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[REDSインタビュー]野崎雅也のスペイン便り・後編「合理的で柔軟性のある思考法をスペインで感じた」

「REDSインタビュー」は、トップチームやレディースの選手、監督、スタッフ、関係者などのインタビューを掲載するコーナー。
今回は浦和レッズのユース出身で2012年から14年まで所属(14年は福岡に期限追遺跡)し、現在、スペイン5部に所属する野崎雅也にこれまでの経緯などをことし6月、ビデオ通話アプリ「Zoom」を使い、インタビューを行った。


(佐藤亮太)

野崎雅也のスペイン便り・後編

RP:前回、インタビューしたのが3月中旬でした。それから4カ月弱、野崎選手はサッカーに、そしてスペインでの日常をどう感じながら、過ごしたかをお聞きしたいです。
野崎:サッカーに関しては、今シーズン、新型コロナウイルスの影響でハーフシーズンになりましたが、感じることや学びは多くありました。僕が感じたのは、スペインのサッカーは世界の最先端を進んでいるというよりは、下に、深く掘っているイメージ。「これしかないよね」というサッカーの本質をやり続けている印象です。今、日本では「5レーン理論」「ポジショナルプレー」といった戦術用語が使われ、世界の最先端の戦術を探りって、少しでも多く取り入れようとしていると思います。

ここスペインでは、僕の所属しているスペイン5部 ウニフィカシオン・ジェフィアCFを含め、スペインのサッカーはより勝ちたいという本能が一番大きく、スペイン全体でもそうしたトレンドではなく、自分たちが求めるサッカーをやり続ける、深く掘り下げていくか、という感じです。日本も勝つためにプレーしていますが、どこか手段が目的化しているように見えます。

スペインではより勝つため、今週の試合に勝つためにやる。そこだけに徹しています。
どちらが良いということはないですが、日本とスペインで前提そのものが全然違います。
スペインでは、より動物的というか、「これがサッカーだよ」という軸がある。その軸がズレていないから「それだけやれば良いのだよ」というバックボーンがあります。

日本だと、古来、中国から様々なものを輸入してきました。
時代が下がって、明治時代にはヨーロッパの産業を、戦後はアメリカからのものを取り入れ、追いつけ追い越せでやってきた民族と考えます。
そうした取り入れることで日本は発展してきました。

サッカーもそうだと思いますが、「じゃあ、日本では何を突きつめて、掘り下げていけばよいのか?」ということを見失ってしまう。それができた分野、たとえば、プロ野球やラーメンが当てはまりますが、掘り方を知っています。では、日本のサッカーは何を掘れば良いのか、明確じゃないなと感じました。

良い悪いは別にして、国民性から見ても日本は借りてきたものを取り入れて、自分たちでカスタマイズするのが得意です。現に日本のサッカーや日本代表を見ると、(戦術の)トレンドが変わっています。以前は、スペインを、特にバルセロナのサッカーだったり、最近だと森保一代表監督はバイエルンミュンヘンのサッカーだったりを目指すということを記事で目にしました。海外の良いところを多く取り入れることは長所です。逆にスペインは取り入れるという点では足りないと感じますが…(笑)。

日常生活でもあります。たとえば…スペインではサランラップのようなモノは使いにくいままなのですよ。炭酸飲料水のファンタもそうです。日本では期間限定で様々な味が出ていますが、スペインはレモンとオレンジの2種類だけ。期間限定の味とか、まったくありません。日本では新しいものを取り入れる良さもありますが、一方、ブレているようにも見える。良い面、悪い面、どちらをとらえるか、考えなければならないと思います。

RP:これまでの話とつながりますが、生活面ではどうですか?
野崎:感じるのは、とても合理的な面です。
たとえば、街にはゴミ箱ひとつの角にひとつずつ置いてあります。1日中、いつでもゴミを出して良いルールで、分別はナマモノと燃えるもの、燃えないものくらいで、ほとんどありません。
にもかかわらず、道が汚いのです。
スペインでは捨てられないのなら、いろんなところにゴミ箱を置いて、一気に回収すれば良いでしょという考え。さらにそこに雇用も生まれるという考え方です。
「できないなら、もっとうまいこと考えようよ」「できないなら変化をつけようよ」という合理的で柔軟性のある思考法をスペインで感じました。

