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インタビュー

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[REDSインタビュー]走る、伝える、自身を見つめる。猶本光が語る強さの秘密

「REDSインタビュー」は、トップチームやレディース選手、監督、スタッフ、関係者などを深堀りし、その言葉を掲載するコーナーだ。
今回は、三菱重工浦和レッズレディースで欠かすことのない核となったMF猶本光が登場。
周囲から見れば、強さと層の厚さを見せつけ、ぶっちぎりの快走と思われた今シーズン。
しかし、その内実、決して順調ではないなか、チームは、そして猶本はどう進んできたのか。
そして今夏、開催されるFIFA 女子ワールドカップオーストラリア&ニュージーランド2023のメンバー発表を前に自身の心境をレッズプレス!!に語った。(※5月25日オンライン取材)



RP:三菱重工浦和レッズレディースはリーグ19節が終わって15勝1分1敗・勝点46としています。端からみれば、順調に勝ち点を重ねたように見えますが、実際は違っていたと思います。南萌華選手のASローマへの移籍にはじまり、主力選手たちの相次ぐ長期離脱がありました。それを踏まえると、2位I神戸に差をつけての首位とは思いませんでした。となれば、なぜ、実現できたのか。まずは、ここから聞かせて頂けますか。

猶本:振りかえってみれば、リーグでは、去年12月のリーグ6節・I神戸に負けて、リーグ17節の東京NBに引き分けて、5ポイントしか落としていない。そう考えると素晴らしいシーズンを送れています。たしかに、強いと思われますが、正直、ここまでできるとは思いませんでした。たとえば、守備の要である、高橋はながケガで離脱しました。
(※シーズン開幕から3試合先発フル出場後、11月のなでしこジャパンのスペイン遠征中に右膝前十字靭帯損傷・全治8ヶ月の診断)リーグ序盤、3試合で6失点して、これからどうやって失点を減らしていこうという話をしていた、その矢先の離脱で、正直、厳しいなと感じました。でも、そのときに“姉さん”(安藤梢選手)がひと言、「優勝したい」と言ったんです。この時、「この状況で優勝を諦めないんだ。それなら、私も頑張って、盛り返さないと」と気持ちを切り替えました。その後、姉さんがセンターバックで起用されましたが、思い出せば、去年はボランチで初めて、今年はセンターバックで初めてプレーして、チームのピンチを、その都度、救ってくれて、感謝どころじゃないですが、本当にありがたいです。

RP:高橋選手だけでなく、シーズン序盤は池田咲紀子選手、長船加奈選手、栗島朱里選手も離脱し、シーズン途中、柴田華絵選手もケガで離れた時期がありました。軒並み、主力選手がケガで抜けましたしね。
猶本:不安材料がたくさんありました。でも、GKでいえば、史織(福田史織)が頑張ってくれて、その史織と璃音(石川璃音)のふたりを、姉さんがうまく融合して守備がしっかりと安定しました。守備が安定していくうちに、チーム全体も安定していたことが大きかったですね。また、柚歩(塩越柚歩)も今シーズン、ボランチに挑戦しました。分からないことばかりだったと思いますが、いろいろなことを吸収して、良くなりました。

RP:福田選手と石川選手でいえば、経験不足による若い失点はなくなりましたね。チーム全体では、攻撃に行きすぎて、守備が疎かになるようなことも少なくなりました。リーグ14節マイナビ仙台戦では、楠瀬直木監督の考えで、後半あえて守備的な戦いをしました。攻撃も大事。でも、守備で勝つことも大事ということを示した試合でした。攻撃の浦和ですが、守備が大きな担保になっていることを改めて感じました。
猶本:去年までの森さん(森栄次レッズレディースユース監督兼育成テクニカルダイレクター)のサッカーは、センターバックの強さを全面に出した戦術でした。萌華(南萌華)と高橋はなが強いというのが前提の守備でした。そこが梢さんになったことで、ボランチの選手と「もうちょっとセンターバック前のケアやリスクマネジメントはしていかないと」という話はしました。姉さんは、戦術的に見えているので、後ろからのコーチングを含めて良くなったというか、守備の連動が攻撃につながりました。

