レッズプレス!!では、ひと足先に山岸範宏さんに同試合のハイライトを聞いた。

「リーグ優勝の条件としては浦和レッズが優勢だったが、失うものは何もないガンバ大阪相手に、ギドはミーティングで『勝ちに行くんだ!』と言った。選手からもそういう声は挙がっていたが、勝ちに行くと。決して慢心ではなく、負けて優勝ではなく、勝って優勝を決めようという強い想いでチームは1つにまとまり、試合に入った」と振り返る。

ただ、そう簡単な作業ではなかった。この日、埼スタにつめかけた観衆は、62,241人。両サポーターの緩衝帯があるか無いか分からないほど、熱気に包まれていた。

山岸さんはピッチに立ち、チームメートの違いをすぐに感じることになる。「ゲームの入りは硬いな……」。リーグ初制覇がかかる試合だ。前年度はわずかな差で手が届かなかった優勝。始動日から「優勝のため」に練習し、「優勝のため」に試合で身体を張って戦い続けた1年間の締めくくり。山岸さんは「おそらく自分もそうだろうな……」と思いながら、ゴールマウスを守っていたという。



現在、JFAアカデミー福島でGKコーチを務める山岸さんは、プロを目指す子供たちに、この試合の話をすることがあるという。「この人数の前で、この熱気のなかで、普段通りのプレーができないといけないのだよ。プロになるというのは、そういうことだよ」と話し、プロとは何かを伝えているそうだ。

この試合は、GKとしては先制点を奪われた。だが、6分後のポンテによる同点弾により、チーム全体がイケると感じ、44分のワシントンのゴールによって逆転すると、優勝を確信した。というのも、このシーズンはどんなに劣勢なゲームでも、1点奪うと浦和レッズの試合に変えてきた過去の体験があった。その積み重ねによって、チームは精神面で強くなっていたのだ。

ただ、やはりG大阪も黙っていない。54分に遠藤保仁がピッチに立つと、一気にG大阪が主導権を握ったことを山岸さんは覚えている。この試合が、結果を知っている今もなお、興奮するのは、G大阪の強さを十二分に感じながらの、認めながらの試合展開だったからだろう。

この嫌なムードを払拭したのもゴールだ。59分、ワシントンがこの日2ゴール目を決め、3ー1とし、勝利を引き寄せた。エースと言われたワシントン、チームを優勝へと導く仕事を果たした。

山岸さんは振り返る。「優勝という目標から1年間、決してブレることがなかった。それはギド・ブッフバルト監督のマネジメント能力によるものだと思うのだが、ピッチに立つ選手だけがそう思うのではなく、全員が同じ方向を向いていたと感じるシーズンだった。ギドの手腕、(土田)尚史さんの存在、そして選手のなかでは岡野(雅行)さんの存在が大きかった。岡野さんは、この試合でもそうだが、途中出場が多かった。だけど、常に練習から一生懸命だった。『(自分がどんな状況でも)いいからやるんだ!』と言って。自分たち自身が強いチームだったと感じる」と話した。

あの日の埼スタの空気感を、1人でも多くの人に味わって頂きたい。あの日、ピッチに立つ選手たちは幸せそうだった。それはきっと、対戦相手のG大阪のチームの皆さんも。素晴らしい一戦だった。同じ試合を2度楽しめる土曜日がやってきた。


(有賀久子)
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こぼれ話

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土曜日は、あの名試合を〜山岸範宏さんが今、教え子たちにも伝える試合の熱気

「こぼれ話」は、選手やスタッフのエピソードを紹介するコーナーです


あす4月25日(土)、あの試合の興奮、喜び、感動、達成感によって、浦和レッズから離れた心を少し埋めることが出来るだろうか。

17時からNHK BS1にて『あの試合をもう一度!スポーツ名勝負▽Jリーグ名作選「浦和レッズ」対「ガンバ大阪」』という企画がある。2006シーズンの、Jリーグ ディビジョン1第34節 浦和レッズ対ガンバ大阪(埼玉スタジアム2〇〇2)が放送される。また、夜7時からは同試合がDAZNで配信される。こちらは鈴木啓太さんの解説付きだ。

