2013年9月、Jリーグは2015年シーズンからの「2ステージ制」導入を正式に決めた。決定に至るまで、多くのサポーターからは反対の意思を示した横断幕が各スタジアムで掲げられた。
「なぜJリーグは2ステージ制を断行したのか」
「2ステージ制に踏み切った背景は?」
そんな疑問が湧いてくる。
FM NACK5で長年、サッカー番組を放送している『FUNFUN SOCCER』(毎週土曜日・朝6時からの1時間)では、2ステージ制の仕掛け人・中西大介Jリーグ競技・事業統括本部長をゲストに迎え、番組パーソナリティー・大野勢太郎がリスナーなどからの質問を取り上げながら、中西氏に質問・疑問をぶつけた。
今回は10月5日(土)放送分の模様(後編)をお送りする。
《サッカーを取り巻く環境の変化》
大野:これを3つ分析していきますと、どうにか女性を呼び込みたいのであれば、どういう形で新たなライトな女性層を迎えられますか?
中西:実はこのようなデータがあります。「Jリーグの試合の質が上がっていますか?」という質問に、メディアのみなさん、選手、スポンサーのみなさん・・・、みな「試合の質は上がっている」としています。サポーターの方もそうです。
ただ、一般の方に同じことを聞くと、「Jリーグのレベルは下がっている」と答えるのです。見ていない人は「レベルが下がっている」という印象を持っているということです。Jリーグのレベルは、この前の東アジアカップでの優勝で証明されたように、素晴らしい選手がそろっています。私は世界のサッカーの中でリーグと比べても、クオリティーは決して悪くないと思います。にもかかわらず、一般の方は海外に選手が流出することによってなのか、「レベルは下がっている」という印象を持っている。
大野:例えば、香川真司がJリーグからいなくなる、本田圭佑がいなくなる。次から次に海外の舞台に出てしまう。海外で活躍すればするほど新聞、TVメディアは彼らを伝えていく。こちらは「お余り」の人間たちでやっている。だから、Jリーグのレベルは下がっている。こうした印象を与えてしまいますよね。
中西:まさにその通りで、試合の質が上がっているにもかかわらず、質が落ちていると思われている。ここが今のJリーグの問題なんだと思います。例えば、昨年の味の素スタジアムで行われたFC東京vs浦和レッズ。
大野:この試合は素晴らしい試合で10年に一度ある良い試合でした。
中西:まさしく「This is Jリーグ」という試合でした。しかし、一般の方は全く知らないですね。
大野:この試合をもしNHK総合で放送してくれれば、日本全国津々浦々、Jリーグの時代がもう一度来たと、見ていた人が感じたのではと、私は思いますが。
中西:そういったJリーグの試合を多くの人に見てもらうには、ショーケースとなる試合がどうしても必要となります。そのことは先週の放送でお話ししたことと、つながってきます。試合の質を上げていくことはもちろん、私は少しJリーグが過小評価されていると思います。そのためには適正な評価をメディアにしていただくことも大事ですし、Jリーグの質は決して悪くないんだということを、全国の人に見ていただくような試合の設定がJリーグに、今、求められていると思います。
大野:あの試合は味の素スタジアムでしたよね。埼スタのほか、良いスタジアムはたくさんあります。ただ、先ほど、中西さんがスタジアムの環境の話をなさったことを踏まえて、こんなメールが届いています。「開幕時期は2月になったら、除雪やスタジアムの改修費はJリーグが負担するのでしょうか」というメールです。Jリーグとしてはお金がない上に、こういった質問が来るとつらいと思いますが。例えば、雪国のクラブの方とJリーグは始終、連絡を取り合っているんですか。
中西:コミュニケーションは、もちろん取っています。札幌や雪深い山形。以前、山形で戦略会議をやりました。
大野:山形は今度、山形駅の近くにスタジアムを作ろうと自治体で盛り上がっていますが、ホームスタジアムのある天童市では「うちが始めたことだから、ちょっと待ってほしい」という話を現地で聞きました。今度、新しいスタジアムができるのであれば、雪や寒さ対策をするわけですよね。
中西:そういった環境で言いますと、今度、J3ができます。沖縄が手を挙げています。もちろんコンサドーレ札幌は一番、北にあります。日本はものすごく縦に長くて、気候に関して、とても難しい国です。
大野:私としては「秋春制」を放送などで言っているので、権化のように思われていますが、事情はじゅうぶんに分かっています。雪国の事情も寒暖の差も。でも、どこかで決断しないといけませんよね。
中西:暑すぎる寒すぎる。しかし、どっちもやらないとシーズンは成立しません。どっちを取るのかという決断はもう迫られています。
大野:この結論は急ぐのですか。急がないのですか? どうしたらいいでしょうか。
中西:FIFAの理事会があります。ここでカタールワールドカップがいつ開催されるか、出てきます。それによってヨーロッパがどう対応するのか。AFCチャンピオンズリーグのカレンダーをAFCはどうしていくのか。こういった要素がだんだん固まってくると思います。今は変数が多すぎて、なかなか意思決定が難しい状況なんですが、そのあたりが固定されてくると、いつ移行すればいいのか、踏み込んだ議論ができると思います。
大野:先週からお話を伺っていますが、2ステージ制もシーズンの開幕時期や終わりをどこに置けばいいのか。天皇杯を含めて。またナビスコカップの位置付けなど、20年たったのだから、一度、全部、総点検して、J3もできることですから、「第二の船出」と前向きに、Jリーグを前向きに見た方がいいですかね。
中西:そのように見ていただく方が良いと思います。Jリーグ開幕当初とサッカーを取り巻く環境は変わっています。われわれは、もちろん理念はおろしません。ただ、環境への適用は必要です。環境適用において、いくつかのポイントが出ているということですよね。それを間断なく実施しなければならないタイミングに来ていると思います。
大野:誰か1人を取り上げて、悪者にして、Jリーグを語るようなことは反省しなければなりません。Jリーグ、あるいはサッカーに関わる全ての人たち、ファン・サポーターを含めて、悪者を取り上げて、それに全部帰結して話を進めることは、時代にふさわしくないかなと思います。これからも耳に痛いようなお便りなどはどんどん放送で積極的に取り上げますが、聞く耳を持っていただいて、新たなJリーグを中西さんたちの世代で作り上げてください。
中西:みなさんの声はキチンと届いています。われわれのところに。そのことをじゅうぶん考慮しながら議論していることも、みなさんにもお伝えしたいです。
▼Jリーグ掲示板(2ステージ制の議論など)
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