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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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守備も攻撃もいいところなし。ローテーションできないのは弱みかも(J1第24節・名古屋戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の田中直希記者です。


RP:8月26日(日)に行われた明治安田J1第24節・名古屋グランパス戦は1-4。先制したもののその後4失点を喫する大敗でした。
都築:ジョーに全部やられた。レッズは、守備も攻撃もいいところがなかった。守備では前のガブリエル・シャビエルを自由にさせてしまって、プレスも中盤でかからなかった。ただ、最初はよかった。槙野選手が高い位置でシャビエルとジョーをつぶせていた。途中からはラインも下がってしまって、プレスもかからず。全体のコンディションも厳しいのか、運動量も少なかった。守備の意識は、かなり低かったといえる。相手にパスをつながれていて、最後のところで守るろうとしていたが、それも叶わず。低い位置で守備すればするほど、名古屋の個人が生きた。

RP:その結果がジョーのハットトリックにつながったと。
都築:ジョーを見ると、運動量はそこまで多くないが、その質が良いと感じた。特に攻撃に入った時。チームとしての攻撃パターンが徹底されていて、彼にボールが入ったら周りが動き出す。それを徹底してやっている。その、ポイントになる選手をレッズは抑えられなかった。彼を抑えられれば、名古屋の攻撃は機能しなかったのだろうが、いかんせん彼の能力は高い。
一方でレッズが良くなかったのは、ボールを受ける動き出しがなかった点。興梠選手がポストプレーをしようとしても、周りに人がいないから、キープしたところでつぶされたれりしていた。そんななか、オウンゴールではあるが先制できた。興梠選手が抜け出したところまでは、いい形だった。その後のオウンゴールというラッキーな形で点を取れて、勢いよく行けると思ったが…。ズルズルと全体が下がってしまった。点をとるまではよかった。

RP:シュートは打てていましたが…。
都築:それも、前にいけないからミドルシュートを打つという判断になっていた。ボールの失い方が悪く、また失いすぎだった。ファブリシオもキープできず、興梠選手が裏に抜けてもそこへのボールが合わなかった。受け手と出し手の連係のところで、足元にほしいときにスペースに出してしまっていたり、受け手がスペースでほしいときはボールが長すぎたり…。また、動き出しているのも興梠選手ただ一人だけだった。後半、李選手が入ってファブリシオが前線に入ってからは、李選手の受ける位置が低く、バランスが悪くなった。

RP:続いた失点の数々については。
都築:失点シーンは、個人でやられた感じ。まず、PKのところは対応が遅れていた。マウリシオのあのファウルはいらなかった。FKでジョーに合わせられたところも、まず相手が高かった。ジョーはそのシーンだけでなくボールの受け方がうまく、フィニッシュも上手。FKで1点、クロスから2点とられている。ポイントをつぶせなかったのが、レッズとしての敗因だ。クロスからの2点は、相馬選手からのアシストだった。彼はいいと思う。物怖じしなくて、縦に速くてクロスもいい。

RP:レッズ守備陣の対応については。
都築:ジョーの2点目なんかは、槙野選手が振り切られている。あそこはついていかないと。体を当てておかなければやられてしまう。最後の失点場面については、浦和守備陣の集中力が切れていた。槙野はGKにまかせて止まってしまった。あそこでGKが出るのは難しい。DFは、最後までマーカーにくっついていかないといけない。個人の能力でやられてしまった。

RP:一方の攻撃面は。
都築:特長だった右サイドの橋岡選手のところも、いまは縦への突破が読まれている。動き出しについては少なかった言ったが、荻原選手が裏に抜けた一本。あの動きくらいだった。崩そうとすれば崩せただろう相手だが、最後のところの枚数がいないのは問題。例えば橋岡選手がサイドをえぐっても、中に一人しかいないことがあった。ニアに一人つぶれて、ファーを狙うとか、得点に結びつかなくてもそれらは徹底しないと、可能性を感じない。力負けだった。名古屋はいい補強をしている。補強選手がハマっていた。たとえば、エドゥアルド・ネットは相当効いていた。フロンターレのときからそうだったが。名古屋はなんとしても残留するというところだったろうが、いいチームだった。それは個人の能力としても、チームの戦い方としても。力負けですね。

RP:試合後、レフェリングのことも話題になりました。
都築:名古屋寄りのレフェリーだったと感じた。FKからジョーがヘディングで入れたシーンなんか、その前で槙野選手がファウルをとられたが、「あれがファウルをとるのか」という場面。そういうレフェリーも、レッズに味方していなかった。とにかく、ダメージがでかい敗戦だ。
中盤でプレスがあまりかからず運ばれたときは、打ち合いになることが多い。大味な試合が続いている。そして、攻撃では得点の匂いがあまりしなかった。仕切り直さないといけない。

RP:柏木選手が不在で、長澤選手が久々に先発でしたが。
都築:長澤は前に強いタイプ。パスもさばけるんだろうが、柏木選手がもったほうがタメができる。まあ、柏木が出ていても変わっていないんじゃないか。ここは気持ちを切り替えるべき。監督も言っていたように、回復をしないと。ここからプラスαできるかどうかについては、この暑い天気の中で、チームとしてローテーションできないのは弱みかもしれない。柏木選手と長澤選手のボランチだと攻撃のスイッチが入るかもしれない。ただ、青木選手も外せない。選手を入れ替えながら、いい方向に持っていってもらえればいいが…。


RP:ありがとうございました。


(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』田中直希記者)

[記事リンク]2017年シーズン浦和レッズ試合情報まとめ
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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

(c)REDS PRESS