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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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今の戦い方で合っているのはACLを獲った戦い方(J1第34節・横浜FM戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の菊地正典記者です。


RP:12月2日(土)に埼玉スタジアム2◯◯2で行われた明治安田生命J1第34節、横浜FM戦は0−1で浦和レッズが敗れてしまいました。今季のリーグ最終戦、ホーム最終戦を勝利で飾ることはできませんでした。
都築:攻撃としては今までより形が見えた。その要因としてはラファエルシルバ選手がいなかったので興梠(慎三)選手が起点になったこと。興梠選手がボールを触る回数がかなり多かった。興梠選手にボールを当てて興梠選手がためて後ろから攻撃に絡む動きをすることが結構見られた。ただ、絡むところが中盤で組み立てて柏木(陽介)選手から興梠選手に入るとか、そういう形ではなくて後ろから長いボールが入っているので、いくら興梠選手がタメてくれてもほかの選手が絡むまでに時間がかかってしまうので相手も守りやすい。そんななかでサイドにもしっかり人数を掛けて崩せていたし、興梠選手だけじゃない攻撃パターンもあったけど、今回は相手のGK(飯倉大樹)が良かった。彼が防いでいたので点が入らなかったけど、入ってもおかしくないシーンも何度かあった。

RP:興梠選手が二度ゴールを割りながらオフサイドになり、特に二度目はかなり際どかったなどということもありました。
都築:レッズからするとそういう不運な面もあった。横浜FMも先制してから引いていたし、終盤は崩れたけど今季も守備が良いチームだったので、攻めづらさはあったと思う。それでも今までより攻撃の形が見えた。

RP:
ラファエルシルバ選手がいないことを要因に挙げてしましたが、実際にどのような違いがありましたか?
都築:ラファエルシルバ選手がいるとドリブルでゴール前まで運ぶことが多い。今回はそれとは別物だったと思うけど、今の戦い方で合っているのはACLを獲った戦い方なのかなという気もするし、相手の条件で結果が変わってしまうということもある。それは何かというと、Jリーグではラファエルシルバ選手がボールを運んでも最終的に相手が待ち構えているので、引き連れていくということはあまりない。最終的に人が待っているところに向かっていくイメージ。それだと厳しい。ラファエルシルバ選手がACLで生きたのは、彼が持つと何人かが集まってきて個人の力でかわしてシュートまで持ち込めたから。1人に対して3人とまでは言えないけど複数人つくと中が空く。そういう意味ではラファエルシルバがいて、ACLの戦い方をして、なおかつ相手が守りに入らないパターンだと結果が出る。ただ、フォーメーションとして興梠選手がキープしても前の選手が絡むためには距離がある。

RP:
川崎F戦、横浜FM戦では攻撃の形を変えましたが、それでも興梠選手が孤立してしまうシーンは少なくありませんでした。
都築:興梠選手が悪いわけではない。サイドにボールが入ると何回か動き直していると思う。横浜FM戦も柏木選手からGKとDFの間にパスが出て興梠選手がゴール前に飛び込んだシーンは最終的にボールには触れなかったけど、興梠選手が生きる形。ああいう形がどんどん出てくればいいと思う。

RP:前半から圧倒的に主導権を握りながらも後半に失点を喫してしまいました。
都築:失点シーンはボールにつられすぎた。シュートを打った前田直輝選手を誰も見ていなかった。右の前で待っていた前田選手が中に入ったけど、そこに人が誰もいなかった。シュートはうまかったけど、フリーで打たせてしまうとああなってしまう。簡単に中に入れさせたのも一つの問題だし、ミスが重なると失点してしまう。横浜FMが良かったわけではなくて、レッズが決めきれなかったという試合だったと思う。集中すればしっかり守れる横浜FMを得点という形で崩し切ることができなかった。崩すシーンは何度かあったけど、崩しきれなかった。

RP:浦和に対して横浜FMのチャンスが多かったわけではなかったですしね。
都築:崩されたシーンはほとんどなかった。悪かったばかりではなくて良かったことの方が多かった試合ではあったと思うけど、あの戦い方だと今のJリーグでは勝ちきれないのかなと思う。やっぱりモチベーションの問題もあったと思うし、今シーズンはペトロヴィッチ監督が契約解除になってサッカーを変えた結果がこうだったということ。ACLでは優勝できたけど、リーグ戦では改善しきれなかった。

RP:ペトロヴィッチ監督が率いていた際からリーグとACLの戦いの違いに苦しんだシーズンでもありましたね。
都築:パスをつなぐことはできると思う。ただ、目的はどこなのかが問題で、ゴールに向かうのか、その局面を崩すためなのか。そこは色が出たと思う。ペトロヴィッチ監督はゴールに向かうためのビルドアップだった。今はつなぐのがうまいとは思うけど、局面をかわすだけという感じがする。ずっとパスをつないでいろと言われたらすごくうまいんだろうけど、それじゃサッカーは勝てない。ACLを獲ったという結果がある以上、判断できないところはあるけど、2人を生かすためにどういうポジション、どういう配置でやるのかというのはクラブワールドカップもそうだけど来年もどうなるのかは楽しみ。何かを獲りに行って何かを犠牲にしたという感じがしてしまう。クラブワールドカップのために切り替えないといけない。とはいえ高いモチベーションで臨める大会なので心配することはないし、楽しみ。

RP:初戦の相手は開催国枠、UAEのアル・ジャジーラになりましたが、一つ勝てばレアル・マドリーと戦うことができます。
都築:アジア王者としてはレアル・マドリーと戦わないといけない。ホスト国には負けられない。レアル・マドリーとやってどれだけできるかという戦いだし、意外とハマると思う。かなりプレスが激しいだろうからペトロヴィッチ監督のサッカーだとボールを回せないけど、今は簡単にやるところはやるという切り替えたサッカーができるから。こんな言い方をするのは良くないかもしれないけど、初戦は勝って当然。勝ってほしいという希望も込めて、照準はレアル・マドリー戦だと思う。アル・ジャジーラはやりにくさはあると思うけど、初戦で勝ってもらってレアル・マドリーと戦う姿を見たい。

RP:ありがとうございました。


(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』菊地正典記者)

[記事リンク]2017年シーズン浦和レッズ試合情報まとめ
[記事リンク]2016年シーズン浦和レッズ試合情報まとめ
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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

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