あとスーパーのレジでは、こちらの店員さんは、とても不愛想です。スマホを見ながら、電話しながらレジを打っています。当然、レジが遅くなりますから、長い列ができます。
でも、その店員さんが、最後に「良い週末を過ごしてね」とか言ってくれます。作業はとても雑ですが、目を見て話してくれます。
日本ではどうか。レジは早くて丁寧。形式的な挨拶がありますが、人の目を見ていないことが多いです。
その点を比べると、どちらが他人に寄り添っているのか?って感じます。たしかにスペインには緩さやいいかげんさはありますが、一番大切なところがあるので、こちらのほうが好きですね。ホントに刺激ばかりの毎日です。

RP:どうしても野崎選手の情報がSNSだけなので、そこから推察するのですが、立て続けに投稿する時期があれば、少し間が空く時期があったり、野崎選手の心模様が何となくつかめます。
野崎:ここに来て考えていない時は、まずないです。ずっと考えています。そうですね…。SNSに関しては、どこまで書けば良いのかが難しいですよね。
少し前、監督が僕のSNSを見ていて(笑)。翻訳する機能はありますが、うまく伝わってなくて困りました。
またSNSがうまくつながったことがありました。僕がSNSでサッカーの動画をあげた時、監督から「君は、指導者になりたいのか」と言われて、今、5、6歳のチームの練習に交じらせてもらっています。コーチの言ったことをメモしながら、参加しています。
で、面白いのはコーチが17、18歳のアカデミーの選手がピッチに立って小学生年代を教えていることです。サッカーを考えるキッカケになります。
一方、日本ではあまり聞いたことがありませんから面白いですよね。

RP:今、浦和で指揮するリカルド ロドリゲス監督もそのような話をしていました。ロドリゲス監督が特別ではなく、スペインではごく一般的なのですね。
野崎:スペインでは17、18歳くらいから指導者の専門学校に行く選手がいるので、選手と掛け持ちというケースが多いと聞きます。もしかすると日本より早い段階で将来、指導者になると決めている選手が多いかもしれません。日本だとなるべく現役を続けてというのが一般的ですからね。

RP:チームについてお聞きします。6連勝と調子が良かったようですが。
野崎:僕らのチームは、6部から5部にあがった昇格組なので、目標は残留でした。
僕らのリーグはカタルーニャリーグにはAとBの2つあって、それぞれ20チームずつあります。でも、今シーズンはコロナウイルスの影響でリーグが4つに分かれて、10チームでホーム&アウェイであわせて18試合、戦いました。始まって6連勝して、リーグ上位まであがりました。その時点では行けるところまで行こうという雰囲気でした。
ただ、チーム数が少ない分、天国と地獄が近くて…6連勝して3位に行っても1回負けると8位まで落ちることもありました。
最終的には5位でした。残り3試合で3連勝すれば、優勝でしたが、その3連戦の初戦で負けました。優勝の可能性がなくなった途端に選手のやる気もなくなってしまいました。もう、ビックリするくらい。こんなに変わるのかと思うくらいに。練習もやらないし…僕は、いつも通り練習開始30分前に来て、ウォームアップしますが、ほかのチームメイトから「何、やっているの?」と言われました。最後の2試合で監督が出場の少なかった選手を起用するから、と言ってくれて、スタメンで出ることができました。その試合で90分フル出場できました。ずっとやってきたことが自分のゴールにつながったことは良かったですが、チームは負けてしまいました。
チームにとっては最悪ですが、僕自身にとっては、最後にご褒美が来たなと感じで報われた気がしました。来季、まだ契約していませんが、更新の話は頂いています。
その話を蹴って、上のリーグに行く手もありましたが、そこでは、もう一度、トライアウトや練習参加という形からでした。厳密には、上のカテゴリーに行けるという保証はなく、迷いました。最終的には、今のチームでプレーすることにしました。

僕は浦和で2年、プレーしましたが、それ以降は1年ずつの在籍でした。今のチームの監督からの信頼感が増してきたタイミングで、来季は、例年のシーズンに戻ると思いますが、在籍2年目になることは、僕のなかでは新鮮なチャレンジです。オフシーズンのこの2カ月、追い込んでみようか、と思っています。

写真提供 野崎雅也選手

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