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REDSインタビュー

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番外編REDSインタビュー:おこしやす京都AC 原一樹選手/レッズを離れてから気づいた平川忠亮さんが告げた言葉の意味

「REDSインタビュー」は、トップチームやレディースの選手、監督、スタッフ、関係者などのインタビューを掲載するコーナー。浦和レッズには、2011年の1シーズンのみの在籍だった原一樹選手。さまざまなクラブで活躍し、現在は『おこしやす京都AC』に所属する。今、どんな想いをもってサッカーに取り組んでいるのか。2021シーズン、背番号10を背負う原一樹選手にzoomを繋いで、話を聞いた。


(佐藤亮太)

レッズを離れてから気づいた平川忠亮さんが告げた言葉の意味
テレアポからの営業仕事をしながらサッカーと関わる現在


RP:2019年12月に開かれたJリーグ合同トライアウトに原選手が参加し、その取材時にお話を伺った以来となりますね。現在、所属する『おこしやす京都AC』は、関西リーグ1部。このクラブに加入するまでの経緯を、改めて教えて頂けますか?
原:2019年にロアッソ熊本を契約満了で退団するというリリースが出たあとすぐに、『おこしやす京都AC』から電話を頂いて……。それがトライアウトの前でしたね。実際にトライアウトを受けたわけですが、“来シーズンも、サッカーができるかも”という、僕の心を支えてくれたことが(加入の)一番の理由でした。加えて、トライアウトのあとにも、クラブのヴィジョンを説明して頂くなかで、選手として、この先、どうなるのかが分からなかった僕にとって、本当に支えになりましたし、大きな決め手になりました。

RP:現在、『おこしやす京都AC』が所属する関西リーグ1部には、元Jリーガーが所属するチームがあるなど、我々が想像する以上にタフなリーグのような気がしますが、いかがですか?昨シーズンのコロナ禍、どのような戦いでしたか?
原:例年ならば、前期・後期で試合が行われていましたが、昨シーズンは新型コロナウイルスの影響で、後期だけの7試合しかなくて、僕たちには痛手でした。なかなか勝点を重ねることができませんでした。日程で言いますと、通常は1週間空けて、次の試合が行われるところを、どうしても連戦になってしまうので、ケガをしてしまうと試合に出られないこともありました。昨シーズンは試合がなくなって、前期・後期もなく、さらに、ぶっつけ本番。自分にとって初めてのリーグだったので、戦う難しさを昨シーズンの1年間、感じました。

RP:関西1部リーグを勝ち抜くと、今度はJFL昇格を決める全国地域サッカーリーグ決勝大会に進むわけですが、日程的にハードな過酷な大会を勝ち上がっていかなくてはなりません。
原:本当に過酷で、前回は、同じく関西リーグ1部だったFCティアモ枚方が関西代表で挑みましたが、一次ラウンドが3日間で3試合、決勝ラウンドが5日間で3試合という過酷な状況で戦わないとならないと聞きました。非常に短期間でJFLに昇格できるか昇格できないのか、そうした大切な試合がつまっている時の緊張感があるとも話を伺っています。(そうした過酷さを)自分の、今までの経験を活かせたらな、と思っていましたが、昨シーズンは関西リーグで勝ち上がることができず、不甲斐なさがありました。今シーズンこそは、と思っています。

RP:先ほど原選手が話したクラブのヴィジョンについて、どういう点に共感したのでしょうか?
原:Jの舞台に戻りたい、それが僕の夢です。(カテゴリーをふまえると)最短2年で実現することができます。また、京都は、J2所属の京都サンガF.C.が亀岡にあるサンガスタジアムby KYOCERAを本拠地としたことで、『おこしやす京都AC』がJに昇格した時には、西京極スタジアムを利用できる可能性が現時点では高いです。他にも問題はありますが、Jに参入する上では成績のみ。僕たちが結果を残すだけであることに魅力を感じました。他にも、Jリーグで活躍していた選手が何人かいたので、狙えるなという考えがあって加入を決めました。

RP:原選手と言いますと、天皇杯男というイメージがありますし、1つのプレーで決める印象があります。そうしたプレースタイルは、いまだに変わりませんか。
原:点を取ることにこだわっています。浦和レッズに在籍したとき、平川さん(平川忠亮コーチ)に「ナニで生きていくの?」「能力だけでは、あと数年しかプロはやれないよ?」と、とても言われました。そして「10年先までやっていくには、自分の武器を生かして、チームにどう還元するかだ」とも言われました。ちょうど10年前ですかね。あの時、口酸っぱく言ってもらいましたが、正直、当時は全然分かりませんでした。自分は足が速くて、運動量もあったので、いつだって走りまわれる!裏にも抜けるスピードだってある!と思っていました。でも、それが。30歳を過ぎてから、プロの世界で生き残るには、何をしなければならないのか?を思った時、「あっ!これがヒラさん(平川)の言っていた、考えることか」と思いました。つまり、自分の長所を生かして、他人と違うものをチームに還元する必要があるのだということだ、と。そして僕は点を取ることで、チームに貢献するんだという想いになりました。(浦和を離れて)3年、4年が過ぎてから、ヒラさんの言葉を理解でき、「あの時、何も分からずに生意気ばかり言って申し訳ありませんでした。やっと、気づきました、あの言葉」と、ヒラさんに電話しました(笑)。あの時の僕は、ヒラさんの言葉を受け入れることができなかったのですが、ヒラさんの言葉をかみ砕いて、理解して、今もこうしてサッカーが出来ているので、先の見えた助言、素晴らしいアドバイスを受けました。今の若い選手たちは、ヒラさんのような指導者が目の前にいるわけですから……。とても偉大な存在ですし、素晴らしい環境であると思います。今のレッズの若い選手は、伸びるだろうなと感じます。当時、僕は、とても生意気で。「それはヒラさんの考え方でしょ。僕は、違います」と言っていました。清水エスパルスで少し活躍して、浦和レッズに完全移籍をして、下手なプライドがあったかもしれませんし、口ごたえもしていました。何年か経って、「ああ、こういったことか」と気がついて……。もちろん、今の選手が理解できない部分もあると思います。でも、周りから頂いた言葉は、自分次第の受け入れ方次第で変わってきます。ヒラさんは選手生活を続けながら、何を言われようが、僕に自分の考えを言ってくれました。それに対して感謝しつつ、その言葉を、自分のなかでもっと育てて、これから若い選手に伝えたいです。思い出すと、特にヒラさんには、本当によくして頂いて、清水エスパルスの時では、伸二さん(小野伸二)、浦和ではヒラさんだけでなく、ツボさん(坪井慶介)、ホリさん(堀之内聖)といった79年組には、めちゃめちゃ可愛がってもらいました(笑)。

