石原孝尚監督が率いて2年目となった今季の浦和レッズレディース。シーズン前、千葉県内で行われた交流試合では5戦全勝と仕上がりの良さをアピール。リーグ開幕前の記者会見では、攻撃的姿勢を貫き「相手よりも1点でも多く取ること」を強調していた。
開幕戦ではノジマステラ神奈川相模原を2−0で破り、さらに日体大FIELD横浜を4−1で下して、2連勝での上々のスタートを切った。しかし次のジェフユナイテッド千葉レディース戦では相手のハイプレスに苦しみ0−1で初黒星となる。その後のリーグ2強(日テレ・ベレーザ戦、INAC神戸レオネッサ)を迎えたホームゲームでは0−2、2−4と連敗し、後塵を拝した。順調に見えていたプレーにも歯車が少しだけズレ始める。各々のイメージのすり合わせができないことで攻撃は単調になり、守備は脆さが顔を覗かせた。
「失点の仕方がもったいない」(菅澤優衣香)。
前半戦を6勝3敗の成績で折り返したが、カップ戦では決勝トーナメント進出は叶わず、その頃、主力の猶本光がドイツに移籍。新たな組み合わせと適材適所を模索する中、中断期間を利用しオランダ遠征を実施しチームの強化に努め、その中で[4−1−4−1]のシステムにもトライした。
しかし状況は好転したとは言い切れず、リターンマッチとなった2強とのアウェイ連戦をともに0−3で落とす。後半戦1勝2分2敗で逆転優勝に向けて困難な状況に追い込まれると、10月9日、石原監督との契約解除と正木裕史コーチの監督昇格を発表した。
正木新監督は、チームの再建についてこう言った。
「選手が前向きに、どのくらいモチベーションを持ってサッカーができるかというところが、ピッチの中で選手がより良い状況でプレーすることにつながると思うので、メンタル的なアプローチをまず強めにやっていこう思っている」
特に顕著な課題だったのが、中断明け後の5試合でPKによる1得点に終わった攻撃力だった。
結果が出ないことで消極的なプレーが増え、背後を取る部分や1対1を仕掛ける部分でのアクションが減っていた。
“チャレンジなくしては何も生まれない”。正木監督は「攻撃にどうやって人数をかけていくのか、どうやってゴール前のシーンを増やしていくのかというトライをしていく」と話し、躍動するプレーを出せるよう指導。そして、第16節のセレッソ大阪堺レディース戦(2−1)で、正木監督新体制下初勝利を手に入れた。
チームはシーズン終盤に尻上りに調子を上げ、4位(9勝2分7敗)でリーグ戦をフィニッシュした。
最後尾からチームを支えてきた守護神・池田咲紀子は「チームとしてうまくいかない時期もあった。選手一人ひとりに良さ、悪さはある。流れが悪い時はそう認める。それは簡単そうで実は難しく、悪い部分が見えるとマイナスになってしまう。その中で、失敗をしても声をかけ合い、成功するためにチームとして取り組めたことが大きかった。(お互いの)良いところを見て、声かけや助け合うこと、特長を生かすプレーが出来ていた」と変化を語った。
また、南萌華や大熊良奈、高橋はななど若い新戦力が台頭。実践での経験と自信を重ねたことは未来につながる大切な要素となったことは間違いない。
そして年末の皇后杯では順調にベスト4にまで駒を進め、準決勝は大会連覇を狙うベレーザとなった。チームは決して受け身にならず自分たちが積極的に仕掛けることを体現したが、チャンスを決め切れず0−1で惜敗。レッズレディースの2018シーズンは終了した。
キャプテンの柴田華絵は「自分たちが前に行ってやりたいことを出せた試合だった。粘り強く戦うことで2強を捕まえられる感触はある」と振り返ると、菅澤は「チームとしてやりたいことができるようになり、気持ちも一つになり、形になったことで成長ができた」と続けた。
ネガティブな雰囲気を吹き飛ばし、目指すべき姿を取り戻したレッズレディース。来シーズンは成熟したチームに成るためにも積極的なマインドをさらに高めるチャレンジと、チャンスを決め切る力を身に付けることで2強を押し退け、タイトル獲得を狙いたい。