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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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ラファエルシルバ選手のところでチャンスになるが、そこで止まるから興梠選手が生きない(J1第31節・広島戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の菊地正典記者です。


RP:10月29日(日)にエディオンスタジアム広島で行われた明治安田生命J1第31節、サンフレッチェ広島戦は1-0で浦和レッズが勝利しました。
都築:今季見てきたなかで一番良い試合だったんじゃないかと思う。広島の関係もあると思うだろうけど、良い試合だとみんなが感じたんじゃないかと思うような試合だった。やっぱり中盤での攻防。広島がかなりプレッシャーを掛けてきているところを、レッズがかわそうとするポゼッション。これは逆もしかり。そういう攻防が、レッズが点を取って広島がパワープレーに来るまで続いていた。それが良い試合だったと思う一番の要因。

RP:
立ち上がりから一進一退の攻防が続いた印象でした。
都築:いま今の広島は中盤でボールを取ってパトリックに1本のパスを当てるという形だと思うけど、そのパスを出せる選手もいる。ただ、レッズもプレッシャーをしっかりかわしていた。特に柏木(陽介)選手。かなり厳しいマークだったと思うけど、柏木選手が難しいことをせずにパンパンパンとはたいて、柏木選手のパスを受けた選手が展開する。青木(拓矢)選手の展開力があったと思う。特に右サイドに対して。レッズも相手の中盤をつぶしにいっていたし、決定的なチャンスは少ない試合だったけど、それでも見応えがある試合だと思えるぐらい展開もできていたし、中盤でのプレッシャーもあったし、運動量も落ちなかった。

RP:浦和は全体的に機能していましたね。
都築:いまのレッズのフォーメーションは合っていると思う。はめ込んでいった時に青木選手のワンボランチも良いし、遠藤(航)選手の右サイドバックも悪くない。センターも今回は槙野(智章)選手だったけど人に対してしっかり守れるし、阿部(勇樹)選手はセンターバックでもボランチでもできる。左サイドはちょっと機能していなかったけど、遠藤選手の攻撃参加が効果的。何回も繰り返すわけではないけど、上がった時はチャンスになっている。

RP:その形で得点が生まれました。
都築:まさに得点シーンはその典型で、ボールを回して相手を引きつけておいて、青木選手が遠藤選手に展開した。右サイドを完全に崩せたし、クロスもすごく良いボールだったし、長澤(和輝)選手がフリーになったのは広島のDFもあのシーンは甘かったけど、一番良いシーンが得点になった。ラファエルシルバ選手がGKと1対1になったシーンも、広島が攻めてきているボールをプレッシャーをかけて奪ったあと、裏に抜けた。今までは[3-4-2-1]のミラーゲームでお互いがポゼッションを取りながら数的優位を作ったら勝負を掛ける流れだったと思うけど、いまは、以前と違うスタイルながら互いに同じようなサッカーを狙っていた。広島も点を取る形はあったものの、浦和の守備が勝ったと思う。ビルドアップする時に西川(周作)選手も関わっていたし、いままでとは違うけどお互いに良いところを出した試合だったと思う。レッズが1点を取ってから10分ぐらいは同じ流れだったけど、それからは広島がロングボールになったので浦和も下がったけどうまく対応したと思う。最後の最後の西川選手のブロックは、GKからすると多分、思っていた感じではなかったと思う。

RP:相手よりも先に動いた感じがありましたね。
都築:先に倒れたので残り足に当たったから結果オーライだけど、100%満足したセーブではなかったと思う。でもしっかり足を残していたのは良かったし、ここのところは西川選手個人も良かったし、代表に復帰したのも良かった。自分が実感しているのとそういう結果が一致するのも良いこと。チーム全体として終盤も含めて集中して守っていたし、良い試合だったと思う。ただ、興梠(慎三)選手が気になる。縦に良いボールが入らない。

RP:選手たちも気にしていますが、今の形だとどうしても興梠選手が孤立するシーンが目立ちますね。
都築:ラファエルシルバ選手がポイントになっている。彼にボールが入ったときは確実に興梠選手が生きない。でもそれが流れとして悪いというわけではない。ラファエルシルバがボールを持って前を向いたときは結構、良いチャンスになっている。一人、二人が絡んで崩しにいくときはもっと良いチャンスになるし、そこで相手も人を掛けてくるから、本来ならば興梠選手が生きてくるはずだけど、ラファエルシルバ選手が一人で完結しようとしているところがある。だから興梠選手まで回らない。チャンスになっているだけに、プラスアルファで興梠選手が使えるパターンが出てくればバリエーションも増えると思う。それは贅沢な悩みかもしれないけど。

RP:少しずつメンバーも固定されはじめ、チームとして形になってきたと言えそうです。
都築:青木選手も変わらずよくバランスを取って、元々から展開力もあったし、それが生きている。長澤選手もアグレッシブさを感じるし、良いところが多い。非常に良い試合だったと思う。でも繰り返しになるけど、それは広島も関係していたこと。広島が良いサッカーをしてくれたから、それをかいくぐろうとするレッズのサッカーがうまく機能した。ミスも多かったけど、あのプレッシャーのなかでミスをするのはレベルが高いミスだと思う。無意味なミスではなかった。それにミスをした後の切り替えが速かった。このような戦いを続けてくれれば良い結果が出ると思う。


RP:ありがとうございました。


(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』菊地正典記者)

[記事リンク]2017年シーズン浦和レッズ試合情報まとめ
[記事リンク]2016年シーズン浦和レッズ試合情報まとめ
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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

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