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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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攻めの部分に関してはパーフェクト(ACLラウンド16第2戦・済州戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の菊地正典記者です。


RP:5月31日(水)に埼玉スタジアム2◯◯2で行われたAFCチャンピオンズリーグラウンド16第2戦・済州ユナイテッド戦は、90分で2−0で2戦合計2−2、延長戦の末に浦和レッズが3−2で勝利しました。
都築:内容は最高だった。カウンターは何本かはあったけど、ほとんど受けない戦い方だった。何本かはあったけど、要因としては、まずミスからのカウンターがほとんどなかった。相手が引いたというのもあったけど、1戦目みたいにビルドアップをしていく中でのミスがなく、ある程度、陣形が整った状態だったのでピンチが少なかった。全体の守備としては1対1でも強く行けていたし、ピンチらしいピンチがほとんどなかった。不用意なカウンターを受けなかったし、受ける時も相手のペナルティーエリアに入って崩しの中でカウンターを受けたけど、その時はある程度、人数がそろっていた。何本かは数的同数の時があったので、そこは今後の課題だと思うけど、1戦目よりもバランスは良かった。相手がかなり引いたから、そこはレッズにとって楽だったと思う。
 
RP:失点もしてはいけない中、攻撃でも最低で2点を奪わないといけない状況でした。
都築:攻めの部分に関してはパーフェクトというか、取らないといけない点数を取ったのが全て。崩しも非常にうまく行った。サイドを使った時もそうだし、中からの崩しも非常に良かった。2人目、3人目の動きがあった。それがレッズの本来の攻撃の形ながら最近はなかなか出せていなかったけど、今回はしっかり出せた。サイドは関根(貴大)選手が左に入っていたけど、良い形でボールを受けてやりきったところも多かったし、攻撃は全体的に良かった。
 
RP:
前半のうちに2点を奪うことができました。まずは柏木陽介選手のセットプレーから興梠慎三選手がゴールしました。
都築:興梠選手がうまく合わせた。セットプレーで取れたのは大きかった。柏木選手からは試合を通して良いボールが上がっていたから、あそこで競り勝てたのは大きかった。相手が甘かったのかなとも思うけど、興梠選手はかなり飛んでいたし、非常に良いゴールというか非常に良い形で取れた。時間帯も含めて。失点しちゃダメだということはプレッシャーだったと思うけど、あの1点でかなり盛り上がったと思う。得点はあのシーンだったけど、それまでにも得点してもおかしくないシーンがあった。それはかなり評価できると思う。
 
RP:2点目は素晴らしい崩しでした。
都築:2点目は興梠選手や李選手の動き出し、左サイドが余っていたから完全にオフサイドではなかったし、レッズらしい崩しだった。サイドからの攻撃での決定的なチャンスを決められていればもっと楽だったと思うけど、得点はいつ入ってもおかしくない状態だった。済州としてはあの角度から決められたのは悔しいと思う。試合を通してレッズがボールを支配していた。僕らもACL(2007年準決勝)で延長になったけど、延長に入ってからは得点されると終わってしまうから守備から入るかなと思った。でも、試合を通して同じような流れを続けた。球離れが早くて、相手が特に中盤で取りに来なかったというのはあるけど、レッズとしては体力をそこまで消耗しなかったのかなと思う。
 
RP:2点を奪って同点に追いつき、延長戦で決勝ゴールが生まれました。
都築:最後の森脇(良太)選手の得点は高木(俊幸)選手のクロスでもう決まったかなと思う。合わせるだけだった。もちろん森脇選手の動き出しもあったけど、非常に良いボールだった。かなりプレッシャーはあったと思うけど、必要な得点を奪い、無失点で抑えることができた。カウンターに対しての守り方もある程度はできたと思う。ただ、相手のプレスがなかった。中盤で取ればチャンスになるということは分かっていたと思うけど、無理はしなかった。その分、レッズとしては多少、楽だったと思う。
 
RP:素晴らしい逆転劇でしたね。
都築:1戦目で自分たちが苦しい状況を作ってしまったというのは一つだし、これからトーナメントを戦っていく中でこういう状況はあると思うので、今回は良い経験になったと思う。人にも強かったし、負けていなかった。途中から大きい選手が2人(チン・ソンウク、フレデリック・メンディ)が入ってきてボールを落とされたりはしていたけど、それでもフリーでやらせることはなかったし、延長後半の得点する前のメンディ選手が頭で合わせたシーンぐらいかな、決定的なピンチは。とにかく求められる結果を出せたことは大きい。守備からという意識という意味では難しい。失点してはいけないという試合でどうやって守るのかと思っていたけど、結局は自分たちがポゼッションを取れれば相手の攻撃は受けないということに尽きるんだと思う、レッズのサッカーは。自分たちがミスをしなければ失点もしない。特に中盤。中盤でのミスはかなり致命的になるから、それがなかったというのは集中してやれていたということだと思う。
 
RP:
結果論でもありますが、第1戦から形を戻したことも良い影響があったのではないでしょうか?
都築:メンバーもバランスを取る時は今回の試合の形が良いと思う。李選手と興梠選手があの関係を保てる時は良い試合をする。もちろんラファエル・シルバがダメという話ではないけど、チームとしてやる中でどうかなというところ。贅沢な悩みなんだけど、武藤選手も守備も含めて本当によく頑張っている。全員が良いコンディションというか良いモチベーションで試合を通してやったと思う。柏木選手もほとんどミスをしなかった。森脇選手が嘘泣きしていたけど(笑)。涙は出ていなかった(笑)。でも最後に彼が点を取ったというのは良かったと思う。正直、そんなに強いチームじゃなかったと思う(笑)。レッズとはかなり差があるチームだったと思う。でも苦しい状況になったけど勝ち上がったというのは素晴らしかった。ここからだと思う。
 
RP:あとは東地区だと川崎フロンターレ、広州恒大、上海上港と強敵ばかりです。
都築:どれにせよ強いチームと当たることになる。川崎Fとは当たらない方がいいかなと思う。お互いに知り尽くしているだけにやりづらいから。僕らが優勝した時も川崎が決勝トーナメントまで上がってきたけど、今回も上がってくるとは思った。僕らの時(2008年)もG大阪とやったけど、日本同士はやりづらい。でも関係ないといえば関係ないので、それよりもまずは柏戦。かなりのポイントになる試合だと思う。そこで結果を出せれば乗っていけると思う。
 
RP:体力的にもそうですし、テンションも一度上げきってしまった連戦での次の試合は難しいのではないでしょうか。
都築:別物と言えば別物なので切り替えると思うけど、まずは体力を回復することが一番。僕はGKだったのであまり経験していないけど、フィールドプレイヤーはかなり大変だと思う。そこはチームとしてコントロールするんだろうけど、そこで柏というのは厄介。
 
RP:
リーグ戦7連勝で暫定首位のチームです。
都築:今で言えば一番の強敵だと思う。そこにどうやって勝つか。
 
RP:
ありがとうございました。


(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』菊地正典記者)

[記事リンク]2017年シーズン浦和レッズ試合情報まとめ
[記事リンク]2016年シーズン浦和レッズ試合情報まとめ
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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

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