大槻さんは良いモチベーターだった。選手たちの姿勢が積極的になった(J1第9節・札幌戦)
浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の田中直希記者です。
RP:RP:4月21日(土)に行われた明治安田生命J1第9節の北海道コンサドーレ札幌戦は0-0。スコアレスドローでの決着となりました。
都築:勝ちたいという気持ちはお互いに見えた。球際も激しく、前に前にという意識が出ていた。ただ、お互いに崩し切れなかったところでこの結果となった。札幌は、守備に入ったときには5バックになって、サイドの選手も全員中央にしぼっていた。浦和として、切り替えの速いときはそこへ相手が戻る前に突いていってチャンスになっていた。特に、後半は。そこから崩していければよかったが…。それよりも、札幌が良かった。すごくシンプルな攻撃ではあったが、良さは出ていた。札幌は小さくてアジリティーのある選手が多い。ボールを持ったら一人で崩しにいける選手がそろっていた。ペトロヴィッチ監督がまず最初に広島で指揮を執ったときも、能力が高い選手から使われていた。まだペトロヴィッチ監督がやりたいサッカーはできていないようだが、やり方は変わっていなかった。
RP:札幌は最前線の都倉賢選手のところを起点として攻めてきました。
都築:レッズはその攻撃に対して受けて守ることもなかった。やはり、ポイントは都倉選手のところ。阿部選手がしっかりマークに付き出してから仕事をさせなかった。相手のストロングポイントを抑えられた。
浦和の攻撃は、右サイドの橋岡選手のところから良いクロスが上がっていた。ただ、あまり左サイドが機能していなかったのは気になる。前にいた武藤選手が左に入っていく形で、宇賀神が上がっていくのではない。宇賀神が上がっていければ、もう少し崩せるかなと思う。
RP:右サイドの橋岡選手は、定着しつつありますね。
都築:橋岡選手はいいですね。前への力強さがあるし、守備も粘り強い。クロスも精度が上がっている。いまのところは、だが、期待できる。
RP:攻撃全体に関してはいかがでしょう。
都築:前線の興梠選手はよくボールを収めていた。以前まで彼の周りの味方が遠かったのが、大槻さんが監督になって、彼が2トップ気味に仕事できるようになって、簡単にさばいたりすることができるようになった。興梠選手の特長が出るシーンはあるし、実際に裏に何本か抜けられてチャンスになっていたが、その回数がまだ少ない。
後半、ゴールラインを割ったのにオフサイドになったシーンのような攻撃がどんどん出てくれば、今度はサイドも生きる。この日は、オフサイドのシーン以外は決定的なところまではいかなかった。
RP:では、どう改善すれば…。
都築:まず攻撃のバリエーションを増やせば、得点の匂いが増えてくると思うし、その中ではロングボールも必要な要素。また、真ん中の攻撃だけでなく、サイドも必要。そういった攻撃の質を上げていければいい。
中盤がそんなにないサッカーだった。速いサッカーになると、全員で前に行くのは厳しい。しっかり攻撃を組み立てていく試合展開になれば良くなると思う。
RP:攻撃で良化しているポイントもあると思います。
都築:まず監督が大槻さんになって、モチベーションが上がっただけでなく、選手たちのボールを受ける動きが多くなった。そこで、ボールをもらえない場合もあるけれど、そういう動きを惜しまずやっていくことで、どこかでスキを突いていける。ずっと言っているけれど、いい流れでないと選手はボールを受けたくない。次出すところを探さないといけないから。いまは、それが改善されている印象。
昨季から言っていたが、一番いいサッカーができているのは、押し込んだあとに、選手たちのボールタッチが少ないとき。少なければ少ないほどいい。ワンタッチ、ツータッチでつながるような展開になれば、レッズらしい攻撃、となる。一度、空振ってもやり続けることが大事だし、簡単にプレーできるようになる。トントントンとつないでいけるようなサッカーになればいい。
セットプレーを含めて、選手たちの姿勢が積極的になっているのはいい。得点の可能性は上がっていくのだと思う。
RP:守備でも無失点に抑えました。
都築:相手は単純な攻撃でしたけれど、ポイントを抑えて、つぶすところはつぶせていた。そこはできている。
RP:セットプレーに関しては。
都築:セットプレーでは、一本いいボールがあったが、決めることはできなかった。膠着しているときは、1本のセットプレーで流れを変えられる。そういうところを増やしていければより良くなる。
RP:これで大槻毅監督は無敗で任を終えることになりました。
都築:良いモチベーターだったと思う。選手たちに、とにかく良いモチベーションを与えた。その伝え方は、古臭い言い方だったかもしれない。ここはやるんだ、とか。それに分析も確かな方。そういう面も大きかったのだと思う。
RP:そして、22日からオリヴェイラ監督が指揮を執っています。
都築:どうなっていくのか楽しみ。まだ、最初のところはオリヴェイラのやり方が浸透しないと思うが。オリヴェイラ監督の攻撃はシンプル。前線は2トップで、4ー4ー2だと思う。鹿島の選手に聞いても、シンプルだと言っている。彼もモチベーターだ。ここから、また仕切り直しになる。
RP:そして25日(水)には柏戦がやってきます。
都築:まず必要なのは結果でしょう。取りこぼしてはいけない。リーグ戦の順位を見ても、1位の広島が抜けているが、まだまだまだまだ。リーグ戦の3分の1くらいし終わっていない。監督が代わって新しい選手も使われるだろうし、これからが楽しみだ。
RP:ありがとうございました。
(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』田中直希記者)
[記事リンク]2017年シーズン浦和レッズ試合情報まとめ
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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。