで1点目をとれた。低い位置ではあったが奪ったところから柏木選手に当てて、そのあとの長澤選手からのパスを武藤選手が決めた。パスは2、3本。シンプルな攻撃だった。
もちろん、後半は浦和が勝っていたから、相手は前に来たというのもある。下でつないでいく札幌のやるサッカーではなかったが、浦和は引きすぎた。
正直、ペトロヴィッチ監督のサッカーは、奪われたあとのバランスがめちゃめちゃ悪い。1点目の場面、武藤選手には中盤の兵藤選手がついていた。ディフェンスラインの選手がついていたほうが良かった。シンプルな攻撃だっけど、あれが決まるのがペトリヴィッチサッカーらしさ。前から言っているように、奪われた際のリスク管理ができていない。長澤選手もフリーだったし、柏木もフリー。中盤から前のリスク管理が特に良くないと思う。誰が武藤選手につくのかあいまいなまま、浦和としては胸トラップ一発でフリーになれた。ペトリヴィッチ監督に、シンプルな攻撃をさせてもらったとも言える。

RP:そのあたり、浦和としてもわかっていたからこそなのでしょうか。
都築:そう。特に、ペトロヴィッチ監督のサッカーを知り尽くしているのが浦和だ。カウンター気味にボールを奪ったら、つなぎにかかったおきに奪ったらバランスを崩れている。そこをうまく突けた。ただ、先制点を決めたあと、三好選手の個人技で何回か危ないシーンがあった。そのうち一つのプレーが、失点になった。彼の個人技は意識しないといけなかったが…。失点したシーンについては、槙野選手が彼についていたが、引いた位置で三好選手が受けたところで槙野選手が釣り出され、そこで奪えずに、さらに阿部選手もかわされてサイドチェンジされた。そのサイドチェンジを出されたのは仕方ないが、出されたあとでクロスを防ぐところが遅れた。上げられたところでは、宇賀神選手がボールウォッチャーになっていた。きれいに崩された。
ただ、札幌の攻撃はそれくらいだった。つながせるところはつながせて、奪うところは奪う。CKを合わされた場面はあったが、危ない感じはしなかった。都倉選手のポストプレーが攻撃の起点。ただ、そこまで成熟していない。ペナルティエリア内でのパス交換はまだまだ。最初はなんとかなく前線の選手にあてて、周りが動いていく形。攻撃としては読みやかった。前半も後半も、ポゼッションは相手側のほうが良かったが、最終的には守れた。札幌の攻撃が単調だったのもある。後半に少し、危ないシーンあったけれど…。

RP:1-1に追い付かれたあとに、勝ち越せました。
都築:後半開始早々に、すぐ勝ち越せたのが大きい。2点目も相手最終ラインのもろさが出たあ場面だ。簡単に左サイドに展開できたという、シンプルな攻撃だ。クロスを上げられたあとも、相手はクリアできた。「えっ」というシーンで得点できた。その「えっ」という失点が多かったのも、昨季までの浦和だが…。攻撃サッカーでは、守備のオーガナイズがおろそかになる。そのギャップを突いた。

RP:レッズの戦い方については。
都築:はっきりしていた。つながせるところはつながせる。取りに行くところは取りに行く。展開させるぶんには問題なかったので。そこはうまく守れていた。
ただ後半、レッズの攻撃というのは、ほとんどなかった。守れる自信もあったと思うが。攻撃はシンプルにカウンターを狙うくらいで。札幌は前から来ていた。そこでピンチになりそうになったのは、奪われたあと。柏木選手や橋岡選手が奪われたりと、中盤で奪われてからのショートカウンターは怖かった。それでも、レッズは奪われたあとにしても後ろに人数がいたので失点につながらなかった。都倉選手がポイントになるのも把握していて、マークに行けていた。危ないシーンは何回かあったけれど、それが失点ゼロに抑えられた要因だと思う。

RP:レッズの課題については。
都築:まだ大きく蹴らなくていいのにな、というシーンはあった。前でキープできれば全体を押し上げられる。ただキープできる選手がいなくて、押し上げられなかった。クリアして相手に持たせて、というサッカー。中盤も割り切っていたかなと思う。
とはいっても、札幌は良いチームだった。コマがそろえば、またボールホルダーの周りで何人も動き出せれば動きが出る。いまは攻撃が単調で、浦和は非常に守りやすかった。いまの攻撃は、いなかったけれど駒井選手と、三好選手が細かい動きでちらして、それにチャナティップが動いて、相手をかき回してというサッカーだと思う。あそこにパスを出せる選手がいて、前で収められたり、中盤で起点になる選手が増えればあなどれないチームになる。まだそこまではいっていないかな。しっかり守れるチームはあんな簡単に失点しない。レッズとしては、トータルに見て勝ってよかったし、必然的だったと思う。

RP:次節は24日、残留争いの中の湘南が相手です。
都築:3位の可能性は厳しいが、天皇杯もある。とにかく、ACL出場権をとってほしい。


RP:ありがとうございました。


(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』田中直希記者)

[記事リンク]2017年シーズン浦和レッズ試合情報まとめ
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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

(c)REDS PRESS