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インタビュー

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[女子]オルカ鴨川FC小金丸幸恵育成コーチ「レッズでの経験がいまにつながっている」

「REDSインタビュー」は、トップチームやレディース選手、監督、スタッフ、関係者などを掲載するコーナー。今回は、2005年から2012年まで浦和レッズレディースでプレーし、その後、アルビレックス新潟レディースに移籍。2017年から同チームのU-18やU-15GKコーチ、開志学園JAPANサッカーカレッジ高等部女子でコーチを歴任。2022年4月1日から、なでしこリーグ・オルカ鴨川FCの育成コーチに就任した小金丸幸恵氏にインタビューを行った。



(石田達也)  



オルカ鴨川FC小金丸幸恵育成コーチ「探求心を持って欲しい」

取材日:4月15日

現役を退いたあと、ここまで培ってきたサッカー哲学や自らの経験、そして考えを子どもたちに伝える。「どうやったら成長速度や成長の幅を広げられるか、そのきっかけを作ることを大事にしたい」と言う若きコーチの姿に迫った。

■探ろうとするきっかけを与える

RP:オルカ鴨川FCの育成コーチに就任した経緯を教えてください。
小金丸:指導者だけをやりたかった訳ではないのですが、浦和や新潟Lでプレーをしていた時にアカデミーの選手たちが試合をサポートしてくれていました。ただアカデミー専任のGKコーチがいない状況が続いていて、「キーパーのトレーニングを何か手伝わせてもらえませんか」と考えていて、引退と同時に「キーパーの指導の部分で手伝えますよ」とクラブに言ったことがきっかけで、指導者としての仕事に就くことになりました。キーパーの普及やサッカー人口を増やしたいという思いが自分の中に芽生え、そして色々な年代を経験したいと順を追っていった時に、ここオルカが下の年代から上の年代まで幅広くあるクラブだと分かり、チームビルディングを含めた部分で、もっとサッカーに関わりたいと思っていたところで話をいただきました。

RP:コーチの道に進むきっかけになったモノは何ですか?
小金丸:最初に関わらせてもらった新潟Lの子たちが、「知る」ことを喜んでくれました。練習で「このプレーはどうか」と取り組んでいたプレーを試合でトライしてくれた時に、真っ先に「できたよ!」と私の元に言いにきてくれたことですね。

RP:育成コーチとして、どんな部分に注意を置き、指導をしているのですか?
小金丸:ここに来ている子どもたちは、サッカーをプレーしたくて来ている子です。生きる力や成長する力は、それぞれが持っていますが、あまり変に教えてしまうと、それを止めてしまうこともあります。“どうやったら成長速度や成長の幅を広げられるか”、そのきっかけを作ることを大事にしたい。例えば、直接的な言葉を選ばないことは自分の中で意識しています。

RP:上から押し付けるのではなく、子どもたちに選択肢を与えることは非常に大切なことですね。
小金丸:例えば「こうやれ」と言ったらそれしかやらなくなってしまいますし、大人であれば選べますが、子どもであれば、「それしかない」と思ってしまうので繊細だと思います。

RP:育成は奥が深いですよね。
小金丸:そこに楽しさを見出せるかだと思います。年代が様々であれば難しさもあります。

RP:その中で楽しさを見出せましたか?
小金丸:私が使った言葉を子どもたちが使ってくれていたら嬉しいですね(笑)。全然、大した言葉ではないのですが、言葉のやり取りの中で、子どもの口から出てくるとうれしいです。

RP:育成コーチに就任し、まだ日が浅いとは思いますが、ここまでの率直な感想を聞かせてください。
小金丸:子どもたちは、素直に監督の話を聞いてくれるのですが、それをもっと落とせるようにできるか、まだ表情を見ることで精一杯ですね。

RP:監督やコーチの言葉というのは、本当に大事なものですね。
小金丸:自分が子どもの頃に覚えている言葉がありますし、逆の立場になった自覚を持たなければいけない。それを心掛けています。

RP:コーチとしての幅も広がっているのではないでしょうか?
小金丸:それを求めて新潟Lではクラブのアカデミーを経験し、その後、違う世界を経験したいと思い高体連に2年いき、オルカに来ました。自分の中では1つの学びの場だと思っています。

