奪って、つないで、走って、勝ち切る。試合としては及第点といえよう。

右サイドバックの遠藤、その遠藤に代わった水谷やボランチの塩越、コンバート組に加え、これまで出場機会の少なかった上野紗稀、約1年ぶり起用されても、ここ数年、一緒にやってきたチームメイト。

それだけにまったく遜色なく、いやむしろ、新しい連係が観られた。

2得点までの序盤は見て爽快そのもの。

長野MF川船は「パス回しに対応できず、ゲームを難しくした。守備の時間が長く、攻撃がまったくできなかった」と反省を口にするほど。

きょうは大量得点を期待したが長野が慣れてきたせいか、どうもゴールが遠くなり、ピンチらしいピンチもなければ、チャンスらしいチャンスもなかった。

その原因を清家は「距離感がだんだん悪くなった」と話すように、その距離感の悪さがパスミスにつながり、最後まで修正しきれなかった印象だ。

それでもなんとか勝ち切れたことはチームの成長といっていい。

サッカーでは最も面白い3－2のスコアの勝利。ただ、失点の過程がいただけなかった。

1失点目は相手選手と並走した石川。バックパスのミスを相手に獲られ、失点。
2失点目は高橋が最も危険なエリアであるゴール前で、ボールを切り替えした際、一瞬、ボールを見失い、奪われ失点。
相手に崩されての失点ではないものの、イージーなミスからのいわゆる安い失点。
もっともやってはいけないシーンだった。

「思い切り書いてください。ちょっと油断や慢心があった」と指揮官。
「（そうしたミスを）やってはいけない選手。そこは厳しくいきたい」と語った。

ただ、リーグ初先発の石川について経験不足なのでは？と水をむけると「経験というところで逃げるわけにはいかない。仕方ないでは済まない」とバッサリ。期待の裏返しにも感じた。
リーグ優勝を目指す今季。失点自体もそうだが、自滅的な失点をいかに減らすかもタイトルへの条件。

そのことを指摘したのが1年ぶりに復帰した栗島朱里。約30分の持ち時間に、はじめは「早っ！」と驚いたようだ。右サイドバックでプレーとなり、3点目のアシストのおまけつきだ。

彼女不在のなか、チームは皇后杯優勝、カップ戦優勝と2つのタイトルを手にしたものの、そこには自分はいなかった。それだけに「優勝するには失点を減らしたい。わたしの特徴は攻撃より守備なので失点を減らせるプレーをしたい」と思いは強かった。

今後について楠瀬監督は右サイドバックを入り口にボランチでの起用を想定しているが、頼もしい選手の復帰は有形無形で力になるはずだ。

秋空。快晴。埼スタ開幕戦。声出し応援という絶好の観戦日和。
試合前、コールリーダーからこんな声掛けがあった。

4604人のファン・サポーターはそんな思いで家路に着くことだろう。