この夜の部では、Jリーグ企画も興味深い。

Jリーグ公式YouTubeチャンネルで配信中の、Jリーグ副理事長の原博実さんによる情報番組『JリーグTV』の緊急企画が立ち上がった。DAZNで配信される同試合を、原さんが自宅で観戦するという。

さらにゲストがすごい!浦和レッズから山岸範宏さん、坪井慶介さん、田中達也選手の3人がそれぞれの家からゲスト出演することが決まった。ガンバ大阪側も加地亮さん、播戸竜二さん、橋本英郎選手、家長昭博選手とチーム枠を超えての出演だ。



レッズプレス!!では、ひと足先に山岸範宏さんに同試合のハイライトを聞いた。

「リーグ優勝の条件としては浦和レッズが優勢だったが、失うものは何もないガンバ大阪相手に、ギドはミーティングで『勝ちに行くんだ!』と言った。選手からもそういう声は挙がっていたが、勝ちに行くと。決して慢心ではなく、負けて優勝ではなく、勝って優勝を決めようという強い想いでチームは1つにまとまり、試合に入った」と振り返る。

ただ、そう簡単な作業ではなかった。この日、埼スタにつめかけた観衆は、62,241人。両サポーターの緩衝帯があるか無いか分からないほど、熱気に包まれていた。

山岸さんはピッチに立ち、チームメートの違いをすぐに感じることになる。「ゲームの入りは硬いな……」。リーグ初制覇がかかる試合だ。前年度はわずかな差で手が届かなかった優勝。始動日から「優勝のため」に練習し、「優勝のため」に試合で身体を張って戦い続けた1年間の締めくくり。山岸さんは「おそらく自分もそうだろうな……」と思いながら、ゴールマウスを守っていたという。



現在、JFAアカデミー福島でGKコーチを務める山岸さんは、プロを目指す子供たちに、この試合の話をすることがあるという。「この人数の前で、この熱気のなかで、普段通りのプレーができないといけないのだよ。プロになるというのは、そういうことだよ」と話し、プロとは何かを伝えているそうだ。

この試合は、GKとしては先制点を奪われた。だが、6分後のポンテによる同点弾により、チーム全体がイケると感じ、44分のワシントンのゴールによって逆転すると、優勝を確信した。というのも、このシーズンはどんなに劣勢なゲームでも、1点奪うと浦和レッズの試合に変えてきた過去の体験があった。その積み重ねによって、チームは精神面で強くなっていたのだ。

ただ、やはりG大阪も黙っていない。54分に遠藤保仁がピッチに立つと、一気にG大阪が主導権を握ったことを山岸さんは覚えている。この試合が、結果を知っている今もなお、興奮するのは、G大阪の強さを十二分に感じながらの、認めながらの試合展開だったからだろう。

この嫌なムードを払拭したのもゴールだ。59分、ワシントンがこの日2ゴール目を決め、3ー1とし、勝利を引き寄せた。エースと言われたワシントン、チームを優勝へと導く仕事を果たした。

山岸さんは振り返る。「優勝という目標から1年間、決してブレることがなかった。それはギド・ブッフバルト監督のマネジメント能力によるものだと思うのだが、ピッチに立つ選手だけがそう思うのではなく、全員が同じ方向を向いていたと感じるシーズンだった。ギドの手腕、(土田)尚史さんの存在、そして選手のなかでは岡野(雅行)さんの存在が大きかった。岡野さんは、この試合でもそうだが、途中出場が多かった。だけど、常に練習から一生懸命だった。『(自分がどんな状況でも)いいからやるんだ!』と言って。自分たち自身が強いチームだったと感じる」と話した。

あの日の埼スタの空気感を、1人でも多くの人に味わって頂きたい。あの日、ピッチに立つ選手たちは幸せそうだった。それはきっと、対戦相手のG大阪のチームの皆さんも。素晴らしい一戦だった。同じ試合を2度楽しめる土曜日がやってきた。


(有賀久子)
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