RP:では、浦和時代を振り返ってもらい、思い出に残っているエピソードなどがあれば教えてください。
小金丸:それほど試合に出場していませんが、ただ街の雰囲気やサポーターの雰囲気は印象に残っていて、そこでしっかりプレーしていく、生きていく自覚を持たせてくれた印象があります。私が加入したのがさいたまレイナスFCから移管される時でした。レッズランドも土地はありますが、クラブハウスもなく練習場所を転々としていました。今は綺麗に整備されていますが、雑草のような状態で工事が着工し、少しずつ形になるまでを過ごさせてもらいました。

RP:また、浦和駒場スタジアムやサポーターには、どんな印象を持っていますか?
小金丸:出場数は少ないのですが、あのピッチに立たせてもらいました。そして、ピッチやベンチ、ベンチの外など、色々な角度から試合を見させてもらい、その経験を選手の時にできて良かったと思っています。それが今につながっているので、さらに視野を広げていきたいと考えています。

RP:当時は、山郷のぞみ氏(現ちふれASエルフェン埼玉GKコーチ)とポジションを競っていたと思いますが?
小金丸:太刀打ちできていたか分かりませんが、年齢も11歳差あり、同じ土俵に立つには、自分のことを一生懸命にやらなければ、そこには立てませんでした。山郷さんは誰からも学ぶ姿勢を持っていましたし影響を受けました。

RP:小金丸さんが考えるGKの魅力を教えてください。
小金丸:少しの変化やきっかけで、とても大きな成果が出るポジションです。少しポジショニングを修正することでシュートを止められる。気付いたことを試したら、あの大きなゴールを守れますし、それが自分の成果になる。凄く喝采を受ける。派手なセーブも見どころですが、少しの変化の連続で大きな成果が出る、それが魅力だと思います。

RP:キーパーは1つの失敗が命取りになりますし、ポジションも1つ。かなりメンタルが重要なポジションだと思いますが。
小金丸:「調子に乗っている。落ち込んでいる。集中している、集中していない。呑まれている」など、自分を客観視できることと、気持ちの波を一定にすることが大事なメンタリティーだと思っています。

RP:一番大事にしたいこと、子どもたちに求めることはありますか?
小金丸:探求心を持って欲しいですね。今、情報が溢れています。自分で何かを掴み取りにいくことを忘れてはいけない。探求心を子どもたちから奪ってはいけないと思っています。

RP:目覚ましい成長を遂げる子どもに共通点はあると考えますか?
小金丸:私もそんなに歴が長い訳ではないので(笑)。ただ、言ったことに対して、自分から学ぶ姿勢のある子は伸びていると感じます。探ろうとするきっかけを与えるのがコーチの役割だと思っているので、そういう選手は成果が出ると感じます。

RP:例えば、GK池田咲紀子選手のような代表選手を育てるためには、どんなことがポイントになるのでしょうか?
小金丸:それは分かりません。池田が、「山郷さん、田尻(有美/INAC神戸レオンチーナ監督)、工藤さん(輝央/FC岐阜GKコーチ)の5人でやっていた練習がすごく楽しかった」と、ずっと言ってくれています。ポジションは1つですが、キーパーはグループで活動することでキーパーとしての自覚を持ちますし、成長する上で大事だと感じています。

RP:ちなみに理想とする指導者はいますか?
小金丸:理想とする指導者はいません。理想は私の名前が出ないぐらいが丁度いい。何かのきっかけで、「昔、小金丸があんなこと言っていたな」と、1つでも2つでも、私の言葉が知識として残っていたらいいですね。

RP:オルカでは、どんな選手を育てたいと考えていますか?
小金丸:子どもたちが決めたことを応援してあげたいと思っていますが、全員がプロに成れる訳ではありません。色々な人生の選択肢がある中で、ここオルカでサッカーを学んだことで、「何か一つでも頑張ることができた」という人生を歩んで欲しいですね。私は、そういった環境を作っていきたいと思います。

(聞き手:石田達也)


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