GKとしては切っておかないといけないコースだった(J1第9節・大宮戦)
浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の菊地正典記者です。
RP:4月30日(日)にNACK5スタジアム大宮で行われた大宮アルディージャ戦は0−1で浦和レッズが敗れてしまいました。首位と最下位、そしてダービーという対戦でまさかの敗戦でした。
都築:一番ダメだというか、恐れていた結果だった。アルディージャがああいうサッカーをしてくるって分かっていたところを、中からこじ開けようという感じが続いていた感じがする。なので結果的にチャンスもそんなに多くなかったし、サイドを使っていた時の方がチャンスになっていた。特に後半だけど、駒井(善成)選手が入って右サイドを崩していく中でのラファエルシルバの1本とか、左サイドで関根(貴大)選手が切り返して上げたクロスがチャンスになったとか、そういうことはあったけど、決定的なチャンスはそんなに多くなかった。
RP:大宮の守備をなかなか崩し切れませんでした。
都築:ミドルシュートもそんなにない。ミドルシュートに関しては相手が真ん中を固めていたというのもあるので難しかったとは思うけど、あまりない。裏への抜け出しの意識も少なかった。そういう意味では攻撃としてあまり機能していなかった。球際も結構負けていたし、前半に西川(周作)選手が左足を残して防いだシーンは典型的だった。すごくバランスが悪い守備で、プレッシャーに2人ぐらいが行って真ん中が1人空いてしまって、遠藤(航)選手が球際で負けてかわされてGKとの1対1。全然レッズらしいサッカーではなかった。
RP:結果だけではなく、そういう意味でも残念でしたね。
都築:多分、選手たちが一番分かっているし、悔しいと思う。ポゼッションはできると分かっていた試合だったと思うので、ゴールに向かっていくようなポゼッションをしないとただポゼッション率を高めるだけのサッカーになってしまうし、レッズはプレッシャーがあるなかでもポゼッションできるチームだと思うので、だからこそポゼッションが高ければいいわけではないという試合を見せられるチームだと思う。だけど今回はまったくそれがなかった。
RP:レッズがそういうサッカーを見せられなかった原因はどこにあったのでしょうか?
都築:まずアルディージャのモチベーションが何倍も上だったと思う。1位であり良いサッカーをして勝ってきているレッズと、全然良いサッカーができずに1回も勝っていなかったアルディージャ。勝てば流れが変わるだろうという希望もあったアルディージャ。それを考えると、結果でしか言えないけど、モチベーションの差は歴然だったのかなと。レッズも試合前は選手たちの意識としてはモチベーションが高かったんだろうとは思う。でもやってみると、瀬川(祐輔)選手とか金澤(慎)選手とか、そこまで出場機会が多くなかった選手がすごく活躍した。それって何が良かったのかと言うと、技術的に素晴らしいとかじゃなくて、運動量を多くして、球際で負けない。その意識であれだけ活躍できるということ。それはダービーだからこそ出せた相手のモチベーションだったと思うし、今回は内容について言うよりもそれがすべてだったと思う。
RP:先に失点してしまったことも大きな痛手でした。
都築:失点シーンは残っていた江坂(任)選手を捕まえ切れていなかった。ミスからとはいえ、あそこは捕まえないといけない。それか攻撃に出ているんだから、ラインを上げるか。あそこで簡単にパスを出されて、最後に阿部(勇樹)選手も寄せがかなり甘かったと思う。最後の段階で足を出しただけだった。西川選手もニアサイドに決められたのは悔しいと思う。GKとしては切っておかないといけないコースだった。あの展開は全員が予想しきれていなかったんだと思う。それにしても簡単に入れさせすぎた。最後のああいう場面で体を張るとか、そういうことがなかった。
RP:浦和側から見て、特に問題があったと思うところはどこですか?
都築:やっぱりサイドを使えていなかったというか、サイドからの攻撃が機能していなかったのが大きいと思う。右サイドは森脇(良太)選手がかなり前に行っていたし、森脇選手と槙野(智章)選手がサイドバックみたいになっていた。宇賀神(友弥)選手がこれまで良い活躍をしていたので、今回の試合で機能しなかったのは残念だった。レッズは相手のやり方とか分かっていて負けたのは悔しいと思うけど、首位のチームが負ける時って意外とこういう状況の時が多い。ただ、まだ首位にいることは現実なので、そこまでヘコむことはない。次は絶対負けられないという意味ではレッズのモチベーションは上がると思うし、手も足も出なくて負けたことはないことはJリーグではほとんどないし、効果的なボール回しができて、効果的な場所を突いて点を取るサッカーを続けてほしい。結果は残念だったけど。
RP:チーム力としては負ける相手ではなかったですよね。
都築:アルディージャのモチベーションがかなり高かった。僕の時もあったから。だから何も言えないけど(苦笑)、優勝するためには絶対に勝たないといけないという中での試合。昔もあったから今もあっていいということはないけど、結果的にこうなってしまった以上は切り替えないといけない。でも本当に、現時点で首位にいるということは忘れちゃいけないし、そんなに慌てる必要はない。鹿島やG大阪が上がってきているけど、ずば抜けて上がってきているチームはない。鹿島は次は怖いけど、逆にやりやすいんじゃないかとも思う。そこまで前向きに考えてやってもらえればいいのかなと思う。今回は内容というよりもダービーらしいコメントしかできない(笑)。今回は内容に関してはあってないようなものだったと思う。すべてが気持ちだけの試合、みたいな。アルディージャは優勝したような喜びようだったし。アルディージャも優勝したみたいになってこれでモチベーションがなくならないでほしいけど、レッズとしては切り替え。強いチームはそういう切り替えが大事になる。
RP:ダービーの後に連戦でライバルと言える鹿島との対戦です。
都築:鹿島は磐田に負けたり、取りこぼしたこともあるけど、総合的に見てかなり良いサッカーをしていると思うし、良いメンバーがそろっていると思う。特に守備が堅い。人に強い選手がいるので、すごくやりづらいとは思うけど、相手も同じ条件。ACLをやっていて、次の試合の感覚も同じ。運動量が多い試合というよりも強い者同士の戦い、試合が分かっている者同士の戦いになると思うので楽しみだけど、選手としてはこの何試合かは踏ん張りところだと思う。是非勝ってもらいたい。
RP:ここで勝つか負けるかは今後を考えてもかなり大きい意味を持つ気がします。
都築:鹿島とは去年のこともあるし、逆にレッズの方がモチベーションが高いんじゃないかと思う。期待して試合を見たい。
RP:ありがとうございました。
(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』菊地正典記者)
[記事リンク]2017年シーズン浦和レッズ試合情報まとめ
[記事リンク]2016年シーズン浦和レッズ試合情報まとめ
・・・・・・
会員登録はこちら
都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。