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REDSインタビュー

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Jリーグ・中西大介氏インタビュー(前編)

2013年9月、Jリーグは2015年シーズンからの「2ステージ制」導入を正式に決めた。決定に至るまで、多くのサポーターからは反対の意思を示した横断幕が各スタジアムで掲げられた。

「なぜJリーグは2ステージ制を断行したのか」
「2ステージ制に踏み切った背景は?」

そんな疑問が湧いてくる。

FM NACK5で長年、サッカー番組を放送している『FUNFUN SOCCER』(毎週土曜日・朝6時からの1時間)では、2ステージ制の仕掛け人・中西大介Jリーグ競技・事業統括本部長をゲストに迎え、番組パーソナリティー・大野勢太郎がリスナーなどからの質問を取り上げながら、中西氏に質問・疑問をぶつけた。30分にわたるインタビューに立ち会った『レッズプレス!!』が9月28日(土)放送分を今日から3回に分けて、その模様をお送りする。

1回目は2ステージ制変更の理由について。

《2ステージ制変更の理由》
大野:中西大介Jリーグ事業・統括本部長に、再来年2015年からJ1が2ステージ制・ポストシーズン制に至った経緯についてお話を伺います。まず率直に、なぜ2ステージ制に至ったのか。あらゆるところから聞かれていると思いますが。

中西:2004年に最後のチャンピオンシップをやって、2005年から34試合、ホーム&アウェイで勝負を決めるリーグ戦に移行しました。その後、2004年から外部環境に大きな変化がありました。

ひとつは世界のサッカーの環境が変わりました。ヨーロッパの一部の国に、それも一部のリーグの、一部のクラブに富と選手が集中したため、それ以外の国のリーグがとても疲弊しています。それは2010年以降、南アフリカワールドカップで岡田武史監督が良い成績を残して日本人選手のクオリティーが認められて以来、日本も例外ではなくなりました。一流の選手がどんどん外に出て行くことが加速しました。それが2004年との、一番の環境の違いです。

世界中で各国、ヨーロッパの中堅国、南米各国リーグが本当に疲弊しています。例えば、ポーランドは今年から通常のシーズン以外にポストシーズンを設けることになりました。レバンドスキーみたいなスター選手がいますよね。彼は今、ブンデスリーガ・ボルシア・ドルトムントの大スターですね。レバンドスキーのような選手がポーランド国内にとどまることなく、どんどん隣のブンデスリーガやスペイン、イタリアに出て行くことになってしまった。その結果、国内リーグの注目が集めにくくなりました。

この例の大先輩が南米です。グーロバリズムの波に飲み込まれた最初のエリアが南米でした。アルゼンチン、ブラジルをはじめ若手の有力選手がどんどんヨーロッパに引き抜かれてしまうことによって、国内が疲弊するようになりました。

インディペンディエンテが2部に降格するようなリーグになってしまいました。そういった国では国内リーグを注目されるように、国内のメディアを引き付けてリーグを維持し、選手に高い金額を支払うことを維持するために、いろんな工夫をしています。日本も例外ではない国になってしまった、ということになります。われわれも大会方式以外で観客数の減少を止める方法をいろいろ議論してきました。

大野:しかし、それはいずれも現実におかれているJリーグの突破口、特効薬にはならない?

中西そういった結論に達しました。

大野:そこで今回の案が出た?

中西2004年以降、Jリーグ自身の収入でいきますと15億8000万円減少しています。

大野:それはどの部分で一番、目立っていますか。

中西一番はスポンサー料です。

大野:やはりスポンサーが離れたということですね。

中西来シーズンに向けては最大10億から13億のリスクをJリーグがしょっています。そうなると何が問題になるのか? 各クラブへの配分金は手をつけないでいこうと思います。J2を22チームまで増やしました。安定軌道に乗せるためには一定の配分金額は必要だと思っています。

大野:J2が疲弊しきってしまいますからね。

中西それから、われわれは戦略的投資と言いますが、例えば、U−13、U−14のリーグを整備する、レフェリーをプロ化してフルタイムでトレーニングする環境を作っていく、こういったことはすぐに成果は出ません。10年後の日本のサッカーについてはとっても大切なことだと思います。

大野:私もそう思います。

中西10年前にJリーグの収入が増えたときに、そこに投資を振り向けてきました。みなさん、まだまだレフェリーのレベルにご不満はあるかもしれません。ただ10年前と比べて、レフェリーのレベルは明らかに上がっていると思います。これをさらに10年、続ける努力をしなければなりません。この戦略的投資をなくすわけにはいきません。そのためには選択肢が3つあります。

分配金を減らすか。戦略的投資を一時的にあきらめるか。それとも大会方式を変えて、収入が上がることによって、さらに戦略的投資に振り向けて、Jリーグの環境を変えていくか。この3つの選択肢のなかでどうするか、ということを迫られる、問われる環境にあったということです。そこで、われわれは1番目と2番目のリスクをとらないことにしました。

大野:私は大正解だと思います。ただ3番目のやり方をやった方がいいのか。1番目、2番目に継続的な投資ができますか。

中西われわれの試算では、すでにこれをやれば一定の金額を得られることが分かっています。

大野:そうですか。そうなるとサポーターやファンのかたには「Jリーグは金を追いかけるのか?」という話になってしまうんですが、私はそこには「ちょっと待った」って感じなんです。やはり金がなければ何もできませんし、それが現実ですから。こういった議論になると感情的になってしまうので、そういった議論だけは避けたいですよね。予算の見積もりも、これから10年後まで審判に対する養成費も出るし、戦略的投資もできるという確信を持っているのですね?

中西契約が10年というわけにはいきません。ただ、10年後を考えたときの投資を確保し、今、育てているJ2のクラブに対して、安定的な分配金を残す算段は立っています。

大野:そのくらい立っていないと、これまで中西さん、袋だたきになって、モノは語れないかと、思うんです。思いつきではないわけですね。

中西よく「フットボールorマネー」と言い方がされますが、選手の地位を上げるためにも、指導者の地位を上げるためにも、子供たちのサッカーの環境を整えるためにも、金額は必要です。それが誰かのポケットに入るのであれば「フットボールorマネー」ということになります。そうではなくて、10年後のサッカーに対して、もっとたくさんのファンに見てもらうためにも、その環境を作るためにも当然、お金が必要になります。そこが枯渇することは日本のサッカーをストップさせるわけになります。今までこの20年間、成長できたのは、一定の金額が得られて、その再投資が正しかった証明だと思います。


(2回目に続く)

Jリーグ掲示板(2ステージ制の議論など)

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