フルメンバーで臨んだ森監督の2つの意図
（佐藤亮太）
1−1の引き分け。あれだけ主導権を握りながら、終盤カウンターからの失点はいただけなかったものの、ポゼッション、流動性、ボールの回収、ポジションチェンジと浦和Lらしさは存分に出ていた。
今日の試合の意義はなんだろうか？リーグ最終節とはいえ、優勝が決まったあとの試合。皇后杯に向け、ある意味大幅にメンバーを入れ替えてもよさそうなものだが、ほぼベストメンバーを編成した。
ここに森栄次監督のメッセージがある。
会見で指揮官は「選手にも自分に対しても気を緩ませたくなかった」、「勝つことに対してもっとどん欲になろうということを伝えた」と話した。
前者は皇后杯に向けたものであり、後者は来季に向けた、さらなる意識改革への促しだ。
6年ぶりにリーグ優勝を成し遂げた。ここまでも長く険しかったが、ここからが本当の勝負。そのことを森監督と選手は理解している。
「森監督から言われているが、勝つことはできても勝ち続けることは難しい」とDF南萌華が言えば、FW安藤梢は「優勝し続けられるような強いチームをサポーターの皆さんと一緒に作りたい」と話す。
つまり、今日の試合は良いチームから強いチームへ、さらに強いチームからより強いチームになっていく決意を宣言する、そんな意味合いが含まれている。
それだけに1−1の引き分けは後味の悪さとともに、MF水谷有希が言うように一発勝負の皇后杯に向けてうかうかできないと、気持ちを引き締める効果がありそうだ。
それにしてもFW菅澤優衣香のPKのワンポイント起用には驚いた。森監督が菅澤には言い含めていたものの、いきなりのPK。
チームメートが給水などで時間を稼ぎながら準備の時間を作った。そして得点王を取らせたい森監督のなんという親心、愛情の深さか。就任2年目で優勝できた理由がここにもある。
「これまでサッカー人生の努力が報われたなと思って、うれしい」。試合後のセレモニーでリーグ優勝について聞かれたDF長船加奈の言葉。
このセリフ、もう一度、聞ける皇后杯となることを。
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