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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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完璧な試合。好守のバランスはかなりいい。これを続けたい(J1第22節・磐田戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の田中直希記者です。


RP:8月15日(水)に行われた明治安田J1第22節・ジュビロ磐田戦は4-0。完勝でした。
都築:完璧な試合だった。浦和が攻撃で狙っていたメインテーマというのは、取ったあとの攻撃、だったと思う。その中で、大きな展開から始まり、中で人数を掛けて崩すという形が前半からかなり見えた。あとは点をとるだけどいうところだった。そして、後半に点を量産した。
セットプレーでとったゴール以外は、崩しのところに人数をしっかり掛けている。最後のカウンターだって、しっかりファブリシオが荻原選手とともに並走していたからとれた。
まず1点目は右サイドから崩しにかかり、こぼれ球をミドル。ああいう仕掛けはいい。エリア内での崩しでは、運動量多く崩したというより、パスで崩してシュートまでしっかりもっていっていた。ファブリシオの1点目のボレーは素晴らしかったが、まあ正直オフサイドだった。それを含めて、最後のフィニッシュの形も多かったし、相手が的を絞れない攻撃ができた。それが翻って、攻めやすさにつながっている。顕著だったのはサイド攻撃だ。右サイドに入った森脇選手は、前半から単純なクロスではなくて中に切り込んで複数人が絡むシーンを作った。一回、その攻撃を出すことで、中に入ってくるのか、クロスなのか、相手は両方を警戒して、攻撃側としては両方の形が生きてくる。メリハリつけてやっていることがうかがえた。

RP:
磐田の出来が悪かったのか、浦和が良かったのか。
都築:相手が攻められなかったことで、浦和は攻撃に比重をかけられた。強調したいのは、相手のカウンターを受けたときの対応がしっかりしていたということ。浦和が攻めているとき、後ろのリスクマネジメントがかなりよくできている。人が足りないシーンはあまりなかった。好守のバランスはかなりいい。人をかけて攻めるときも、例えば槙野選手がいったら誰かが下がる、というようにバランスをとれていた。その点、青木選手がかなりバランスをとっていて、柏木選手が前でプレーできたのも大きかった。何度もいうが、バランスが非常に良かったと思う。

RP:
磐田の守備がよくなかった面はあるように感じました。
都築:2点目の得点シーンを見ると、相手のゆるさは感じる。ただ、武藤選手の働きの良さも見逃せない。彼がシャドーのところから裏へ飛び出す動きを何度も繰り返していた。相手は捕まえきれずに怖かったと思う。2点目の場面、武藤選手がターンしたあと、彼に気を取られて中央が空いた。武藤選手のところからラストパスもかなり出ている。彼は周りの人が生きるプレーをしている。
武藤選手は、パスを出したあとの動き直しとか、惜しまずにやってくれる選手だ。チームとして、大きなアクセントになる。とはいえ、フリーにさせすぎだが…。

RP:
磐田の時間帯も、ありましたよね?
都築:全部の時間帯、ほぼ浦和がペースを握っていたけれど、前半の30分くらいは磐田にチャンスがあった。ただ、体を張って最後は守備することができていた。守備は、かなり良かったと思う。

RP:森脇選手が入り、コンビネーションプレーがよくなったという話が選手からもありました。
都築:サイドのところから、中に入り込んだときのコンビネーションはかなりいい。森脇選手からのサイドチェンジもあった。人が動けば、ある程度パスの選択肢も増える。みんな受けたがる試合はいい試合だ。受けたくないと思ってプレーしていると、展開も遅くなりがち。昨日は完璧にできていた。
セットプレーでも点がとれた。あれは、完全に磐田GKのボールだった。相手守備は、GKが出ると思ったんだと思う。槙野選手がうまくマークを外して決めたが、相手の守備がゆるすぎた。試合展開としてみれば、2点目で試合は決まった。

RP:
運動量も相変わらず多いです。
都築:そう、一番良かったのは走り負けていないところ。選手たちコンディションはかなりいいと思う。これを継続していけば、この日のような試合ができて、自ずと結果はついてくる。

RP:
阿部選手のプレーはいかがでしたか?
都築:阿部選手の場合は、かなり割り切ったプレーをしていたと思う。攻めにはそんなにいかない。自分からプレッシャーもあまりいかない。そのぶん、周りを動かすことや、シンプルなプレー選択で、いい動きができていたと思う。
阿部はボールに釣られていくことがない。ディフェンスラインは整っていた。マウリシオは前に行きたがる。ただ行ったとしても、守備のときにバランスよく守れれば、問題はない。青木選手がバランスをとるところができれば、ディフェンスラインは攻め上がっても問題ない。攻撃は人かけないといけないわけで、マウリシオが行くのか、そのサイドの選手が行くか。周りが感じてやらないといけない。青木選手がバランスをとれないシーンなどは、柏木選手がバランスとるとなど、そういったことはやっていかないといけない。

RP:
相手がベタ引きではなかったのも、浦和が良かった要因の一つでしょうか。
都築:磐田は、縦に長いボールをどんどん入れるというより、下から組み立てるスタンス。浦和は、ああいう打ち合いに強い。攻めてきたほうがやりやすい。しっかり守備もできていたわけで、そうなるとペースをつかめる。

RP:次戦は清水戦。アウェイで得意とするチームとの対戦です。
都築:阿部選手、森脇選手が良かったことで、次はどうするのか。メンバー選びは見どころの一つだ。阿部選手を最終ラインに入れるのは、一つのオプションになる。森脇選手は右サイドで十分計算できるとわかった。
浦和としては、磐田戦で見せたプレーを続けること。いまは体、そしてメンタルのコンディションもいい。ファブリシオに厳しいマークを付かれても、今度は興梠選手が生きてくる。どんどんポジティブな要素が出てくるはずだ。
いま、浦和には決定力あるファブリシオという存在がいる。1点目はオフサイドだったが、ちゃんとステップ合わせて上手だった。二点目も冷静だ。彼は、フィニッシュワークのところにいいものをもっている。冷静にGKを見られる選手だ。


RP:ありがとうございました。


(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』田中直希記者)

[記事リンク]2017年シーズン浦和レッズ試合情報まとめ
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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

(c)REDS PRESS