開始6分、浦和陣地に入ったところでボールを受けたショルツは、右のガラ空きのスペースに迷わずボールを持ち運び、右サイドバックの長友佑都にボールを預けると、ボックス内に鋭く侵入。その動きで、2人を引きつれた。
直接、得点に関与していないが、浦和のラインを下げるには十分なドリブルでのボールの持ち運び、そして、攻撃の選択肢を増やすパス&ゴー。古巣相手に攻撃面でショルツらしさを出してきた。
試合後、ショルツは「ああいったプレーが、東京が求めていたことだと思う」と振り返る。ショルツが最終ラインから攻撃に参加したことで、長友は、得意の高い位置で長沼洋一との1対1の勝負に集中することが出来たし、攻撃にかかる人数も増やすことが出来た。ショルツを含めた補強によって、現有戦力の特長が出やすい環境が整いつつあると言える。
ショルツの“ボールを運ぶ”という特長は、日本で初めてのトレーニングキャンプを経験した2022年には「日本では、ボールを奪った後も1メートルの距離に相手FWがいるから、少ないタッチで球離れを早くすることを意識している」と話していた。J1リーグへの順応だ。
浦和レッズの中では、ショルツのタスクを引き受けられる選手がいるなど、むやみに出すものではなかったからこそ、まず、ボランチとの距離をコンパクトにして守備の強さを前面に打ち出し、その中でビルドアップに手詰まり感が生まれた時には、自らのドリブルで大きな風穴を開けてきた。
FC東京におけるショルツの役割には、守備はもちろんのこと、攻撃の初手になることも求められるのだ。1つのクリアボールを見ても、それを感じる。よく知るショルツのようで違う、FC東京のショルツを観た印象が残る。浦和は、そのショルツ対策が不十分であった。
また、今回の試合では、ローディフェンスというテーマがあったが、名ばかりで、何を目的にしたローディフェンスであるか、どこで奪い返すかという狙いが見えなかった。
GK西川周作の足もとの技術を考えれば、浦和には、11人のフィールドプレーヤーがいると言える。他チームよりも優位に立てるはずが、まず、守備の準備の部分で、絶対に侵入を許さないぞ、ここは使わせないぞ、という場所が見えなかった。そしてGKや最終ラインからのロングキックもクリアボールも、意味をもったボールにならず、セカンドボールを拾われ、ピンチに繋がった。
相手は、浦和の守備によって選択肢が削られ、攻撃に手こずるのではなく、容易に浦和のポジションの間、間に入ってパスを展開していった。つまり、ローディフェンス自体の、そしてローディフェンスからのシナリオがないのも一緒だ。
さらにクラブワールドカップを通じて感じたことだが、スローインに時間がかかり過ぎる。渡邊凌磨が試合後に「たとえば、1本、前に行けて、相手陣地でスローインになった時をどれだけ大事に出来るか」と話したが、陣地取りと考えれば、スローインをキッカケに大きなチャンスに繋げることが出来るはずだ。最近も話題になった、キックオフボールを相手陣地に思いきり蹴りこんで、スローインになったところで一気に圧力をかける意味合いと同じだ。
湘南ベルマーレ戦では、策士であってもらいたい。ホーム埼スタに戻る。埼スタでは、サポーターを落胆させてはならない。
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