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[REDSインタビュー]「より、かっこよく」。安藤梢の原点、そして猶本光との関係

「REDSインタビュー」は、トップチームやレディース選手、監督、スタッフ、関係者などを深堀りし、その言葉を掲載するコーナーだ。
今回は、三菱重工浦和レッズレディースで活躍するMF安藤梢が登場。
今季はセンターバックで起用などプレーの幅を見せる安藤に、チームの現状について、師弟関係にあるMF猶本光について、そして女子サッカーに今後、求められるモノについて、オンラインで聞いた。


RP:三菱重工浦和レッズレディースは10勝1敗(4月2日時点)で首位に立っています。昨季は3連敗を経験しましたが、今季はここまで連敗もなければ、引き分けもありません。細かく見ますと、引き分けの試合を勝ちにしているゲームが3試合あります。
こうした勝負強さの要因を、安藤選手はどう捉えていますか?
安藤:昨季、優勝できなかったことの要因として、取りこぼし、勝ち切れない試合がありました。チームとして、悔しい思いをしました。取りこぼすと優勝できない。そのことを選手が意識しています。反省を踏まえ皇后杯で優勝しましたが、負けたら終わりの試合を勝って優勝できたことが、いまにつながっていると感じます。

RP:同じ質問を柴田華絵選手にしました。柴田選手は、バランスの良さを挙げていました。つまり、昨年にくらべ、勝ちにいく、点を取りに行く意識が強くなった一方、前に行きすぎると後ろが疎かになる。そうならないように、お互いに手綱をひきあっていると表現をしました。そうした試合の流れを共有できるようになったことも要因のひとつではないでしょうか。
安藤:昨季、優勝できなかったのは、前から守備をしたいけれど、できない状況、押し込まれる時間帯がどうしても出てしまう。「こうしたら、こうしよう」と、意見のぶつけあいをしながら、みんなで話しあいました。いままでの敗戦から学べたことがいま、ピッチのなかや、ハーフタイムに選手同士で話し合いができています。楠瀬監督から戦術などの指示は出ますが、細かいところは試合中にすり合わせができることが、いまのチームの良さです。楠瀬監督は、耐える時間にどうするか。そうした守備の整理を取り入れてくれたことがプラスになっています。

RP:いま、チームの中心といえば、猶本光選手です。以前にくらべ、うまい選手から怖い選手へ、軸から核になっていると思います。これはJリーグでよくあることですが、良いプレーを見せ、すぐに海外移籍して、1、2年後、いつの間にか、戻っている。でも、プレーは、移籍前とそんなに変わらない印象を抱くケースが多くあります。しかし、猶本選手は戻ってきてから、先ほど挙げた「うまい選手」から「怖い選手」に成長したと思います。安藤選手から見て、猶本選手の変化、成長を、どうご覧になっていますか。
安藤:私が見ていても、たくましくなってきました。彼女自身も成長していて、プレーも、メンタルも、幅広くなってきました。自分の成長だけでなく、みんなを引っ張る、リーダーシップをとって、みんなを巻き込んで成長できると、横で見ていて、たくましく思えます。高い意識で上を目指しているので、自然と引っ張られていく。一緒にいて助かっています。あと、チーム全体を考えて、どう進むべきかを考えてくれています。試合中も、「こうしよう」とリーダーシップをもって意見をぶつけるなか、どうしても言いにくいこと、厳しい言葉も出ます。やはり、仲の良いだけのチームでは強くなれませんし、勝てません。そのなかで光(猶本)は厳しいことを伝え…、イヤな役回りなのですが、リーダーシップをもってハッキリと高い要求を出してくれ、とても助かっています。

RP:いまのお話で思い出したことがあります。先日の公開練習で、西村紀音選手が取材対応に臨みました。その際、猶本選手や安藤選手が、「ダメなプレーに対してハッキリいってくれる」「直接、アドバイスをしてくれるので、直そうと思える」と話していました。そうしたチームの空気の良さを感じますね。
安藤:緩いときには、光(猶本)がビシッと言ってくれます。若い選手に対して、「こうした方が良い」ということを、その場で、しっかりと伝えてくれます。そこには、彼女の、もともとあるメンタリティーがあると思います。彼女自身、海外に移籍して学んできたことがあり、彼女自身できなかったことを考えたり、もがいたりして成長した経験があるので、うまくいかない人の気持ちが分かります。あえて言っているようにも思いますし、自分の経験も一緒に交えて、話してくれます。その姿に成長を感じます。もともとは、大学の先輩・後輩から、師弟関係になりましたが、(猶本が)たくましくなって、私が逆に引っ張られているな、と感じますし……、ありがたい存在です。私が緩いプレーをしたときは、「もっと、こうして欲しかった」「あのプレーは梢さんらしくないです」「もっとこんなトレーニングをした方がいいじゃないですか」と言ってくれます。なので、たくましいですし、切磋琢磨できる存在です。

