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REDSPRESS EYES|渡邊凌磨らしさに迫る|レッズプレス!!

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渡邊凌磨らしさに迫る

(有賀久子)

渡邊凌磨らしさに迫る


「練習に行く時に、伸びしろをいかに埋めていくのかというチャレンジをしてもらいたい」。マティアス監督が就任会見で発した言葉を、このプレシーズンに体現していたのは渡邊凌磨ではないだろうか。



埼玉県東松山市出身。1996年生まれの、今年で28歳。

チームでは「凌磨」と呼ばれている。

小泉佳穂と吉田舜、そして凌磨で、前橋育英高・同期トリオとしての話題も多い。今季からガンバ大阪でプレーする、彼らの同期であり、キャプテンを務めていた鈴木徳馬は、学生時代から知る、彼らの長所を教えてくれた。「みんな、本当の負けず嫌いだし、負けず嫌いに加えて、課題が出たところからの探究心が強い」。佳穂の、浦和レッズでの日々を振り返ると、鈴木の言葉は納得だ。
そして、始動から1ヶ月。どの凌磨を思い出しても、常に学ぶ姿勢がグラウンドにあった。チームから離れて別調整の日でさえも、全体練習が終わった林 舞輝コーチ兼分析担当と話し、身体の向きなどを確認していた。「決まりごととか、守備のやり方とかは分かっているけれど、イチから学ぶことを大事にしたいというか、自分をアップデートする上で、必要なことだと思うから」。凌磨は、自分に与えられた明確な複数のタスクを前に、毎日、ポジティブに向き合っていた。

1月の加入会見。凌磨は「(ポジションは)いろいろ出来る分、どこが良いというのはないが、チームの勝利に貢献出来ることが全て。どこでも全力で戦おうと思っている」と話していた。その言葉が、現実に。始動日の公開練習で右ウイングにいた彼は、キャンプに入ってから、左サイドバックで起用され続けた。本人も、正直なところ、「おっ、ココなんだ」と思ったという。

FC東京でサイドバックを任された経験はあるが、酒井宏樹や宇賀神友弥、大畑歩夢といった、専門職の印象が強いサイドバックの中では、“不慣れ”なスタートであることは否めない。「ただ、このポジションに自分が必要と思ってくれているのならば」と、新しい自分に出会うことに躊躇いはなかった。それが自分らしさ、とも教えてくれた。過去の経験との違いは「自分が何をしたら良いのかを分かっているかどうか。3つ、4つとやるべきことがハッキリしている」と言い、そう感じさせてくれる環境に「やり甲斐がある」と充実した顔つきを見せた。



3週間のトレーニングキャンプ。凌磨は「強度が高い相手に、たくさんの失敗をして、開幕で左サイドバックで出るとなった時に心配がないようにするもの」と位置づけ、恐れることなく、練習やトレーニングマッチに挑み、成功も失敗も、すべてを記憶に刻んできた。

最終日のサガン鳥栖とのトレーニングマッチでは「ある程度、戦術が分かってきた部分と、もともと知っているプレーヤー(関根貴大や小泉佳穂)と組めたというところ、いろいろな要素はあるが、すごく楽しかった」と振り返るまでに。

その上で、「何本か、良い形で前に上がれたシーンはあったが、なかなか得点に結びつかずに、惜しい場面になった。それを得点に繋げられるようになっていかないといけないし、チャンスは、1試合に何本もあるわけじゃないから、1本1本を大事にしなくては」と悔しがった。

仲間との対話も多かった。この点は合宿レポートの中で伝えているが、宇賀神友弥との関係がそうであり、逆サイドの、右サイドバックでプレーする酒井宏樹も、その1人であった。



名古屋グランパス戦後に、酒井に「逆サイドから、渡邊凌磨選手をサポート出来ることは何なのか」と問いかけると、酒井は「凌磨とは、すごく喋っています」と即答だった。酒井は「サイドバックのポジショニングは本当に重要で、うちのセンターバックが強いからこそ、その2人の裏だったり、クロス対応の時は、僕らのポジショニングがすごく試される。そこさえ間違えなければ、失点は、かなり減らせる。後ろには、周作くんもいるし。失点する確率を減らすという部分で、凌磨とも、すごく良い話が出来ている。こればかりは、やり続けないと意味がないので、それで、どんどんと、僕も凌磨も学んでいければ良い」と話し、そして「あれだけ頭が良いし、器用な選手なので、飲み込みもすごく早いと思う」と凌磨の頭脳にも、太鼓判を押した。

凌磨に、“新しいサッカーに出会った時、どんな点を大事にしているか”と尋ねたことがあった。少し考えたあと、彼は「まずは、サッカーを全体的に見て、どこか肝なのかという確認をする。どういうサッカーをするのか、というよりも、このサッカーをするために、何が大事かを踏まえて、自分の出来ることをやっていく、というところを大事にしている。監督に言われたことの実行ではなく、自分で考えて、監督は、こういうサッカーがしたいんだなと理解して、自分で行動する、ということを大事にしている」と話してくれた。戦術を落としこむチカラ、体現するチカラを、この言葉から感じる。

開幕まで、1週間。チームは、毎日のゲーム練習を通じて、土台を作ってきた。凌磨は「身体を作るキャンプというよりも、新たなポジションで、いろいろと学ぶキャンプになった。すごく充実して、キャンプの3週間はあっという間だった」と笑って、振り返る。ここからは、対戦相手の顔が見えてくる。その中で「試合に出る、出ないは、最後は監督が決めること。フォーカスすべきことは、監督の思い描いているサッカーをいかに出来るか。自分のサイドバックの成長も、その1つだ」と言った。

底知れぬ探究心、間違いなく、渡邊凌磨のポジティブさ、真摯に向き合う姿勢は、ここまでのハイライトである。

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