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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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ブラジル人選手を止めることに比重を置きすぎたACL・上海上港戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の菊地正典記者です。


RP:3月15日(水)に上海体育場で行われたAFCチャンピオンズリーグ(ACL)、上海上港戦は2−3で浦和レッズが敗れてしまいました。
都築:残念な試合だった。ちょっと勢いに飲まれたかなと。相手には4枚抑えないといけないところがあって、そこにかなり力を使わされたかなという感じがする。そこから自分たちのサッカーをしようと思っても難しかったのかなと思った。ピッチもかなり悪かったのかな?

RP:前日に選手たちが「ピッチがボコボコ。水を撒いてくれたらまだいいけど」と話していましたが、水を撒きすぎて滑るぐらいになっていましたね。
都築:それも含めても前半は特に何もできなかった。プラス、やらないといけないことができなかったのもある。抑えるならしっかり抑える。かなり能力は高いと思う。

RP:ブラジル人3人は今までにないぐらいのレベルでしたし、柏木選手は「広州恒大より上」と話していました。
都築:中盤で作って、という感じではない。フッキが左に張っていて、ボールを持ったらそこだけ、みたいな(笑)。前半に関してはブラジル人3人プラス中国人選手が何人か絡んで左サイドで良い攻撃ができていた。守るにしても特にエウケソンとオスカルとフッキがかなりポイントだったと思う。個人でやられる場面もあったし、相手にミドルシュートも多かった。そんななか、アンラッキーと言えばアンラッキーだけど、失点を食らってしまって、そこから落ち着かせることができなかった。失点した後、攻めるのか守るのか、つなぐのか蹴るのか、はっきりしなかった。相手も西川(周作)選手にボールが入った時にプレッシャーに来ていたから、戦う姿勢というかホームだということも含めて相手の方が気持ちは入っていたのかなと思う。

RP:一方のレッズは…。
都築:受け身だった。勝負を分けたのは2失点目だったと思う。あそこは失点しちゃいけない時間帯だった。つなぎに行ったと思うけど…。

RP:西川選手は「宇賀神選手が見えたのでつなげると思った」と話していました。
都築:彼はあの距離でもつなごうとするし、つなげるから。でも取られてしまったのは確かだし、戻っているなかで飛びつくのは難しいと思うけど、そこも含めて点の取られ方はすべて良くなかった。

RP:3点目はフッキ選手の個人技でした。
都築:失点シーン以外にも危ないシーンは結構あった。全体的なペースで言うと、相手の方が良かった。ラファエルシルバ選手が入ってPKで1点を返した後に相手のペースが落ちたのもあって、レッズがある程度ボールを回せるようになったけど、カウンターがかなり怖かったんだと思う。フッキも守備はするし、前線に完全に残っているサッカーではないし、ビラス・ボアス監督が組織としてしっかりやらせている。運動量も相手の方が多かったと思う。ただ、そうは言っても絶対に勝てない相手ではなかった。次はホームで絶対に勝たないといけない試合になると思う。攻撃もそこまで効果的なものがなかった。サイドを使うのか中盤でいくのか、ラファエルシルバ選手が抜けるシーンもほとんどなかった。

RP:なかなかレッズらしい攻撃が見られませんでした。
都築:レッズとしてはやりたいサッカーがまったくできなかったのと、相手のブラジル人選手を止めることに比重を置きすぎたのかなと。そこまで意識はしていなかったと思う。もちろん多少の意識はあっただろうけど、あそこまでやられるとは思っていなかったと思う。でも能力としてあの3人、ないしは(オディル・アフメドフを含めた)4人をマークせざるをえなくなった。1人で行けないから2人、3人で行ったところの空いたスペースを突かれたり。勝てない相手じゃないんだけどな、という感じはするけど、勢いでやられた。そうは言っても最終的に意味があるかどうかは分からないけど、2点取ったことで示せた部分はあったと思う。ラファエルシルバ選手がPKを取ったシーンはある程度、攻撃の形ができたと思うし、後半の最後の方も何回か良い攻撃があった。ただ、全体的に見て完敗だったのかなという内容だった。レッズはボールポゼッションで支配して、つないでつないで相手のDFが来たところをかわしながら攻めていく形にできればもっと思うような形ができていたと思うけど、ビルドアップしてつないで相手を崩すというサッカーはなかなかできなかった。

RP:後半途中まではほとんど前線にボールをつけられず…。
都築:ポイントがないのかな? ズラタン選手が入ってポストプレーして周りがサポートして展開していくサッカーではなかったし、今までのレッズの形じゃないなって感じがした。サイドを使っていくのかどうかというところも含めて。相手はやっぱりうまい。オスカルはボールを取られない。あそこで無理して取りにいくのか、ということもあると思うし、フッキにボールが入って1人だとなかなか勝てないところを何人か人数を掛けていっていたから、かわされてしまうと3点目みたいになってしまう。全員がボールに食いついちゃうと…。原則は1人がボールに行ったら1人はカバーだから、1対1で勝てるようにしないと自由にやられる。ただ、負けてないシーンもあったから、次はホームで勝てればいいと思うけど、今回に関しては完敗だった。本当にビルドアップができなかった。西川選手からも全然できなかった。相手があそこまでプレッシャーに来るとは思っていなかったと思うけど、相手の運動量は多かったと思う。外国籍の選手もサボらない。

RP:攻撃だけで守備はおまかせ、という感じではまったくなかったですね。
都築:やっぱり意識が高いんだと思う。代表やヨーロッパでやっている選手は。サボったら使ってもらえないから。アジアだからサボっていいという意識はないということも含めて、ブラジル人選手にやられたという感じがする。中盤のアフメドフ選手も良い選手だった。目立たないけどかなりポイントになっていた。

RP:ACLでは次も上海上港と戦うことになります。
都築:次の試合がポイントになると思う。ウェスタン・シドニーも勝ったから、これで2連勝してレッズが負けてしまうと勝ち点が並んでしまう。そこも含めて勝負どころだと思うから、やるサッカーというかいつものサッカーに戻るようにしないと、ポゼッションが取れないとやっぱりキツいから、そこはポイントになる。

RP:リーグはG大阪戦、難しい相手との対戦が続きます
都築:厳しい戦い、今は耐え時という気がする。次もメンバーが代わってくると思うけど、レッズらしいサッカーをやれれば…やれれば、じゃなくて、やらないといけないんだけど。しっかりボールをつなげることができれば相手も怖くない。それは上海上港が相手でも同じこと。ボールをつないでいればフッキとかも怖くない。

RP:ありがとうございました。

(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』菊地正典記者)

[記事リンク]2017年シーズン浦和レッズ試合情報まとめ
[記事リンク]2016年シーズン浦和レッズ試合情報まとめ
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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

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