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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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集中しておけば防げた失点ばかりだった(天皇杯4回戦・鹿島戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の菊地正典記者です。


RP:9月20日(水)に熊谷スポーツ文化公園陸上競技場で行われた天皇杯4回戦、鹿島アントラーズ戦は2−4で浦和レッズが敗れてしまいました。
都築:両チームとも「天皇杯」という感じだった。モチベーションは高いほうだったと思うけど、自分たちが取りにいくエリアというかブロックが結構、低かった。守備はある程度のところまでは来させて、そこから勝負というような。中盤からプレスを掛けていく感じではなかった。天皇杯なのでああいう流れになってしまうのかなと思うけど、良い試合だったとは思う。レッズは、チャンスの数を見れば分かるけど全体的な主導権を握っていたし、失点シーン以外は相手のチャンスがほとんどなかった。ただ、ピンチがほぼ失点になってしまった。それは敗因だけど、チャンスを作っているときは相手のミス絡みもあったけど良い形を作れていた。よく追いついたし、試合を面白くはできたと思う。

RP:全体的に主導権を握り、チャンスも作りながらも結果を出せませんでした。
都築:2点取っても4点取られてしまったので、そこが確実な敗因。集中しておけば防げた失点ばかりだった。1失点目はレオ・シルバ選手の縦パスで決まってしまった感じ。スルーパスを出した土居(聖真)選手にプレッシャーを掛けられなかったのもあるし、前を向かせてしまったこともあるけど、前を向かせた後に阿部(勇樹)選手と槙野(智章)選手がいたし、特に阿部選手がマークに付ければあそこまで簡単に裏に抜けられることはなかったと思う。相手のテンポも失点シーンだけは速かったのでついていけなかった。

RP:1失点目はあっさり崩されてしまった印象がありますが、いかがでしょうか?
都築:ただ、1失点目は崩されたというか、ホワイトボードで「こうやって、こうやって…」ってやれば形は取りつくろえるけど、実際にグラウンドでやっている選手はちょっとしたタイミングの外され方でタイミングが変わるし、レオ・シルバ選手の縦パスはかなり効いていた。あのパスが出た時点で崩された感じがした。あそこにプレッシャーにいかないといけないとか、狙っていないとダメだということって口では言えるけど、あの状況であそこまで良いパスを出されると苦しい。そういうことを含めても、鹿島は勝負どころを見極める感覚があるのかなと思う。

RP:2失点目はPKでしたが、それに至る流れも…。
都築:似たような現象。縦パスが入ってからの動き出し、遠藤(航)選手が中村(充孝)選手に付いていったけど、逆サイドがフリーになった。鹿島はチャンスになればスピードを上げてきたので、そういう点でうまかった。

RP:2点ビハインドはかなり苦しい状況かと思われましたが、その後は一転、連続してゴールを奪いました。
都築:2失点してしてからは、チャンスを作りながらよく追いついた。形としても1点目はセットプレーの流れではあったけど、森脇(良太)選手がよくつないだのもあるし、ズラタン選手が冷静に決めた。2得点目は武藤(雄樹)選手につながる前に2人がゴール前に入っていった。フリーでクロスを上げられたというのもあるけど、2人入っていけたので鹿島の選手はその2人に付くしかなかった。それで武藤選手がフリーになって決めることができた。それを考えても攻撃に人数を掛けられていたと思う。特に槙野選手が左サイドで結構、前に行くし、槙野選手が絡むとおもしろいというか、崩せる形が増えてくる。

RP:しかし、追いつきながらもすぐに勝ち越しを許してしまいました。
都築:3失点目で結局は勝負が決まってしまったと思うけど、2−2になった後の失点なので、ああいうミスは許されないと思う。スローインから槙野選手がボールにつられてしまって、一発ではたかれて展開された。あそこも集中さえしていれば防げたんじゃないかと思う。ただ、その後も矢島(慎也)選手のシュートやオナイウ(阿道)選手のヘディングだったり、チャンスを作れていた。3失点目をしてから前掛かりになりすぎて4失点目をしてしまったけど、そこはどうしても点を取りにいかないといけない状況だったから仕方ないかなと思う。それでも同数はいたのに崩されてしまったし、ズルズル下がってしまって良いボールを出させてしまったのは問題。

RP:これで9月上旬のルヴァンカップに続いて天皇杯も姿を消すことになりました。
都築:粘り強かったとは思うけど、トーナメントで負けてしまったら何も残らない。勝たないと来年のACL出場が難しいという状況だったことを考えると、レッズのほうがモチベーションは高かったと思う。ただ、それでも負けてしまったので厳しい状況になった。出ている選手は頑張っていたけど、結果として勝てなかったのは残念。失点をするタイミングも悪かった。前半の立ち上がり、後半の立ち上がり。2失点目のPKは榎本(哲也)選手のひざが当たったんだろうけど、イエローカードも出ていないし、なおさら悔しいだろうと思う。崩されたのは失点したシーンだけだし、失点の仕方も悪かったけど、失点した時間帯も悪かった。

RP:1失点目と2失点目は開始から、3失点目は追いついた後、いずれも5分以内に失点してしまいました。
都築:特に痛かったのは3失点目だし、何とかして集中したかった。立ち上がりのズラタン選手が抜け出したチャンスが決まっていれば、とは思うし、レッズは逆に良い時間帯でゴールを取れなかった。全体として鹿島が勝負どころで強かった。これも勝負。いまのチームの状況を考えるとこうなる可能性があった試合だった。次はまたすぐ試合が来る。

RP:連戦が続いていますが、ジュビロ磐田戦から中2日で鹿島戦、また中2日でリーグ戦のサガン鳥栖戦です。
都築:鳥栖は天皇杯を戦っていないし、非常に厳しい状況ではあるけど、やるしかない。来年のACLのチャンスは厳しいけどないことはない。それもやるしかない。モチベーションがある、ないは関係なく、レッズとしてはリーグでACLの出場権を獲得するのは少なくともシーズンに入る時点では最低限の結果だったと思う。それを自分たちで厳しくしてしまっているけど、取り返せるのも自分たち。勝ち続けるしかないし、期待するという言い方もおかしいけどやってもらうしかない。

RP:天皇杯で勝っていれば、少し柔軟に考えられたかもしれませんが、またリーグで絶対に勝たなければならなくなり、さらに中3日でACL準決勝第1戦、アウェイでの上海上港戦があることを考えると、選手起用も難しいのではないでしょうか?
都築:難しいと思う。ただ、それは強いチームというか、結果を出しているチームの宿命だから。僕が選手だったころも連戦が好きというわけではなかったけど、逆に試合が続いている方がやりやすいこともある。ただ、それも勝っているとき、少なくとも負けていないときではあるんだけど。僕らのころも引き分けは多かったけど、負けてはいなかった。だから別の大会になっても同じ流れで戦えた。負けてしまうと特にトーナメントだと優勝がなくなるとか大会自体の結果が出てしまう。そういうことがマイナスに働いてしまうこともあるけど、あまり考えすぎずにやるしかない。リーグ戦、来季のACLに向けてもまだモチベーションはあると思う。まずは上海上港戦のことは考えずに鳥栖戦。やりにくい相手だと思うけど、ホームなので勝たないといけないし、しっかり戦ってほしい。


RP:ありがとうございました。


(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』菊地正典記者)

[記事リンク]2017年シーズン浦和レッズ試合情報まとめ
[記事リンク]2016年シーズン浦和レッズ試合情報まとめ
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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

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