展開が早く、全体的にイケイケな試合。直輝は良かった(ルヴァンカップGS第4節・G大阪戦]
浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の田中直希記者です。
RP:4月18日(水)に行われたJリーグYBCルヴァンカップ第4節・ガンバ大阪戦は1-0で勝利。大槻監督の無敗記録は続いています。
都築:前半は、ガンバのほうが多少アグレッシブにきていた。その中で、レッズは左サイドからの攻撃が効果的だったと思う。この日のレッズは[4-4-2]。その右サイドに入ったマルティノスは、しかけてはいたが効果的ではなかった。
ガンバは、その対面の左サイドにボールを集めてきて、泉澤選手などのクロスからチャンスをつくっていた。決定的なところまでいっていなかったが、泉澤が切り込んでかわして、かわしてシュートを打つなど、いい形も見せていた。
両チームとも縦に早いサッカー。最終ラインの裏にアタッカーが抜けていって、そこに入れるボールも多かったと思う。レッズではナバウト、ガンバは左サイドが、そういう形を作っていた。ナバウトのところ、また泉澤のところからクロスを上げて何とかしたい、というように見えた。
RP:確かに、展開の早いサッカーになっていました。
都築:そういうことを考えると、落ち着かない試合だった。急いで急いで、というサッカーになっていた感じはする。あとは質の問題だった。フィニッシュの質、クロスの質。それだけでなく、全体の質が高いとはいえなかった。ずっと落ち着かない試合。ボールを持ったら前にという意識は高かってけれど、チャンスは少なかった。ガンバは試合に出ていない選手ばかり。レッズもユースから昇格した選手を使いながらうまくやろうとしていたが、全体的にイケイケになっていた。特に、前半はそういう感じが続いた。
後半は、右サイドのクロスからいい形が何本かあった。ただ、それでも質はそこまで高くなかった。右からも攻めようとしていたんだと思う。あとは利き足でない右足でのシュートになったが、ナバウトがパスを出して李選手が抜け出したシーン。流れの中からのチャンスはそのくらいだった。
RP:気になった点はありましたか?
都築]互いにチャンスになっていたのは中盤で奪ってからのカウンターだ。マルティノスがヒールで出そうとして相手に奪われ、結局シュートまで打たれたのがあった。ああいう場面は作ってはいけない。
気になっているのは、ナバウトとマルティノスが機能していないように見えるところだ。二人がボールを持ったときに、あまり期待できないように感じている。スピードで縦に抜けるわけではないし、クロスを上げられてもいない。ナバウトは頑張って一人で持ち出していっているが…。救いとしては、ボールをロストしてからしっかり追いかけているところ。あれで戻らなかったら大ひんしゅく。守備の意識はあるのかなと思う。
RP:レッズの決勝点は、PKでした。
都築:微妙な判定だった。ただ、青木選手がいいタイミングで縦パスを出した。武富選手はそれを呼び込む動き出しをしていなかったが、青木選手がズバッとそこにいれた。いいスペースにボールを入れて、いいアングルでそれを足下に受けた。武富選手の受け方はうまかったが、その前の、青木選手のパスで決まった感じ。良い受け方ができるパスだった。あそこに入るとチャンスになる。背負って受けるよりも、1本のトラップで決まるような、絶好のスペースにパスを入れられれば決定機が生まれる。
PKを奪った場面は、二人だけの関係だったが、いい形。そして、それを武富選手が落ち着いて決めた。
RP:この結果はどう捉えていますか?
都築:ガンバも経験がない選手が多かったから、試合は探り合いという感じになっていた。どうやって点を取ればいいか考えながらサッカーをしていたんじゃないかな。その中でも、ガンガン前に入れていくのではなくて、中盤でつないでいながら前の動き出しを待つとか、方法はあったと思う。一人が動いたところに五分のロングボールを入れるとか、ナバウトがスペースを突くという動きはあったが、裏に出ていった選手の周りに誰もいなかった。サポートに入っていなければ、そこからの展開ができなくなる。ゴール前までしっかり運んで、そこから崩しに入ることがあれば、一本のロングボールも生きるが、単調に前に、前にというとあまりチャンスにはならない。前に急ぎ過ぎな試合になっていた。
RP:気になった選手はいましたか?
都築:直輝はいい。ボールを失わないし、球際にも強い、ロストボールもしっかりケアする。献身的な動きをする選手になっている。
あとは、こういう機会で若い選手が経験を積んでいくことが大事で、そういう意味では柴戸、荻原らはいい経験になったと思う。
それに、GKの福島選手。落ち着いていていい。いまのところは、だが。2試合で失点をしていないので、自信もついてきている。結果も1−0だし、監督が代わっても、流れが断ち切らないような試合ができればいい。
RP:19日にオリヴェイラ新監督の就任が発表されました。
都築:オリヴェイラがどういうサッカーをするかわからない。以前、鹿島でやっていたのはとても単純なサッカー。動き出す選手も固定されているようなサッカーだった。彼とははオールスターで一回やったが、良いモチベーターだと思う。とても落ち着いているし、「監督」っていう感じがする。冷静な監督。
今の流れがいいだけに、監督交代がプラスにいくのかマイナスになるのかは気になる。連戦の途中で、それに大槻さんがいい結果を出しているから、その流れを切らないように選手が意識しないといけない。監督のやりたいサッカーがすぐできるわけではないから。
その点、興梠はオリヴェイラを経験している。彼が周りに伝えていければいいと思う。
RP:次節は札幌戦です。相手はミシャが率いるチームです。
都築:札幌はけっこう単純なサッカーをしている。まだ、ペトロヴィッチ監督がやろうとしているサッカーではない。一人、前線で都倉ががんばっている印象。その、いちばん危険な選手を抑えないといけない。
大槻さんはこれまでリーグ戦全勝。負けずに引き継げればいい。期待して試合を見たいと思う。選手個々の能力でいうと、間違いなく札幌よりも上。変に意識する必要はない。
RP:ありがとうございました。
(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』田中直希記者)
[記事リンク]2017年シーズン浦和レッズ試合情報まとめ
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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。