RP:さきほど塩越選手の名前が出ました。ボランチのプレーについて、猶本選手から教わったと聞きました。
猶本:私が思っていることは伝えるようにしました。柚歩の良さは攻撃に絡むこと。リーグ開幕・長野戦で見せた スルスルッとあがってのゴールはできていましたが、反面、プレーを発動させるタイミングや、ボランチでの守備、また、サイドチェンジしたいのにできないという時には、立ち位置など、映像をまじえて、伝えました。柚歩は、すぐに吸収して、どんどん良くなってきて、途中から若手のサイドハーフやFWの選手たちに守備のことを言えるようになってきました。また、遠藤優も、自分のプレーに精一杯でしたが、若手に「もっとこうした方が良い」と言えるようになり、チームの底上げができています。

RP:今の話を聞きますと、自然と選手たちは、自分のことと同じくらい、それ以上に、チームのことを考えるようになったかもしれませんね。
さて、ここから猶本選手自身についてお聞きしたいです。シーズンを通して、ハイパフォーマンスを維持し続けていますが、ご自身は、どう思われていますか。
猶本:たしかに「今日の試合は悪かった」ということは、今シーズン、ありませんでした。まず、ひとつは、ケガをしなかったこと。コンディションやケア、トレーニングといった、今まで積み重ねたものに加え、ケガ無くコンディションを維持して、さらに試合を重ねることで良いサイクルになりました。やはり、ケガしないことが大事で、ケアはもちろん、試合だけでは強度が落ちてしまうので、普段のトレーニングでの維持というか、次に獲得したい何かのためにやっていたことが成長につながったと思います。獲得したい何か、とは、その週の課題ですね。シュートやドリブルで、たとえば、このスペースでの1対1、この角度での1対1とか、試合でできなかったプレー、外してしまったシュートを深く掘り下げています。

RP:ピッチを見ていますと、本当にいろいろなところに顔を出していますし、動いていますよね。
猶本:動いてなくはないですが、一番はボールに登場しているというか、そのシーンに登場していることが印象に残っていると思います。戦術的に読めてきたシーンが多くなったので、うまいタイミングで顔を出せるようになりました。そこで「走っているよね」「いろいろなところにいるよね」という印象を与えていると感じます。

RP:よく『無駄走り』という言葉があります。時に良い意味で使われますが、文字通り、無駄な走りが少ない。だから走れる、ということでしょうか。以前、中田英寿さんが小学校の時、プレーする姿を俯瞰できた、という話がありましたが、猶本選手は……。
猶本:そうじゃないですね。しっかり平面で見えていますよ(笑)ただ、このあいだの千葉L戦(19節)のゴールは、早い段階で「次はここだな」とか、次のスペースは見えてきました。

RP:以前、安藤選手とのインタビューで、猶本選手のことをお聞きしたら、自分のことだけでなく、まわりを引っ張るようになり、頼もしくなったと話していました。少し前に、猶本選手が加入した当時にいた“経験のある選手”が、翌年、移籍や引退でいなくなってしまったと話していましたね。そうした経験が、今に繋がっているのかもしれませんね。

猶本:ヤナさん(柳田美幸)、ガンさん(荒川恵理子)、山郷さん(山郷のぞみ)、キョンさん(矢野喬子)、アコさん(庭田亜樹子)、つっちーさん(土橋優貴)がいましたが、翌年、皆さん、チームを去って、いきなりチームが若くなって……、本当に大きかったですね。もともと年齢的に若い選手に話しかけたり、伝えたりすることは嫌いではないです。今まで、いろいろな選手を見た中で、「こうした方が伝わるな」とか、伝えるタイミングなど、経験で学んできたことですね。それこそ、柚歩の成長は自分にとっても嬉しいです。チームのためにもなりますから。

RP:ここまでのお話を含めて、自分を客観視なさっているなと思います。でも、それはとても嫌な作業であり、それをやらないと、次に進めない気がします。
猶本:外したシュートについて考えるのは嫌ですね。その積み重ねで、今があるので……向き合う方が楽ですよね、今となっては。自分自身の課題ができるようになれば嬉しいですし、嬉しいことを知っているから、嫌な作業ではないですね。

RP:最後に、なでしこジャパンについて。今年7月に開催されるFIFA 女子ワールドカップオーストラリア&ニュージーランド2023にむけ、来月6月にメンバー発表があります。あと3週間後ですが、心境はいかがですか。
猶本:どちらかというと、あんまり気にしていないです。今は優勝のことを目標にしていますし、残り3試合、もし優勝を決めることができたとしても、WEリーグを見に来てくれる方に、少しでも「来季も観に行きたい」という印象を残すためにも大事な3試合なんです。優勝がかかる試合やラストの試合になると、多くの方が来てくれます。なので、WEリーグの方に集中しています。代表のことは、まだ考えていませんね。

(聞き手:レッズプレス!!佐藤亮太)

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