RP:今、原選手は『おこしやす京都AC』で仕事をしながら、プレーされているのですよね?
原:はい、午前中に練習して、午後から夜8時くらいまで、しっかりとスーツを着て仕事をしています。昨シーズンはなかなか営業活動が出来ず、テレワークが多かったですが、出社できる時にはテレフォンアポイントメントや直接、訪問などして……。本当に学びが多いです。

RP:原選手が感じている学びとは?
原:地域活動を含めて、地域の企業さま、会社さまに電話をし、アポイントを取らせて頂いて、実際にお会いして、自己紹介からチームの紹介をして、試合のスケジュールが書かれているポスターなどを貼って頂けるようにお願いしています。また、一緒に写真を撮影させて頂き、SNSに投稿したり、地域に愛されるクラブを作るための一歩を踏みながら、成績もあげていこうとしています。すべてが初めてのことで……。初めてのテレアポでしたし、訪問して、違う職業の方とお会いして、スーツでお話をすることも、今まではなかったので、新しい体験をさせて頂いています。また、言葉遣いが今までに何ひとつ出来ていなかったな、と感じました。たとえば、これまでは目上の方から、ご飯をご馳走になる時にも「ありがとうございます」とか「あざーす」なんて言っていましたが、「ありがとうございます。これからもよろしくお願いします」と言ったことがありませんでした。電話をさしあげる時も言葉遣いをちゃんとしなければなりませんし、電話をかける最初の10回、20回は「何か言われるのかな」とか、「言葉遣いは大丈夫かな」と思っていると、実際、言葉が出てこないのです。回数を重ねて、ようやく相手に質問されても、すぐに答えられるという風に落ち着いてきて、相手の方に自分の言葉が伝わって、「5分、10分ならば、時間を作りますよ」と訪問する時間を頂ける。何10回、何100回と電話をかける経験をしたことで、ようやく、たどり着く。これが36歳で良いのかな?と思いつつも(笑)。20代前半、社会人1年目の方たちがやることを、僕は今、学ばせて頂いています。

RP:そうした地域活動をした上で、実際、プレーすることで、より多くの方に支えられていると、ダイレクトに近く感じると思います。背負うものが違うというか、実際にお会いした人たちばかりですから、スタジアムの声援同様、出ない一歩が出る、ということがあると思いますが。
原:直接、パートナー様やスポンサー様の声が聞こえてくることで、また、パートナー契約を結んでいただき、チームを支えていただけることで、さらにピッチでの責任は増します。そのことを他の選手に伝える責任が僕にはあります。学びを得てピッチに立つことは重要なことですし、Jリーグだとそれは難しいかもしれませんが、地域リーグのカテゴリーだからこそできる経験ですし、ピッチに立った時の想いが変わってくると思います。裏側が分かると言いますか、ピッチに立っていると応援して下さる方が目の前にいます。また、多くの企業の方が支えてくれたおかげで、チームが運営できる、そうしたことがわかると、目の前のサポーターだけでなく、画面越しで応援してくださる企業や個人の方たちが見えてきます。そこには感謝の気持ちしかありません。結果だけがすべてではないですが、カテゴリーをあげることで、多くの方々に認知していただけるようにしていきたいです。

RP:今までのお話を聞いて感じたのは、カテゴリーに関係なく、街の人たちに支えられたクラブ、勝ち・負けよりもその存在が大切と言いますか、試合日にむかって、地域に住む方々のモチベーションや、生活のうるおいになるようなクラブが、全国にたくさん出来ていけば、日本は楽しく過ごせるような気がします。
原:強いチームがすべてではないですが、J1を目指したいですし、カテゴリーをあげることが目標であり、義務と考えています。海外だと、3部でも4部でも、地元にあるサッカークラブを応援して、週末にはスタジアムへ行って盛り上がる。京都の街で、一緒に盛り上げられるようにしたいです。また、浦和はまさにそうでしたが、地元に住む人たちに支えられていることを魅力的に感じます。レッズの場合、スタジアムには全国からサポーターが来ていると思いますが、街自体がレッズですし、海外に近い良さを感じます。今後、このクラブをそうしたクラブにしていきたいです。

RP:ありがとうございました。

(聞き手:レッズプレス!!ライター佐藤亮太)



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