ベンチでいつも見ていた背番号22、一法師央佳選手、引退セレモニー
WEリーグ第2節、EL埼玉を2‐1で勝利したその試合後、夕暮れ迫る浦和駒場スタジアムで一法師央佳の引退セレモニーが行われた。
アカデミーからトップ昇格した一法師。
2度の膝の大ケガから、ふたたびピッチに戻ろうとリハビリを続けたその最中、一法師は体調不良を訴え、リハビリを一時中断した。
検査入院で判明したのは突然死につながる運動誘発性不整脈。
その後、手術を行ったが、医師からはサッカーを諦めるようにと宣告された。
サッカーか。命か。一法師は命を選んだ。
そして迎えた、引退セレモニー。
2000人の観客の前で一法師は時折、涙をこらえながら、準備したものを読み上げた。
症状をどこまで公表するかどうか、迷ったこと。
引退を決めざるを得ない無念さ。
サポートと愛情の大切さ。
プレーできた誇り。
家族への感謝。
そして引退後への期待と不安が語られた5分15秒だった。
一法師の出場は21年6月19日、クラブオリジナルマッチとして行われた千葉L戦でのわずか5分間のみ。
しかし、一法師はホーム・アウェイに関係なく、一番近くでチームの戦いを見ていたといえる。
試合中、ベンチには一法師の背番号22のユニフォームがいつもかけられている。
また試合前の円陣にも必ず誰かが彼女のユニフォームを持って、加わっている。いなくてもいる。チームの一員として常にいる。ともに戦っていた。
その気持ちに一法師自身、応えたかったはず。
しかし、応えられないままの無念の引退となった。
「これからはサッカーから離れ、新たな道に進む怖さはありますが、未知の世界が広がっています。私らしく、新しい挑戦に向かって進んでいきます。サッカーで出会った全ての方々、今まで本当にありがとうございました。さようなら」
そんな一法師に応えるようゴール裏から横断幕が掲げられた。
「貴女の中の赤き血は一生流れ続ける。央佳の未来に幸あれ」
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