このままペトロヴィッチ監督が去るということは避けないといけない(J1第13節・川崎F戦)
浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の菊地正典記者です。
RP:7月5日(水)に等々力競技場で行われた明治安田生命J1第13節延期試合、川崎フロンターレ戦は1-4で浦和レッズが敗れてしまいました。完敗でしたね。
都築:全部が裏目に出た。結果的に4失点とも真ん中を突かれた。前半はフォーメーションを変えた中で攻守ともに機能しなかった。それは4バックはやっていないから仕方ないし、なんで4バックに変えてしまったのかという気持ちがある。すべてが悪い方向に向いてしまった。4バックにして、ディフェンスラインだけじゃなくて中盤もめちゃめちゃに混乱していた。ボールの取りどころはどこなんだというところで、ズルズル下がったシーンがかなりあった。パスの出し手に対してプレッシャーが行けずに出されて、人数が足りているのにもかかわらず誰がどうやって付くのかが曖昧だった。それが失点につながった。
RP:失点シーンはいずれも簡単にやられてしまった印象です。
都築:1失点目は、相手が縦に入ったボールに関してはかなり質が高かったと思う。でもあそこであのターン1回で許してしまった。もう一つ言うと、ディフェンスの準備が全然できていない。フォーメーションとしての準備もそうだし、個人としての準備もそう。遠藤(航)選手もずっと棒立ちで、あのボールに対するアクションは一切なかった。それじゃあ、ああなる。良くて足を引っ掛けてPK。試合をとおして、そういうシーンが多かった。2失点目も4バックの間を突かれた。チャレンジ&カバーがまったくできていなかった。でもそれをやるためには中盤の選手が出し手に対してしっかりプレッシャーを掛けている前提じゃないとDFは守りにくい。そこも誰が行くか分からなかった。その混乱がすべてで、自分たちがどう攻めるのかも見いだせずに終わってしまったという試合だった。
RP:いつもの「3-4-2-1」ではなく「4-4-2」で臨みましたが…。
都築:4バックにしたからといってサイドが機能したかというと、右サイドはあったけど左サイドはなかなか難しかった。失点を少なくするために4バックにしたということ自体がレッズにとってはかなりリスクがあるんじゃないかと思った。今までのスタンスとしては「取られても取ればいい」というサッカーだった。その取られ方、失点が多かった試合も失点をして、ディフェンスのオーガナイズが崩れたところをさらに崩されたり、そういう大量失点の試合はあったけど、4バックで行くって決めてここまで機能しなかったのは初めてなんじゃないかと思う。4バックはどこかでやりましたよね?
RP:リーグ戦では15年2ndステージの清水戦、鹿島戦でやりました。
都築:その試合はどちらも勝っている。その時は失点が多くて4バックにしたんじゃなかったですよね。
RP:清水戦は槙野智章選手の負傷、鹿島戦は那須大亮選手の出場停止というアクシデントによるものでした。
都築:だから今回は本当にレアケースだったんじゃないかなって。チームとしてやらないといけないことは、まず失点を減らさないといけないということだったと思うので、その決断について不満があるわけではないけど、やると決めた以上は結果を出さないといけないのがこの世界。
ちょっとそこは厳しく言わざるをえない。遠藤選手が退場したからこういう結果になったという試合ではなかったし、4バックの間に良いボールが入ってきた時以外はそんなにピンチは多くなかった。相手もそれは分かっていたと思う。4バックになると真ん中の2人の間はかなりチャンスになるから、あのスペースに人が入ってくる。そして川崎Fは決定的なパスを出せる選手が何人もいるけど、1試合の中で同じような失点を繰り返したことは問題だし、厳しく言わざるをえない。
RP:これまでは形を変えるにしても「4-1-4-1」だったり「3-5-2」だったりしましたが、今回の「4-4-2」は厳しかったですね。
都築:厳しいことを言えばまったく機能しなかった。3バックと4バックは一長一短で良し悪しがある。守備で全く機能しなかったけど、レッズのスタイルを貫くということで言えば、4バックにするとディフェンスに人数を掛ける場面が増える中で攻めづらいというか、ボールをポゼッションしづらくなる。それが守備に影響したという見方もある。4バックの方がシンプルはシンプル。3人がいて1人残ればいいんだから。でも3バックだと3人プラス、ボランチが絡んでくることも多いから、やっぱり一長一短。いずれにせよ今回に関しては機能しなかった。
RP:攻撃のお話も少し出ましたが、セットプレーで1点は奪ったものの、流れの中では厳しい展開が続きました。
都築:攻撃では、中盤でボールを奪ってショートカウンターからのチャンスはいくつかあったけど、流れの中で得点が入る気配はなかった。ボール支配率もそこまで多くはなかったと思う。今はいろんな問題があると思う。今は内容を含めて結果も辛抱の時期。ただ、絶対にひっくり返せない差ではない。
RP:残り17試合で勝ち点10差は逆転不可能な数字ではありません。
都築:応援する立場からすると、今の状態は諦めてしまったように見える。少なくともサポーターにはそういう姿は見せちゃいけない。戦う気持ちを前面に出してほしい。「戦う気持ち」って言葉にするほど簡単なことではないんだけど。それは結果であり、ファイトすることであったり、っていうこと。結局のところ、一番は結果。
RP:試合後にサポーターからブーイングがあったり、サポーターがペトロヴィッチ監督と話すことを要求したのも、結果はもちろんその「戦う気持ち」が見えないのも大きいのかもしれません。
都築:(サポーターに呼び出されるのは)僕も現役の頃にあったけど、本来ならば選手は行くなっていうのがあったりする。僕は「行く」って言っていたけど(笑)。だけど監督が行くっていうのは、チームは止めているけど監督が判断したんだと思う。不満があるからああなっているわけで、その不満を解消させるのは結果を出すことが一番。難しいですね。うまくいかない時期がここまで続くことはそんなにない。
RP:2014年のシーズン終盤の勝てなかった時期や昨年の3連敗と比べても苦しい状況かもしれません。
都築:監督は監督なりに腹をくくって、次で勝って連勝できなければ辞めると言っているんだから、僕らはそう見るしかない。
RP:次は相性としては良いアルビレックス新潟戦です。
都築:監督がもし本当にあの言葉を言っていたのであれば、相当、腹をくくっていると思う。それが良い方に出るか、悪い方に出るか。少なくともペトロヴィッチ監督は選手の心はつかんでいる監督だと思うので、辞めさせたくないと思う選手は一生懸命やると思う。ただ難しいのは、結果にかかわらず毎試合一生懸命やっている。だからチームとしてまとまる、良かった時のことをしっかりやる。それができれば自ずと結果はついてくるだろうし、それを含めて次の試合は大事になる。相性は良いだろうけど、それで勝てるというものではない。チームとしてどう機能するか。このままペトロヴィッチ監督が去るということは避けないといけないし、勝ってほしい。良い監督かどうかは僕も部外者だし、一緒にサッカーをやったわけじゃないから分からないけど、外から見ていて良い監督なんだろうなと思う。人間性は素晴らしいし、結果を出してほしい。
RP:ありがとうございました。
(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』菊地正典記者)
[記事リンク]2017年シーズン浦和レッズ試合情報まとめ
[記事リンク]2016年シーズン浦和レッズ試合情報まとめ
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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。