RP:安藤選手個人のお話しになりますが、センターバックを任されたり、以前はボランチ起用されたりと、本当にすごいですね。楠瀬監督が、安藤選手について、好奇心、向上心があると話していました。
安藤:この年齢になってもチャレンジすることがたくさんあって、サッカーが楽しいですし、楽しくやらせてもらっています。いろいろなポジションでプレーすることで、改めてサッカーの奥深さや難しさを知り、チャレンジすることが楽しいです。これまでの、いろいろな経験が生かされています。たとえば、「DFって、こうやられたら、すごくイヤなんだな」「こう守るから、こうやって攻撃したら、ここは絶対に守り切れないエリアが出てくるんだな」とか、DFをやったことでたくさん見えてきました。また、私自身、試されている立場なので、緊張感というか……「そのポジションできるの?」とか、そういう場面になるのが、たまらなく良いですね(笑)。あるポジションを任されたとき、できるかどうか、その試合で見せる、証明するタイミングが、私にとって勝負のとき。そこにサッカーの面白さがあり、自分が続けている要因だと思います。

RP:安藤選手は国内外、代表と、さまざまなカテゴリー、フィールドでプレーするなかで感じる、うまくなる選手、成長する選手の基準、条件のようなものをどう感じていますか?
安藤:いまの若い選手をみて感じるのが、ひと言でいうと、メンタリティーがある選手ですね。「こうなりたい」という目標に対して、貪欲に向き合えられるか。もともと持っている、うまい、下手以外に、そのメンタリティーが大事です。「いまの自分にはこれが足りない、だから、このトレーニングをする」とか、うまくいかないとき、落ち込むより、すぐチャレンジする。そうした気持ちの部分が強いです。たとえば、同じことを伝えても、すぐに取り組んだり、すぐにプレーで活かしたり、選手によって反応は違います。うまくいかなかったとき、「自分の好きなポジションじゃない」「いいパスをくれなかったから」と逃げるより、自分の足りないところを理解して、そのために何ができるかを考える。また、周りから言われたことを吸収して自分のプレーに変えていくことで、どんどん伸びていきます。

RP:さきほどの猶本選手もそうですが、なでしこジャパンについて。海外遠征に石川璃音選手、清家貴子選手、3選手が選ばれました。さらに長野風花選手、乗松瑠華選手、平尾知佳選手、熊谷紗希選手、南萌華選手ら、浦和OGも、ずいぶん選ばれています。
安藤:嬉しいですね。知っている選手ですし、努力していることも分かっているので応援しています。

RP:やはり、代表というのは違いますか?雰囲気とか。
安藤:違います。もちろん、クラブとは全然、違います。みんなそれぞれ、各チームから選ばれてきますから、厳しさも、背負うものも、全く違うものがあります。代表に選ばれ続ける、代表で生き残ることは、サッカーの技術以外に強い気持ちが必要ですし、大事なことです。日の丸を背負って世界と戦うわけですから。

RP:以前、なでしこジャパンを取材した記者のかたとFIFA女子ワールドカップ カナダ2015の決勝戦、アメリカ×日本の話しになり、生のUSAコールに、ものすごく圧を感じた、と。スタジアムから降り注ぐ圧のなかで、日本の選手が戦う、それだけでものすごいことだと話していました。
安藤:代表を経験した選手がチームに帰ってくると、顔つきが違います。自信を持って帰ってくる選手がいれば、もっとやらなきゃと意識を高くする選手もいます。浦和から代表に行く選手が多くなることは、大事なことです。

RP:石川選手がアメリカ遠征に選ばれて、チームに戻ってきた際、楠瀬監督が、プレーのときの視野が広まったと、石川選手の変化を話していました。
安藤:浦和で活躍しているだけだと、周囲から「ルーキーだから、じゅうぶんだね」と思われてしまいます。でも、「これからは代表選手として見られるから」ということを、先日、璃音(石川)には厳しく伝えました。「そのプレー、代表選手はできなきゃダメ」と。みんな、上を目指していますが、代表選手になると、背負うものがありますから。

RP:最後にWEリーグ、そして女子サッカーについて、お聞きします。女子サッカー全体を見ますと、健気さ、ひたむきさが全面に出ている印象です。それでもいいかもしれませんが、それだけではダメだと思うんです。たとえば、「WEリーガーになったら、高級車に乗れるよ」でもいいですが、現実的な夢も見せないといけないと思います。健気さ、ひたむきさだけじゃない、何かを伝えなければならないと思います。その何かを安藤選手にお聞きしたいです。
安藤:私の場合は……カカ選手(元ブラジル代表)を観に、横浜で行われたFIFAクラブワールドカップ ジャパン2007 準決勝に行きました。そのときにスタジアムから夢をもらったな、と感じたんです。たとえば、ディズニーランドで感じる気持ち以上のものを。サッカー選手って、こんな夢を与えられるんだな、こんなに感動するんだなと……そう感じました。だからこそ、アスリートとして、かっこよさを見せたいですね。たとえば、アメリカ女子代表選手はピッチに出てきただけで、かっこいいというか。女性アスリートでも、こんなにかっこいいんだ!というのを見せたいですね。レッズレディースの選手は、ピッチではかっこいいけど、普段はかわいらしかったり、そうしたギャップが魅力なんじゃないかな、と思います。かっこよさを、より、かっこよく。レッズレディースの選手はピッチに出た瞬間からかっこいいと思われる存在になりたいです。

RP:ありがとうございました。

(聞き手:レッズプレス!!佐藤亮太)

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